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ふぇみんの書評

樋口一葉と女性作家 志・行動・愛

高良留美子 著

  • 樋口一葉と女性作家 志・行動・愛
  • 高良留美子 著
  • 翰林書房3800円
樋口一葉、平塚らいてう、野上弥生子、田村俊子、林芙美子、佐多稲子、平林たい子など、明治から戦後の近代女性作家10人を論じた書だ。最も力を入れたという『やみ夜』を中心とした一葉論では、これまで見過ごされてきた自由民権運動の志への共感、朝鮮情勢への関心や日清戦争への厳しい批判などを見いだす。他の9人の評論もそれぞれ興味深く、現代に通じる示唆にみちている。悪評まみれの真杉静枝からは皇民化政策へのさめた視線を、自己の戦争協力への徹底した反省をもち歩みつづけた佐多稲子の『渓流』からは、一人一人の「自分らしさ」の解放を目指したその思想的意味を浮かび上がらせる。平塚らいてうの協同組合の思想と実践も面白かった。  それにしても、これら女性文学は今どれほど読み継がれているのだろう。近代女性作家と作品からその志と行動、危うさ、自己省察、抵抗の種子、愛などを読みとる本書は、女性文学を読む今日的意味を再発見させてくれる。(風)

命の旅人 野本三吉という生き方

大倉直 著

  • 命の旅人 野本三吉という生き方
  • 大倉直 著
  • 現代書館2000円
  「すごい!」。夢中になって読み進み、出てきた言葉がこれだった。  横浜のドヤ街・寿町での野本三吉さんの活動は断片的に知ってはいたが、今回その人となりを生い立ちから丁寧に謎解きした本著を読んで、唸らされた。  野本三吉(本名・加藤昭彦)は1941年東京生まれ。3歳で東京大空襲に遭い、幼い妹を防空壕で失う。その不条理を原点に、原爆、第五福竜丸、いじめ…と、時間・空間を超えて人間の悲しみ、苦しみを自らの体内に取り込んでしまう不思議な人。小学校教員、日本漂流、寿町、児童相談所、大学教員…と“命の旅”を進めてきた彼が一貫して目指したのは、「誰もが自由に生きられる“共同体”」だった。  和光大学の学生時代に野本さんの講義を受けた著者は、「この人は何者?」と、本人はもとより周囲の人々をコツコツ訪ね歩き、長い年月をかけて本書をまとめた。  読みながら、私は残りの人生をどう生きようかと、深い思索に導かれた。(JO)

忍び寄る震災アスベスト 阪神・淡路と東日本

中部剛、加藤正文 著

  • 忍び寄る震災アスベスト 阪神・淡路と東日本
  • 中部剛、加藤正文 著
  • かもがわ出版1600円
 3.11直後、「アスベストが大量に飛散しているから、被災地に行くならマスクとゴーグル必携」というアドバイスが記憶に残る。  アスベスト(石綿)は建築の耐火材(現在は使用禁止)で、極小繊維。吸い込むと肺に蓄積され、平均30年の潜伏期間を経て中皮腫というがんの一種に罹患する。関西では、阪神・淡路大震災と2005年神戸のアスベスト禍が知られている。本書もアスベスト被害を取材した神戸新聞の記者によるもの。  震災後たった2カ月の建物解体作業で死亡した例もあるほど、被害が深刻だ。対策はマスクなどの防御しかないが、息苦しくて話しづらいため、行政から着用指示が出ても遵守が難しい。9.11後のニューヨークでも被害が出た。  東日本大震災では関西からの情報提供もあったが、危機感は共有されていない。「のど元過ぎれば」が実情だという。震災ボランティアも心配だ。専門家は地域防災に石綿対策をと提言している。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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