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ふぇみんの書評

原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年

堀川惠子 著

  • 原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年
  • 堀川惠子 著
  • 文藝春秋1750円
  広島の平和記念公園の片隅にある「原爆供養塔」。引き取り手のない被爆死した約7万人の遺骨がここに眠っている。原爆で親族20人以上を亡くし、半世紀近く供養塔の清掃に通い、遺族を捜し続けた佐伯敏子さんの人生と、佐伯さんの意思を引き継ぐように、全国各地の遺族を捜し始めた著者の記録。死者の存在が年々見えない場所に追いやられることに抗い、遺族に迫っていく渾身のルポだ。  取材を重ねる中で知る、犠牲者を記録し納骨名簿を作った少年兵たちの存在、朝鮮半島の出身者、生きていた“死者”、沖縄からきた兵士、複雑な事情で遺骨の受け取りをためらう遺族…。原爆や戦争 の理不尽さは、その凄惨な被爆体験のみならず、70年もの間、遺族たちに暗い影を落としている。昨今、8月の平和公園周辺には、近隣のアジア諸国を口汚く罵って核武装を訴える団体がいるという。死者何万人という数字では語られない犠牲者一人一人の無念さに思いを馳せたい8月だ。(う)

世界の果てのこどもたち

中脇初枝 著

  • 世界の果てのこどもたち
  • 中脇初枝 著
  • 講談社1600円
  『きみはいい子』の著者(本紙2015年6月15日号1面)が、戦時中の満州で出会った3人の少女―高知県の貧村から開拓団として家族でやってきた珠子、朝鮮人の美子、横浜の裕福な家で育った茉莉―の戦後70年を描いた。  珠子は引き揚げの中で家族や親しい人が次々に死んで残留孤児になり、茉莉は横浜空襲で家族を焼かれ孤児院へ、美子は故郷を失って差別に満ちた日本へ。少女たちは多くの死を見、愛する人を失い、「獣」と化した人間の浅ましさにも出合う。やがて少女たちは、あの戦争の意味を知る。満州は誰の犠牲の上にあったのか?自分は大好きな兄を戦場に送ったのではないか? 苦難の中で彼女たちを支え、後に結びつけたのは、3人で分け合ったおむすびの記憶―。  戦争はいつだって子どもたちを犠牲にし、「世界の果て」に追いやる。世界がどんなに醜くても、人から受けた優しさこそが人を育てる、との著者の思い。3人の再会場面で涙が止まらない。(登)

海軍の日中戦争 アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ

笠原十九司 著

  • 海軍の日中戦争 アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ
  • 笠原十九司 著
  • 平凡社2500円
 日中戦争では、“海軍は、戦争推進派の陸軍に引きずられた犠牲者”と、私も信じていた。本書は、そんなイメージが海軍による意図的な工作によって作り上げられたものだったと、日中関係史の専門家である著者が、数多の資料を丹念に読み解き、暴いた話題作。  市民の戦意を高揚させるための謀略事件や民間人を狙った絨毯爆撃を行い、南京や重慶など無差別都市爆撃に先鞭をつけ、「慰安所」を最初に置いたのも、真珠湾攻撃も海軍が起こしたこと。この一連を、著者は「自滅のシナリオ」と名付ける。  なぜ、何を目的として海軍は戦争へ突き進んだのか。軍拡と予算獲得競争。陸軍に対する覇権意識、対米英開戦への思惑…。敗戦前後には、海軍上層部の戦争責任免責工作もし、マッカーサーGHQ総司令官とも取り引きした海軍。  どうしたら戦争をなくせるのかを後世に残すために本書を記したと、著者は言う。70年前の愚かな歴史を問うことが今生きる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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