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ふぇみんの書評

ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか

危険地報道を考えるジャーナリストの会 著

  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか
  • 危険地報道を考えるジャーナリストの会 著
  • 集英社760円
昨年1月、ジャーナリストの後藤健二さんらが「イスラム国」に殺害された。蛮勇だ、国益に反するなどとの批判を深刻に受けとめ、フリージャーナリストの土井敏邦さん、川上泰徳さんらが、危険地域の報道を続ける意味を議論し、仲間に呼びかけて10人で本書を執筆した。  紛争の現場を取材することは、政府による「大本営発表」に抗して、争いの犠牲になる民衆の声を伝えること、と元朝日新聞記者の川上さんは書く。大手メディアが撤退した後も、危険な現地に残るのはフリーランスだが、互いに違いを評価されるべきと語る玉本英子さん。ジャーナリストは消防士などと同じ生業であるのに、ジャーナリストの殉職だけが特別視されるのはなぜか、と問う土井さん。同業者の死に学んでこなかったことが問題だ、とも言う。  安保法制が成立した今だからこそ、紛争地で生きる物言わぬ人々の生の姿と苦悩を知る必要がある。(三)

この世にたやすい仕事はない

津村記久子 著

  • この世にたやすい仕事はない
  • 津村記久子 著
  • 日本経済新聞出版社1600円
著者は、最近まで会社員と作家の二足のわらじを履き、女性の生き方や、労働とのリアルで抜き差しならない関わりを描いてきた。本書は、燃え尽き症候群のようになって前職を辞め、ストレスのない仕事を求める30代半ばの女性が主人公の連作短編集。  主人公が紹介されるのは、隠しカメラで作家を監視する仕事、おかきの袋の裏の豆知識を書く仕事、森林を探索する仕事など、一風変わった5つのお仕事。ストレスのない仕事のはずが、それぞれに奥深く、感情労働もするし、人間関係にも巻き込まれるし、誇りを持って働く同僚もいて、成果が上がればやる気も出る。仕事とは「愛憎関係」に陥るまいと逃げても逃げても、逃げ切れない。主人公はどう腹をくくるのか-。  女性の労働につきものの貧困は描かれていないが、主人公と共にそれぞれの仕事の世界を探検するうちに、改めて自分と仕事との関係を眺めてみたくなった。主人公の最後の覚悟が力をくれる。(登)

詩集 追憶の渋谷・常磐寮・1938年

朴玉璉 著

  • 詩集 追憶の渋谷・常磐寮・1938年
  • 朴玉璉 著
  • コールサック社2000円
  1938年、著者は朝鮮の高校を修了後17歳で来日、現在の実践女子大学へ入学し、渋谷の常磐寮で3年間を過ごした。  当時の朝鮮半島は朝鮮総督府による皇国臣民、内鮮一体化政策がとられていた時代である。日中戦争は始まっていたが、学校の休日には渋谷の蜜豆屋、銀座の鰻、新宿中村屋などを散策する穏やかな時間が流れていたことが本書から読み取れる。一方で著者が故郷について触れたものが見られないのは、やや残念ではある。  卒業後は母国へ戻り、日本統治下で検事職の夫と結婚するが、朝鮮戦争下で生別する運命に遭遇した。それだけに夫との出会いと深く関わる常磐寮時代に、強烈なまでの追想が高まるのもうなずける。  90年代に幾度か来日、多くの再会を果たし追憶と感謝の心情を強めたことが「序詩・遠き昔の哀愁曲」からも伝わる。人生の苛酷性ともたたかう著者の生きる力が晩年の詩作を可能にしたが、本書刊行直前94歳で他界した。(H)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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