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ふぇみんの書評

バカだけど社会のことを考えてみた

雨宮処凛 著

  • バカだけど社会のことを考えてみた
  • 雨宮処凛 著
  • 青土社 1400円
 雨宮さんは考えてみた。生きづらさと自殺、女性が生きる難しさ…。彼女のスタンスは、「自分の身に置きかえて」という言葉すらよそよそしく感じられるほど、限りなく自分事に近い。大阪の2児置き去り事件の被告はキャバクラ嬢をしていた。雨宮さん自身もキャバクラ嬢だった。風俗しか生きるすべのない女性たちの苦しい生い立ちや心身の傷は身近なもの。そんな雨宮さんだからこそ、親にも元夫にも頼れなかった被告が生活保護を受けていれば、子どもの命も彼女の人生も救えたのにという思いは切実だ。  イラクで劣化ウラン弾の影響でがんに苦しむ子どもに会ったこと、日本で起きた原発事故。調べていくと、日本の原発の廃棄物が劣化ウラン弾の原料かもしれないことも知る。生身の人間の感覚から決して離れず、その苦しみが社会の構造とつながっていることへと思考をつなげ、それを変えようと実際に体を動かす。自然体で発する言葉にはどんな人にも届く確かさがある。(ま) 

森美術館問題と性暴力表現

ポルノ被害と性暴力を考える会 編

  • 森美術館問題と性暴力表現
  • ポルノ被害と性暴力を考える会 編
  • 発行=不磨書房 発売=信山社1800円
 昨年から今年にかけて東京・六本木の森美術館で「会田誠展:天才でごめんなさい」が開催された。  会田誠の作品は、極めて性暴力的なものが多い。たとえば「犬シリーズ」と呼ばれている作品群は、四肢を切断された全裸の少女が、首輪と鎖をつけられ、四つん這いになったり座ったりしているもので、その少女は微笑んでいたり小さく舌を出していたり、媚びた表情を浮かべていたりする。  本書は、そんな会田の作品を大々的に展示した森美術館に対して行った抗議の内容とその意味、そして性暴力ポルノの普遍的課題についてまとめたもの。抗議に賛同する各界の人々が、それぞれの立場から批判的に論じている。たとえば、政治思想学者の岡野八代さんは、今回の事件をはっきりと女性差別の問題だと指摘し、ヘイトスピーチと重ねて論じており、読み応えがある。ともすれば便利に使われている「表現の自由」という言葉から、もっと広い視野で見ることを考えさせられる。(順)

祝島のたたかい 上関原発反対運動史

山戸貞夫 著

  • 祝島のたたかい 上関原発反対運動史
  • 山戸貞夫 著
  • 岩波書店 2100円
 山口県・上関原発建設に反対する長い運動を牽引してきた著者が、いま明かす運動の経過と現実。著者は上関原発と向かい合わせの瀬戸内海に浮かぶ小さな島「祝島」に住む。  1982年に始まった原発反対闘争のため85年帰郷。半年後には、地元の反原発組織「愛郷一心会」の2代目代表に。組織は92年に「上関原発を建てさせない祝島島民の会」に移行し、2011年、病気で退任するまで代表を続けた。また、89年から07年まで祝島漁協組合長も務めた。  小さな祝島の島民が30年間もこぞって反対闘争を続けてきた秘密の一つに、著者のリーダーシップがある。決して独裁ではなく、島民の意見を集約しながら厳しい現実を乗り切ってきた統率力はかけがえのないものだ。島民が自立して生きるために、原発の金に頼らないために、そして人間の尊厳を失わないために知恵を出し合い生きる姿に共感と感動を覚える。闘いはいまだ終わっていない。(ヨ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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