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ふぇみんの書評

海の狩人 沖縄漁民 糸満ウミンチュの歴史と生活誌

加藤久子 著

  • 海の狩人 沖縄漁民 糸満ウミンチュの歴史と生活誌
  • 加藤久子 著
  • 現代書館2300円
 「海の勇者(海ヤカラー)」として知られる沖縄・糸満の漁民たち。250年前にサンゴ礁の狭い台地に移り住んでから現在に至るまでの糸満漁民の暮らしが、膨大な資料と聞き取りによって浮き彫りにされる。読み応えのある一冊。  全編に女性の視点が光るが、中でも興味深かったのが、他では類を見ない「夫婦別財」の慣習による糸満女性たちの経済的自立。男たちが大量に捕獲した魚を販売するのは女性の仕事。自分の技量で売りさばいた収入から、仕入れ値を漁民に渡し、利益は「ワタクサー(私の銭)」として蓄える。その額は膨大で、危険な海の仕事で夫を失っても困らなかった。  船団を組み、素潜りで魚を追い込む独特の大型漁法を編み出した糸満漁民は、東南アジアに出漁し、石垣島などの八重山諸島にも移住していく。苦難の歴史、暮らしを支えた「雇い子」制度や、「門(ジョー)」を基本とした漁民共同体。沖縄全体の暮らしや、戦争の爪痕も見えてくる。(JO)

米軍基地の歴史 世界ネットワークの形成と展開

林博史 著

  • 米軍基地の歴史 世界ネットワークの形成と展開
  • 林博史 著
  • 吉川弘文館1700円
 戦争責任の研究を続けてきた著者による米軍基地問題研究の第1作目。米軍の世界戦略の歴史を追う中で、日本、そして沖縄の基地はどう位置づけられてきたのかを、膨大な資料から解き明かそうとする。ナチスの戦争責任追及を明確にした旧西ドイツと、戦犯釈放を国民的課題とした日本の違いが、基地政策に反映されたという見方や、米軍の買春・性暴力を日本軍「慰安婦」と関連づける見方、基地犯罪の裁判権問題など、視点が新しい。  米軍にとって海外の基地は、あくまでも自国防衛のため。だから、ひとたび攻撃されたり、相手国の反基地闘争や民主化の声が高まった時、撤去もやむなしと考える人が常に内部にいる。歴史からは、変幻自在に形を変えて生き延びた米軍が見えてくる。  民主党政権誕生後は普天間基地撤去も不可能ではなかった。なのに、なぜ? 安保が日本を守るという幻想は、日本人自身がつくったもののようだ。(矢)

沖縄とヤマト「縁(えにし)の糸」をつなぎ直すために

小森陽一 編著

  • 沖縄とヤマト「縁(えにし)の糸」をつなぎ直すために
  • 小森陽一 編著
  • かもがわ出版1800円
 沖縄「返還」40年の年、途切れた沖縄とヤマトの「縁の糸」をつなぎ直すため、著者が4人の沖縄人と対話した。相手は沖縄大学の新崎盛暉さん、元宜野湾市長の伊波洋一さん、写真家の石川真生さん、琉球大学の我部政明さん。著者も政治意識と沖縄体験を語る。  明治政府による琉球処分も、敗戦も日米安保も、沖縄をヤマトの踏み台にした。新崎さんはそこを沖縄近現代史として明らかにする。普天間基地問題には辺野古や高江の座りこみの力が大きく影響し、「これまでも、沖縄で実力闘争にまで至った反対運動は、ほとんどが(住民側が)勝っている」と伊波さん。戦争のメカニズムを知り、基地をなくそうと説く我部さん。そして常に被差別の側に付き、歯に衣着せぬ真生さん。  だが沖縄とヤマトの「縁」をつなぎ直すのは、ヤマトの問題だ。沖縄を捨て石にしてきたヤマトの私たちこそが、沖縄に肩代わりさせた苦痛を意識化しなければ縁はつなげないと問われる。(三)
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