WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

さいごの色街 飛田

井上理津子 著

  • さいごの色街 飛田
  • 井上理津子 著
  • 筑摩書房2000円
 古い建物の上がりかまちに、けばけばしい照明に照らされて「女の子」が座っている。通りを歩く男性客に声をかけるのは、客引きの「おばちゃん」…。大阪市西成区の飛田新地は、遊郭の名残をとどめている「色街」だ。表向きは「料亭」で、店の女性と男性客は「恋愛」して「性交渉をする」。ここは買売春の場。著者は「とんでもない」と思いながらも、この独特の雰囲気の町に惹かれて記録したいと、12年にわたり飛田の住人や関係者に話を聞いてきた。  取材が散発な印象を受けるが、町全体が取材拒否の中で、数少ない出会いを最大限生かして取材を進めていく様子は、さながら冒険記。元料亭を探検したり、経営者や「女の子」やヤクザからも、買売春の是非は抜きに話を聞く。浮かび上がるのは、「女の子」も「おばちゃん」も貧困の連鎖があること。「女の子」の声が幾重にも隠されていること。公娼制度があった時代と変わらない構造が、確かに存在することを思い知らされる。(登)

プルトニウム発電の恐怖2 フクシマの過ちを繰り返さないために

小林圭二、西尾漠 編

  • プルトニウム発電の恐怖2 フクシマの過ちを繰り返さないために
  • 小林圭二、西尾漠 編
  • 発行=創史社 発売=八月書館1600円
 原発のウラン燃料は、投入した分のたった数%しか燃えない。普通なら欠陥品とされるところ、廃棄物に含まれるプルトニウムにウランを混ぜて、もう一度燃やす。これがプルサーマルだ。本書はその危険性、不要性、核拡散の可能性を著者らが丁寧に論じ、各地の反対運動の熱い報告もある。  福島第1の3号機はプルサーマルだったため爆発の威力があり、プルトニウムが飛んだ。本書では、5月に愛媛の海でプルトニウムが検出されたというが、マスコミも沈黙したのはなぜだろう。また、ほとんどの原発が活断層や小規模断層の上にあることがよくわかり、中には3・11後(4月11日)の誘発地震で、活断層ではないと言われていた断層が動いた湯の岳(福島浜通り)のような場所もある。地震国日本に原発は許されないことを知ってもらうためにも、まわりの人に勧めてほしい。巨大地震が心配される中、全国、いや世界の市民のつながりが、今ほど重要な時はないと感じた。(矢)

野上彌生子

古庄ゆき子 編

  • 野上彌生子
  • 古庄ゆき子 編
  • ドメス出版1900円
 死去直前まで執筆し続けた野上彌生子は作品数も研究者も多い。本書も、出身地である大分県の大分女性史研究会が共同研究として執筆した評伝。いくつもの作品を通して、作家彌生子と、女で妻で母である彌生子が浮かび上がる。好奇心と知識欲旺盛な伊藤野枝や宮本百合子との友情も興味深い。  軍国主義批判の『迷路』、個人と国家の対峙を描く『秀吉と利休』は名高い。明治から昭和の社会や政治の激動を肌で感じ、プロレタリア文学運動では「同伴者作家」と見なされた。飢えることはない自身が、人々が飢えや貧困と闘うことに超然とすることは許されないとしたが、社会運動自体には加わらない「傍観者」だった。一方、疎開先の“大学村”ではコネを多用するなど、政治的に振る舞う姿も見えてくる。  彌生子の描く女性像や戦時中の作品は、“時代の制約”ゆえと解釈されるかもしれない。反面教師であれ彌生子の作品を今読む意味は何かと、考えさせられる。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ