- 文学をとおして戦争と人間を考える
- 彦坂諦 著
- れんが書房新社2800円
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殺し、殺されるという極限状態にある人間を、戦争文学はどのように書いてきたのか? また、絶望を描こうとするとき、そこに人間の何を見出そうとするのか?
本書は、著者を中心とした「戦争と人間を考える」連続講座と座談会をまとめたもの。著者は、戦争文学の中での「女」や「純愛」など、“男のロマン”の描かれ方への違和感を鋭く語る。また、武田泰淳、大岡昇平、田辺聖子らのさまざまな戦争文学を紹介しながら、兵士、侵略者、子ども、インテリ、庶民たちの人間模様が、どう描かれ、何に支配され囚われているのかを洞察する。侵略戦争、植民地支配の反省には、「人間」を考えるというプロセスが必要だろう。
戦争文学は男性中心的で読みにくいと感じていたが、本書を傍らに、ここに紹介されている小説を読んでみようと思わせる。さて、この「人間」とは誰か? 戦争の準備が刻々と進められている。その状況を変えられるのは一人ひとりだ。(み)
これが、コレクティブハウスだ! コレクティブハウスかんかん森の12年
コレクティブハウスかんかん森 居住者組合森の風 編
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- これが、コレクティブハウスだ! コレクティブハウスかんかん森の12年
- コレクティブハウスかんかん森 居住者組合森の風 編
- ドメス出版2000円
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2003年にスタートし、ふぇみんでも紹介した東京・日暮里の「コレクティブハウスかんかん森」の居住者たちが、それぞれの立場から暮らしや思いを執筆した書。
居住者は20代単身から家族持ち、高齢のひとり暮らしなど多様だ。家賃5000円引きの「子育て割」を導入してからは一気に子育て世帯がふえたというが、賃料よりも、「子ども歓迎」という姿勢で居住を決めた人が多いという。
テラス菜園で採れた野菜をいただいたり、クリスマス等の行事があったり、こんな暮らし、いいなと思う半面、仕事が忙しい人や高齢で体が思うように動かない人にとって行事の準備や食事当番は非常に負担となるなど、大変なこともあるようだ。
それでも日々顔を合わせる誰かがいるのはいいもの。仕事をやめて引きこもっていても孤立しないで済んだという女性の声も印象的だった。課題をどう乗り越えていくのか、「共に生きる」暮らし方のヒントが得られる。(梅)
隣居(リンジゥ) 私と「あの女(ひと)」が見た中国
田口佐紀子 著
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- 隣居(リンジゥ) 私と「あの女(ひと)」が見た中国
- 田口佐紀子 著
- 潮出版社1400円
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本書で描かれるのは、日本人の著者がかつての勤務先(北京の外国語出版社)で知り合った中国人女性とその家族を通して、見て、考えた、ひとつの現代中国像。
宋瑾の両親は、抗日戦争に参加し、共産党の根拠地・延安で結婚。北京に移り、退職後も給料を支給される幹部だった。宋瑾は、階級がない(はずの)社会主義の社会で「お嬢さん」として育つ。現在の資本主義が広まる中国社会に不平不満の彼女の暮らしぶりもさることながら、両親の延安での革命体験、文化大革命期の宋瑾と夫の出会い、個人の苦労が、目に浮かぶように語られる。
著者は宋瑾と、彼女の両親が暮らした延安を旅する。経験や判断が異なる2人は、仲が良いのか判断つきかねる。著者は、宋瑾が好きか?と尋ねられたら窮するが、でも友人であり続ける努力はするだろうと言う。血の通った友人・隣人(隣居)同士を、国と国の関係に照らす。つきあいに想像力と知恵が必要なのは、人でも国でも同じだ。(三)