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ふぇみんの書評

日本の中国侵略の現場を歩く 撫順・南京・ソ満国境の旅

青木茂 著

  • 日本の中国侵略の現場を歩く 撫順・南京・ソ満国境の旅
  • 青木茂 著
  • 発行=花伝社 発売=共栄書房1700円
  日本が中国に侵略し、各地で惨劇を繰り返した爪痕を訪ねた旅の詳録。加害に向き合い、和解のために絶え間ない努力を続けてきた人々の運動の記録でもある。  日本が犯した残虐な行為…。当地で語られる被害者や遺族の証言が重い。貴重な証言集としても資料的価値が高い書だ。  中国の人々の寛容さと、加害性を問い、謝罪し続けてきた著者たちの努力があってこその交流、和解に向かっている状況を、日本の歴史修正(改竄)主義者たちが台無しにしているのは許し難い。  「日本で語られる『反日』という言葉の薄っぺらさを感じます」と話した、南京平和法要訪中団事務局の山内小夜子さんの「『反日感情』という言葉であらわされることがらのその背景には、南京市民一人ひとりの家族の歴史があります。反・日本でないのです。(中略)侵略戦争に反省のない日本に不信と憤懣やる方ない思いを持っているのだと思うのです」の言葉を私たちは胸に刻むべきと思う。(ぱ)

出来事の残響 原爆文学と沖縄文学

村上陽子 著

  • 出来事の残響 原爆文学と沖縄文学
  • 村上陽子 著
  • インパクト出版会2400円
 広島県で生まれ、沖縄の大学に学んだ著者は、そこでレイプ事件をからめ、米占領下の鬱屈を描く「カクテル・パーティー」(大城立裕)を手にするが、わからなさに戸惑う。だが米軍ヘリ墜落事故や基地問題に触れ始めると、小説の場面と今の沖縄での体験との重なりを自覚する。そして3.11の原発事故の衝撃から、原爆小説を手に取る。本書はその成果を博士論文にし、加筆修正を加えたもの。  自らも被爆し、『屍の町』を書いた大田洋子、「祭りの場」の林京子は、共に批評家からは小説的完成度に疑問を持たれた。個人の体験とされ、戦後日本のあり方への疑義や国への批判はイデオロギー的と忌避された。目取真俊の「水滴」、又吉栄喜の「ギンネム屋敷」らの作品は、戦場での惨状を隠蔽、忘却を強いる流れに抗し、亡霊の姿を通して記憶の伝承を試みている。  原発再稼動や新基地問題が刻々と迫る現状への怒りを持ち、死者の声の残響を聞き取ろうとの著者の姿勢に共感した。(束)

戸籍のない日本人

秋山千佳 著

  • 戸籍のない日本人
  • 秋山千佳 著
  • 双葉社850円
日本には、生まれても戸籍がつくられない子どもが毎年少なくとも500人以上いるという。著者はインタビューを通じて、無戸籍者の問題を追う。  母親が夫からのDVにより命に危険を感じて逃げ、離婚が成立する前に別の男性との間に生まれた女性。民法772条により出生届を出すと母の暴力夫の子になってしまう。知られたら殺されると戸籍はつくれなかった。高校生のときに海外の修学旅行に行くためにパスポート申請し法務大臣に面会したが、母の元夫の姓でつくると言われて拒否した。  また、親の貧困と情報不足で、就学できずにいた無戸籍の女性。20歳過ぎて文字を練習する。  家族の形は多様化したにもかかわらず、法律は明治民法のまま。そのために多くの子どもたちが不利益を被っている。しかし法改正は保守派の反対で進まない。  今問われるのは何か。無戸籍者問題解決のための議員連盟はできた。世論の応援が必要だ。(衣)
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 加入者名:婦人民主クラブ
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