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ふぇみんの書評

ビデオ・メッセージでむすぶアジアと日本

神直子 著

  • ビデオ・メッセージでむすぶアジアと日本
  • 神直子 著
  • 梨の木舎1700円
「戦争なんて昔のこと」と思っていた大学生の神直子さんを変えたのは、1995年、フィリピンで出会った高齢の女性だった。戦後いつまでも癒えることのない傷を抱えた被害者たち。一方で加害を悔いる元兵士たちの存在を知り、双方をビデオ・メッセージでつなぐことを思いつく。2004年にブリッジ・フォー・ピースを立ち上げ、以来10年。神さんに共感し、平和を創っていこうとする若者たちが中心となって、数々のワークショップや学校でビデオ・メッセージを公開し話し合う「学校へ行こうプロジェクト」も定着した。「過去の戦争を知り、未来のかたちを考えるきっかけをつくりたい」。交流は、中国や韓国へも広がっている。  あの戦争の反省から生まれた平和憲法も危うくなっているいま、戦争世代から受け継いだことをどう伝えていけばいいのか。神さんたちの試みがヒントになると思う。考えの違う人たちと対話する大切さ。小さな争いや偏見をなくす工夫。実践したい。(室)

母ちゃんの脱出 満州崩壊 沖縄の琴は朝鮮にひびいた

仲里三津治 著

  • 母ちゃんの脱出 満州崩壊 沖縄の琴は朝鮮にひびいた
  • 仲里三津治 著
  • 現代書館1600円
 戦後、中国から命からがら帰国した家族の物語。敗戦直後、満州(中国東北部)から日本へ“脱出”する途上、朝鮮との国境を越えた町で足止めされ、難民として1年間暮らした光子一家。戦争末期に沖縄から東京へ、満州へ、朝鮮へ、日本へと4度の脱出を繰り返した光子の母の「おばあ」陽史子は、那覇で琉球箏曲の師範だった。著者はそのおばあの孫にあたる。  朝鮮の町にソ連兵が入ってきた。強かんから身を守るために髪を切り顔を黒く塗った女性と、庇う男性たち。家族との永遠の別れ。寒さと食料不足で日に日に体力をなくす人々。食料を分け合う姿。そして、共同で策を練り、38度線を突破する様子からは緊張が伝わる。  当時あまたあった植民地からの脱出行の1つだが、厳寒の中で何度も略奪や暴行を受け、子殺しや、発狂死する人の姿はすさまじい。だが、人々が信頼し協力して、長い道のりを辿った体験を語り継ぎたいと言う、戦後生まれの著者の強い心が伝わった。(三)

北朝鮮とは何か 思想的考察

小倉紀蔵 著

  • 北朝鮮とは何か 思想的考察
  • 小倉紀蔵 著
  • 藤原書店2600円
  北朝鮮に対し、「独裁国家」という悪のレッテル貼りを続けている日本。著者は「右も左も、北朝鮮という国家をまともに認識するという気はさらさらなく、自らが信ずるイデオロギーや日本改造の方向性に、北朝鮮という国家を従属させて論じているだけ」と、認識だけでなく、実践においても日本はすべきことを放棄し続けていると批判する。「北朝鮮との国交正常化の必要性」を訴え、この国を思想的に考察したのが本書だ。  著者は、東アジアの歴史認識は儒教的な性格を持ち、日本以外の国家はその起源において「抗日」という形で日本に依存、日本の現政権は「反・抗日」で再依存して いると説く。それを解消するため、日本は「慰安婦」・歴史問題を道徳的立場で謝罪・解決し、「日朝国交正常化」など、東アジアの新しい枠組み構築に主体的に取り組むべきだとの主張は頷ける。北朝鮮の「チュチェ(主体)思想」に触れ、東洋哲学的視点からの国家考察が興味深かった。(ん)
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