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ふぇみんの書評

戦争の記憶と女たちの反戦表現

長谷川啓、岡野幸江 編

  • 戦争の記憶と女たちの反戦表現
  • 長谷川啓、岡野幸江 編
  • ゆまに書房2400円
  戦後70年、人々の意思に反しし、為政者は戦争への加担に傾斜しとどまることを知らない。本書は戦時下の女たちの抵抗に始まり、戦争の傷痕から立ち上がった平和へのメッセージ、自らの被爆体験とそれを共有した作家たちによる赤裸々な叙述が圧巻の反戦女性文学論で、今日的意味が高い。  テーマ“戦時下の抵抗とアジアへのまなざし”は宮本百合子、平林たい子、佐多稲子。“戦争の傷痕と「敗戦」を生きる”は林芙美子、壺井栄、三枝和子。“「核」の時代と向き合う”は太田洋子、大庭みな子、林京子、米谷ふみ子。進行中の人類最大の危機としての核の時代の生存をかけた反戦の思いが心を揺さぶる。時代背景を詳しく叙述した文学批評が有用。  ふぇみん元代表の佐多稲子について、編者の長谷川啓さんが反戦平和を発信し続けた姿を浮き彫りにしている。最終稿「核の時代…」での林、米谷らを評して「あいまいでない覚悟こそ必要」という言葉が、ずっしりと重い。(k)

銀幕のハーストリー 映画に生きた女たち

松本侑壬子 著

  • 銀幕のハーストリー 映画に生きた女たち
  • 松本侑壬子 著
  • パド・ウィメンズ・オフィス2500円
  今年は映画の誕生から120年。「映画を通して女性の生き方を考える」という映画評論家の著者が、120年を「女性」という視座から照らしたのが本書。映画黎明期から現在までの、ハリウッドをはじめとする世界各国の映画をひもとき、まさに「映画の散歩道」だ。著者のあふれんばかりの映画への愛とともに、女たちが歩んできた120年が浮かび上がる。  世界初の女性映画監督アリス・ギイの人生、映画ヒロイン像の変遷、セックス・シンボルとされた女たちの苦悩、性暴力・女の自立・母娘問題・ワークライフバランスがどう描かれたのか、悲鳴と失神が役割だったホラー映画の女たちの変化、闘う強い女の登場―。女性のリーダーが少ない日本で英国映画『マーガレット・サッチャー』は生まれないのでは、との指摘も。  120年間映画を主に作ってきたのは男たち。「素晴らしい映画の宝庫に、さらに付け加えられるべきは新たな女性の力」と著者。秋に映画三昧はいかが?(登)

九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実

熊野以素 著

  • 九州大学生体解剖事件 七〇年目の真実
  • 熊野以素 著
  • 岩波書店1900円
 太平洋戦争末期、九州帝国大学医学部で米軍捕虜が生体解剖された。この事件によりBC級戦犯裁判で死刑判決を受けた鳥巣太郎の姪(著者)が事件の真相に迫った。  鳥巣は実験手術と分かってから抵抗し、上司に中止を諫言、4回のうち2回は参加しなかった。だが、主犯格の上司が自殺すると、関係者の間で罪のなすり合いが行われ、「捕虜を適当に処置せよ」と指令した軍の責任は問われず、鳥巣に罪が上乗せされていく…(鳥巣は後「再審査」で減刑)。著者は、平時なら善良であろう人々が、戦争の狂気により恐ろしい戦争犯罪に加担していく過程を丁寧に追う。同時に、医学の進歩のためなら何をしても許されるという意識が医学界にあったのではと厳しく問う。  鳥巣は命がけで止めなかったことを一生悔いたというが、自由にものが言えない時代、上の命令に逆らえる人はどれほどいるだろうか。「NO!」と言える社会でなければ戦争や暴力は防げないのだと考えさせられる。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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