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ふぇみんの書評

生活保護とあたし

和久井みちる 著

  • 生活保護とあたし
  • 和久井みちる 著
  • あけび書房1400円
 生活保護受給者への激しい攻撃がやまない。自らも生活保護費を受給し、またDV被害者でもある著者は、まさに「あたし」の視点から制度の重要性を訴える。  膨大な資産調査や親族への扶養照会など申請の手続も、支給額内での生活も、想像を絶して厳しい。節約のためトイレを流す回数を減らす、冷暖房をつけない、食事を抜くなど、皆、工夫を重ねる。  女性は交際相手ができると、その人に扶養してもらえないか行政から聞かれたりする。逆に受給者同士のカップルは結婚しても子はつくらないよう「指導」をされた例も。  一番つらいのは孤立だ。だが著者は友人づくりの天才だと思う。日々の大変さについておしゃべりをしたり、節約術の情報交換をする仲間が、今では100人を超えるというから、ちょっとうらやましい。  生活保護費の算定は、賃金や医療費など、受給者以外の人の生活にもかかわる。自分にはカンケーないと思っている人にこそ読んでほしい。(梅)

低線量放射線被曝 チェルノブイリから福島へ

今中哲二 著

  • 低線量放射線被曝 チェルノブイリから福島へ
  • 今中哲二 著
  • 岩波書店1800円
 飯舘村を現地調査した科学者が静かに、確固たる信念をもって語る。Ⅰ部は3・11後をいかに生きるべきかという提言。震災による原発事故の影響は福島にとどまらない。東京でも放射能汚染は確実に存在する。信じたくはないが、データが示す数値は冷徹だ。チェルノブイリの経験に裏付けられた著者の警鐘を受けとめたい。  低線量放射線の影響は、分からないことも多いが、晩発性障害の発生は確率的、がまんすべきは年間1mSvまで、安全の「しきい値」はないというのが現代科学の到達点。国際放射線防護委員会(ICRP)の安全基準には内部被曝の捨象という問題があるが、年間100mSv 以下なら問題ないという新たな神話が語られる日本はどうなるのか、これからが心配になる。今必要なのは信仰でなく科学。低線量被曝と広島・長崎原爆の放射線量評価を述べるⅡ・Ⅲ部はそのための資料。  賢者は歴史に学び、愚者は経験で識るという。しかし経験してからでは遅すぎる。(た)

天が崩れ落ちても生き残れる穴はある 二つの祖国と日本に生きて

李貞順 著

  • 天が崩れ落ちても生き残れる穴はある 二つの祖国と日本に生きて
  • 李貞順 著
  • 梨の木舎2000円
 著者は1942年に兵庫県で生まれ、3歳の時の静岡の空襲を記憶する在日2世。祖国解放後、一時韓国・馬山で暮らすが、日本から帰らない父の元へ行くため、朝鮮戦争中の53年、母と密航船で日本に渡る。朝鮮高校の同窓生には北の祖国に渡った人も多かったが、著者は朝鮮学校の政治化に反発し、中退。30代で同胞の夫とアメリカへ渡り、米国市民権を取得し、現在に至っている。両親、夫とその両親のことも綴っているが、それぞれの人生がなんとドラマチックなことか。  日本社会での差別、韓国同胞からの「在日」への蔑みを受けながら、行く先々で多様な人々と交流を重ねてきた著者のグローバルな視点は、繊細で客観的で深い。表題は朝鮮の定番の諺という。多くの苦難をくぐり抜けてきたたくましい半生に感動すると同時に、マイノリティーの存在が社会に寛容さと豊かさをもたらすはずと、改めて感じた。(は)
【 新聞代 】(送料込み)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
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 加入者名:婦人民主クラブ
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