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ふぇみんの書評

彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力

荻上チキ 著

  • 彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力
  • 荻上チキ 著
  • 扶桑社1300円
 「ワリキリ」という、個人売春をする女性たちの実像を丹念な取材で浮き彫りにしたルポ。出会い喫茶や出会い系サイトを通じて男性と知り合い、セックスをして対価を得る女性100人以上にインタビューを行い、200人のデータを集めた。エピソードも数多く登場し、出会い喫茶に通う女性の日記も収められている。  ワリキリをせざるを得ないという消極的選択の背景には5重の排除と2重の追い打ちがあると著者はいう。5重の排除とは湯浅誠が分析した貧困に至る要因のこと。2重の追い打ちとは買売春をタブーにして社会問題として扱わない(社会問題からの排除)こと、女性の貧困が顕在化されない社会構造(ジェンダーによる排除)のことを指す。  「よりマシ」を求めてワリキリをする女性に「もっとマシ」な処方箋を提示しなければ、また、社会の側にある斥力に対応しなければ、現実を変えることはできないと痛感する。何をすべきか見えてくる良書。(塩)

受精卵診断と出生前診断 その導入をめぐる争いの現代史

利光惠子 著

  • 受精卵診断と出生前診断 その導入をめぐる争いの現代史
  • 利光惠子 著
  • 生活書院3000円
 本書は、1990年代から2010年までの、日本における受精卵診断の導入をめぐる、日本産婦人科学会と、障害者や女性の市民団体との論争を中心に、この技術がどのように導入されていったかについて述べている。年代別に、論文などからていねいに論争を追い、出生前診断の問題を考える上で、資料的な価値の高い書だ。  障害者団体と女性団体は、論争を繰り返しながら、「子どもの質を選ぶこと」は女性の自己決定権には含まれないとし、導入に共に反対してきた。その過程で、多くの問題点が提示され、技術普及への一定の歯止めとなった。だが「流産防止」や「不妊治療の一環」という言説が出されると、受精卵診断は受容され、広がり始める。  新たな出生前診断が騒がれている今、本当にこれらの検査は必要なのか、障害や不妊はないほうがいいのか、「生命の選別」と「自己決定権」をめぐる、さまざまな人たちの深い思索を読み返しながら考えてみたい。(ら)

沖縄 占領下を生き抜く 軍用地・通貨・毒ガス

川平成雄 著

  • 沖縄 占領下を生き抜く 軍用地・通貨・毒ガス
  • 川平成雄 著
  • 吉川弘文館1700円
 著者は、与那国島生まれ。琉球大学で沖縄社会経済史を教える。  帯に「沖縄を返せ」とあるが、沖縄戦、強制土地接収、度重なる通貨交換、毒ガス貯蔵…と続く、沖縄民衆の苦難の歴史が、具体的に描かれ、胸を突かれる。  米軍との激闘の中で、沖縄民衆の闘いぶりを詳細に記し、「県民に対し特別のご高配を賜らんことを」を結びとした電文を大本営に打って自決した太田實海軍根拠地隊司令官。彼が訴えた県民への特別の配慮は、まったく逆の方向へと動いている。  島ぐるみの毒ガス撤去闘争は、世界的にも先進的取り組みと評された。しかし、沖縄民衆の苦しみはいまも続く。その責任は、沖縄返還時に「基地構造を変える計画を作らなかった日本政府にある」と著者は言う。日米地位協定の範囲を逸脱する「思いやり予算」は、2011年度で1858億円。「私たち沖縄県民は何度訴えればわかってもらえるのでしょうか」という中2少女の言葉を再度かみしめたい。(JO)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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 加入者名:婦人民主クラブ
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