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ふぇみんの書評

アメリカ先住民女性の現代史“ストロング・メディスン”、家族と部族を語る

エイミー・ヒル・ハース 著 佐藤円、大野あずさ 訳

  • アメリカ先住民女性の現代史“ストロング・メディスン”、家族と部族を語る
  • エイミー・ヒル・ハース 著 佐藤円、大野あずさ 訳
  • 彩流社2800円
 生き生きと、ときにチャーミングな語り口。米国先住民・ラナピ族の長老で「ストロング・メディスン」の「インディアンネーム」を持つ女性の、オーラルヒストリーである。1922年、米国東部ニュージャージー州生まれ。素性を隠して生きる時代を経て、政府による同化政策や、差別、偏見など、有色人種が受ける不条理を変えようとしてきた。印象的だったのは、第2次世界大戦のときに一般の人々と比較して3倍もの先住民が戦場にかりだされたことだ。リーダーのもと公民権運動を繰り広げた黒人と比べると、部族ごとに異なる文化を持つ先住民たちが、運動によって権利を勝ち取るのは70年代になってからだ。  本書は、「ネイティブ・プライド」を持ち、一市民としての道を切り開いていくひとりの女性の生き方を語ったものとして、これまでのステレオタイプの先住民像を変えるのではないだろうか。(室)

希望の倫理 自律とつながりを求めて

岡野治子、奥田暁子 編

  • 希望の倫理 自律とつながりを求めて
  • 岡野治子、奥田暁子 編
  • 知泉書館3500円
 3.11後の社会のあり方や人々のつながり、いのちというテーマをフェミニズム的視点で捉え、新たな倫理観と社会展望を描く書。  震災後、各所で「絆」の名のもと家族・共同体回帰が叫ばれた。だが現状は、弱者の声は無視され、孤立死が増加、生活保護受給者がバッシングされ…凄まじい社会的排除が行われている。  この社会構造を問い直す作業は人々の声を聞くことから始まる。戦時性暴力被害女性との交流や、ホームレス支援などに関する項では、各筆者が個人に寄り添い、暴力や差別、排除の様相を探る。また、放射能に対する母たちの運動からは、新たな共生の形が見える。  新しい生き方のヒントを示す人気作家、山崎ナオコーラの文学考察も興味深い。何となくゆるく、自由、でもちゃんとフェミという彼女の作風は、100年以上もの女性たちの闘いがあって到達しているものなのだ。1世紀先を見据え、力を抜いて立ち向かおうと思えた。(梅)

ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場

布施祐仁 著

  • ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場
  • 布施祐仁 著
  • 岩波書店1700円
 福島第一原発。「ふくいち」のことを収束作業に身を投ずる労働者は「イチエフ」と呼ぶ。現場では箝口令が敷かれ、東電、政府、メディアのフィルターに遮られ、真の状況は私たちに届かない。その空隙を埋める渾身のルポルタージュ。2012年の平和・協同ジャーナリスト基金賞に輝く。  作業員たちの背景は様々だ。雇用問題、原発収束作業であることを隠すなどのだましの社会構造。すさまじい労働環境、ずさんな安全・健康管理の実態。ピンハネされた日当がストレス発散のパチンコに消える。彼らの生の声を聞いてほしい。  「日本のため、福島のため、誰かのために命を削って働いていることが『誇り』だった」と証言する彼らの犠牲に支えられた綱渡り状態の日本。誰かを踏み台にしなければ成り立たない繁栄を、まだ追い求めようというのか。「ふくいち」と「イチエフ」の隔たりは果てしなく遠い。それを埋めるのは、事実を受けとめる私たちの責務だ。(た)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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