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ふぇみんの書評

ふたりの作家 稲子・栄 文学への旅

五十嵐福子 著

  • ふたりの作家 稲子・栄 文学への旅
  • 五十嵐福子 著
  • 発行=菁柿堂 発売=星雲社1600円
 本著は佐多稲子のゆかりの地と人を訪ね、作家の深い真実に触れる文学散歩である。著者は「佐多稲子研究会」会員。  最初に取り上げられているのは親交が深かった土門拳との思い出の場所、「室生寺」と橋本屋旅館。女人高野のたおやかな美しさを「室生寺は朱い」と呟いた佐多さんの感性を心に刻むところから始まる。小説『樹影』の舞台であり、佐多さんの生地でもある長崎の文学散歩では、被ばくした画家のモデルの実弟を訪ねて話を聞くが、実在の人の息づく体温が伝わり圧巻である。堀辰雄論では、佐多さんの「堀の感性をぴしっととらえた」評価の目に、文学だけが与えてくれる出会いを体験したと心弾ませるなど、すべての章が佐多さんへの深い尊敬と親愛の情に溢れている。  後半の3分の1の壺井栄の文学散歩は、甥の戎居研造の話を中心に市井に暮らす人々の温かさ、知られざる栄の人間像が浮き彫りにされる。(k)

ヒヤマケンタロウの妊娠

坂井恵理 著

  • ヒヤマケンタロウの妊娠
  • 坂井恵理 著
  • 講談社429円
 「少子化」なのに、子育てをめぐる環境が劣悪な日本。男が妊娠すれば、大変さが分かるんじゃないの!? それを描いたのがこのマンガ。男も妊娠できることが判明し、「イクメン」ならぬ「ウムメン」が誕生して10年。効率第一主義の「エリートサラリーマン」で、シングルの桧山健太郎が妊娠。まだ「妊夫」への偏見と差別がある中、「産んで自分の居場所をつくってみせる!」と決心。その行動が、桧山自身も、周りの人も変えていくが…。  度肝を抜く設定が単なるファンタジーに終わらないのは、妊娠・出産・子育ての状況がリアルだから。つわりでも会社を休めない、相手に妊娠を告げる時の戸惑い、「妊夫」の誕生で育休の給与保障が手厚くなる(!)…。典型的な「男」だった桧山は、今や子どもが将来生きる社会にも思いを馳せ、子育ての大変さから人に頼ることも学ぶ。次世代の育みを「母」にも「母性」にも依存しない社会は、豊かで生きやすい。(登)

朴正煕 動員された近代化 韓国、開発動員体制の二重性

チョ・ヒヨン著 李泳采 監訳 牧野波 訳

  • 朴正煕 動員された近代化 韓国、開発動員体制の二重性
  • チョ・ヒヨン著 李泳采 監訳 牧野波 訳
  • 彩流社3200円
 著者は、1970年代、韓国・ソウル大学在学中に、朴正煕軍事政権に反対して投獄された経験のある、大学教員で民主化運動をリードしてきた市民運動家である。  韓国には、朴正煕を、韓国の近代化を導いた「成功した指導者」として熱狂的に支持する集団と、民衆を暴力的に支配した独裁者であるとして厳しく批判する集団がある。大雑把に前者を保守派、後者を進歩派とするならば、保守派と進歩派には一面化された朴正煕時代のイメージのみが流通している。2つの対立的視覚を超え、この時代の再解釈をしたのが本書である。  著者は朴正煕体制を「開発動員体制」として概念化し、権威主義的反共体制として、矛盾的二重性・複合性を持っていたと指摘。それが支配の戦略と危機(民衆の抵抗)を生んだとの言説が興味深かった。  巻末の用語解説も充実。朴正煕の娘である朴槿恵大統領が誕生した、韓国の今の政治状況を理解するにも、本書は役立つ。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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