SEALDs 民主主義ってこれだ!
SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動) 編著/
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- SEALDs 民主主義ってこれだ!
- SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動) 編著/
- 大月書店1500円
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今年の「流行語」にも選ばれたSEALDs。安保法制成立反対の大きなうねりの火付け役で、「絶対止める」というシンプルかつ強い信念と「わたし」を主語にした等身大のスピーチで、学者、高校生、ママたち、中高年など多くの人を路上に連れ出した。本書はメンバー自身が撮影、編集からデザインを手がけ、メンバーのスピーチや文章、鼎談などを収録したビジュアルドキュメント。
オシャレなスタイルが注目されがちだが、かれらは、自分の立ち位置が過去から未来への途上にあることを意識し、安保法のみならず民主主義、立憲主義のあり方を問うている。鼎談ではSEALDsの変遷や戦略などが語られ、その軽やかさと、ある種のしたたかさも伺える。ちなみに多くの人の心を捉えたコールは、オキュパイ・ウォールストリートから学んだとか。
作家の高橋源一郎さんと奥田愛基さんの対談も収録。SEALDsのSEALDsによる、これから立ち上がる「あなた」への本だ。(登)
- アンチヘイト・ダイアローグ
- 中沢けい 著
- 人文書院1800円
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作家で、ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越えるネットワーク「のりこえねっと」の共同代表である著者の対談集。対談相手は中島京子などの作家、「反ヘイトスピーチ裁判」を手掛けている上瀧浩子弁護士、学者、運動家など多彩。ヘイトスピーチと連動する政治、経済、社会の動きをリアルに分析する。巧みな言葉による対談は文句なくおもしろい。
本書からも「在特会」と安倍政権との親和性が見える。草の根運動支持付き右派が主流の政権に対抗するには、こちら側の草の根の広がりも大事だ。
作家の星野智幸との対談で、サッカー・浦和レッズのファンが差別的な横断幕を掲げて無観客試合という処分を受けた後、サポーターたちが「好きなものが奪われる危機感」からレイシズム反対を訴え自浄能力を発揮した例が挙がった。鬱屈した感情を発散するエネルギーより好きなものへのパワーのほうが大きいという指摘に同感し、声を出す市民の広がりに希望がわいた。(ぱ)
- 原発訴訟が社会を変える
- 河合弘之 著
- 集英社740円
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「バブル経済」の時代、筆者は様々な大型経済事件を手がける辣腕弁護士だったが、そこに「人生の価値」を見出すことができず、出会ったのが環境問題で、中でも原発が深刻だと考えた。1994年のことだ。闘い続けて20年余、2015年4月14日、福井地裁で、高浜原発の再稼働を差し止める運転禁止仮処分命令が出た。決定文は、「電気の安さよりも国民の安全」に立ち、日本の原発の問題点を丁寧にあぶり出し、同時に解決策までを示した「日本の道標」ともいえる内容だったと筆者は評価する。福島原発事故以降、裁判所にも変化が起こったのだ。
本書は、原発をなくす闘いの場としての原発訴訟について、裁判の争点や緊迫したやり取りなども含めて描き出す。また、筆者が監督を務めた映画『日本と原発』から重要シーンを抜き出して、いかに推進派を論破すべきか詳説、さらに今後、脱原発にどう取り組むかまで、示唆に富む。参考書としてポケットに入れて出かけよう。(ね)