- 女たちの韓流 韓国ドラマを読み解く
- 山下英愛 著
- 岩波書店800円
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韓国ドラマを見始めたら、いくら時間があっても足りなくなるだからこそ、韓ドラ初心者の私は本書で“つまみ食い”ができると手に取った。そして、ドラマの筋(もちろん結末除く)と俳優を紹介し、背景になる社会を深い洞察で説く著者の筆致にワクワク。
女たちを描くドラマのテーマは、韓国社会に今も根を張る家父長制-性別役割分業、「長男の嫁」、婚外子や未婚への差別、「嫁姑」意識が多い。加えて、貧困、暴力、格差、裏切りと復讐、愛憎、友情とてんこ盛り。読むにつれて、韓国ってそうなんだよねーと膝を叩くも、だが待てよ?私たちの周りに潜んでいることばかりではないか。
著者が語るドラマから社会の移り変わりが見える。女性大統領のドラマも紹介され、現実の選挙戦との比較もできる。
本書はウェブサイト上の連載をエッセーにまとめたもの。著者は韓ドラの講演が人気で、いまや好きなドラマを見る時間が減ってしまったそうだ。(三)
- 集団的自衛権のトリックと安倍改憲
- 半田滋 著
- 高文研1200円
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安保法制懇(安全保障の法的基盤再構築に関する懇談会)が再編成された。目的は「集団的自衛権行使の解禁」で、あり得ない四類型を想定して国民の不安をあおる。自民党は国家安全保障基本法の制定という立法措置により、解釈改憲が可能という立場だ。議員立法で法案を成立させ、「法律によって憲法解釈が変更され、『国のかたち』が変えられることになる」という事態が迫っている。
本書の目的は安倍首相の暴走にブレーキをかけるためだという。この「四類型のインチキを暴き、『国家安全保障基本法』の中身を検証」、改憲の狙いをさぐり、「国防軍」の未来を考えている。何が起ころうとしているのか、この本を読んで、行動を起こす時だ。
今や、若者はPKOや災害派遣活動を見て、自衛隊を志願する。だが、「人助け」を志願した若者は早々に自衛隊(国防軍)から去り、米国と同じように、後には雇用の場を求めて若者が集まるのかもしれない。(い)
- 沖縄ワジワジー通信
- 金平茂紀 著
- 七つ森書館1800円
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イライラする感情を、沖縄ではワジワジーという。軍用地、辺野古の新基地計画、オスプレイ。どこぞの市長は、女性のからだを米兵による性犯罪の「防波堤」として活用せよと発言した。ワジワジーしない方がどうかしている。
3・11後の福島から「沖縄の気持ちがようやく分かった」という声があいついだ。経験すれば分かるものだが、それでは命がいくつあっても足りない。他者の経験を自己のものとして取りこむのが学びである。さらに記憶し、次代へ伝えなければ意味がない。日本に欠けていることだ。
沖縄戦の集団死を否定する試みはあとを絶たず、実教出版の教科書や『はだしのゲン』は焚書の対象になった。ナチスの手口は既に始まっている。本書は、長く沖縄の基地や政治を取材した著者による「沖縄タイムス」の連載。沖縄の反発が地域エゴなのか、自分の町で、自分の身に起きたと思って考えたい。その程度の想像力すら持ちえないのなら、この国の未来は暗い。(た)