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ふぇみんの書評

「慰安婦」バッシングを越えて 「河野談話」と日本の責任

「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター 編

  • 「慰安婦」バッシングを越えて 「河野談話」と日本の責任
  • 「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター 編
  • 大月書店2200円
 カミングアウトから22年。元「慰安婦」の女性たちは戦時性暴力のサバイバーとして、さらに人権活動家として、歴史的正義と尊厳を求める世界の人々を鼓舞する存在になった。一方、日本では「強制はなかった」「慰安婦は公娼だった」「国民基金で補償した」「日韓条約で解決済み」など歴史と責任の否定論が繰り返され、「慰安婦」バッシングの親玉、安倍晋三が首相というありさま。  本書はこの状況でまず知っておきたいこと、軍の強制を認めた「河野談話」の意義、20世紀初頭から国際的に批判されていた公娼制度、法的責任回避と被害者分断の「国民基金」について解説する。そして解決に何が必要か。日本政府にできることを被害者に受け入れてもらうのではなく、被害者が求める謝罪と補償を日本が受け入れること。日韓条約をめぐる最新研究と、植民地主義の責任を問う世界史的パラダイムシフトという潮流からの、「慰安婦」問題解決の新たな方向性が示唆に富む。(弦) 

脳の個性を才能にかえる 子どもの発達障害との向き合い方

トーマス・アームストロング 著、中尾ゆかり 訳

  • 脳の個性を才能にかえる 子どもの発達障害との向き合い方
  • トーマス・アームストロング 著、中尾ゆかり 訳
  • NHK出版2100円
 アメリカで特別支援学級の教師や心理療法士として多くの現場経験をもつ著者は、「自閉症」「ディスレクシア(失語症)」「ADHD(注意欠陥多動性障害)」「知的発達の遅れ」「不安障害」「気分障害」「統合失調症」など、家族も含めた社会からネガティブにとらえられることの多い、7つの「個性」のポジティブな面に光を当てる。そしてポジティブな面をより生かすための具体的な対応法を提示する。  正直、読む前はタイトルの「才能」という言葉に身構えてしまった。差別はもちろんアウトだが、個性だ才能だとことさら持ち上げるのも結局はマジョリティーの価値観にすぎず、差別と表裏一体ではないかと思うからだ。だが読み進むにつれて、「脳の多様性」が社会の本当の意味での「豊かさ」を支えているという事実と、個性的な脳をもつ人々が尊厳をもって生きられる社会をという著者の思いが伝わってくる。社会を支えてきた多様性を破壊しようとするマジョリティーこそを何とかせねば。(葉)

子どもに「ホームレス」をどう伝えるか いじめ・襲撃をなくすために

生田武志、北村年子 著

  • 子どもに「ホームレス」をどう伝えるか いじめ・襲撃をなくすために
  • 生田武志、北村年子 著
  • 発行=ホームレス問題の授業づくり全国ネット 発売= 太郎次郎社エディタス1200円
 毎日のように、子どもたちがホームレス状態の人を暴行し襲撃する事件が日本中で起こっている。  ホームレスを支援してきた著者たちは、事件の背景には「ホームレス」は社会のクズだ、役立たずだ、という間違った思い込みがあると考える。実は野宿者の大半は空き缶集めなどで働き、運悪く定職を失った人々だ。そうした事実を伝えるために子どもたちにホームレス問題の授業を行い、ビデオも制作している。  「homeless」=安心できる住環境にない人々だが、子どもたちもまた安心できる環境にはいないのだ。  北村さんが子ども時代、病気で働けなくなった父を自分の言葉で自死に追い込んだのではないかと悔恨し(遺族が悔恨を抱く必要はないのだけれども)、それを生徒の前で語る言葉は心を打つ。  こうした授業を行うにあたり役立つ資料や発問集もあり、授業づくりに役立つ。(衣)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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