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ふぇみんの書評

原発をつくらせない人びと 祝島から未来へ

山秋真 著

  • 原発をつくらせない人びと 祝島から未来へ
  • 山秋真 著
  • 岩波書店 760円
 原発建設を凍結させた石川県・珠洲の反対運動に出合った著者(本紙2009年5月25日号1面登場)が、その後山口県・祝島で上関原発反対運動を30年続ける人びとに密着ルポしたのが本書。  祝島の起源は古く、瀬戸内の歴史に深く関わる。古来、島人は自在に船を操っていたという。私には、それが原発建設工事に小舟を操り抵抗する姿と重なった。  島の人間関係は建設反対派と推進派とに分かれ、伝統の祭「神舞」や、葬式にも影響する。その苦しさを語る声を、著者はすくい上げる。  映像を見ているかのような筆致に、ぐいぐい引き込まれ、海上保安庁や中電に雇われる作業員との攻防に、胸がつぶれそうになる。とりわけ、11年2月21日のぶつかり合いの臨場感は圧巻だ。著者もその場に身を投じていたのだ。  原発建設は現時点で凍結されているが、今政権の下では凍結撤回の恐れも残る。しかし、次世代が育ちつつある祝島を見つめる著者のまなざしに希望を見た。(三)

Silent War(サイレント ウォー) 見えない放射能とたたかう

今中哲二 著

  • Silent War(サイレント ウォー) 見えない放射能とたたかう
  • 今中哲二 著
  • 講談社1500円
 フクシマ後、放射能ゼロの生活は難しくなった。放射線被ばくは「どこまでガマンするか」であり、外部被ばくと内部被ばくの違いや、「ただちに影響は…」は「後で…」の意味であることを知っておこう。見えない放射能を「正しく恐がる」ために必要な知識と情報を、本書が分かりやすく提供してくれる。  巻末にある原爆投下後の広島市内で家族を探す体験記は著者の母親によるもの。その時の母の被ばく量を推定しているところなど、科学者の面目躍如であろう。しかし著者の原発反対は、自身が被ばく2世だからではなく、原子炉実験所とチェルノブイリという現場での実践が土台だ。飯舘村の汚染について、まっ先に報告したのも著者たちの調査チームである。やはり真実は現場にしかないのだ。  そもそも原子炉は原爆製造が目的で、発電は後付けだった。さまざまな隠蔽は、核兵器保有と同義だから。日本の原発を「うさんくさい」という著者は鋭い。(た)

いのちに共感する生き方 人も自然も動物も

野上ふさ子 著

  • いのちに共感する生き方 人も自然も動物も
  • 野上ふさ子 著
  • 彩流社2500円
 著者の幼い日の情景を思い浮かべると、その豊かさに心を奪われる。新潟での自給自足の暮らし、調味料もほとんど使わない食事、動植物と共存する日々は、なんと色鮮やかなのだろう。この自然が著者のその後の活動すべての基盤となっている。大学を中退し、アイヌの世界と出合い、その権利活動に取り組んだ後は、経済優先の自然破壊に異を唱え、自然を守るための活動や動物実験反対、動物保護の活動に尽力する。  現在、法令化されている化学物質、医薬品における動物実験は単に残酷なだけでなく、特定の条件でしか行われないため安全性を完全には確認できず、複数物質の複合作用の検証もできないという論点には共感する。  がんを患い、病を通して医療や介護のあり方を見据え続けた著者は昨年秋に惜しくもこの世を去った。身近な生き物から地球、宇宙まで見通すその思想に触れたとき、「共感は人間の社会活動の源泉」という言葉は深くしみる。(梅)
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