WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

おしゃべり・雑談の政治哲学 近代化が禁じた女たちの話し合いと〈講〉

岩谷良恵 著

  • おしゃべり・雑談の政治哲学 近代化が禁じた女たちの話し合いと〈講〉
  • 岩谷良恵 著
  • 出版社:大月書店 価格:4,200円
 会議での論理的発言には意味があるが、ただのおしゃべり・雑談は非生産的で無意味と捉えられることが多い。しかし、本書では「話に花を咲かせる」楽しいおしゃべりに積極的な意味があるという。かつて農作業をしながら、井戸端で水仕事をしながら、講に集いながら、生活に根差した経験を話し、聞くことで人の多様性を感得し、自分の思考や判断への糧となっていったさまが、講や「話し合い学習」の研究から明らかにされていく。それはまた、公に意見や考えを言葉で表現できない立場にあった女性たちにとって、公共的空間で発言できる機会でもあった。  明治以降の近代化や第2次世界大戦後の民主化の中で、講の活動が抑えられ、有用な目的達成のためではないおしゃべりが軽視され、自由につながりあう横の関係が失われていったことから、逆に近代的な「発展」「進歩」をも捉え返す。「無縁社会」の今、「話し合いと協同の活動を」という著者の言及には強い説得力がある。(ま)

母と子のための被ばく知識 原発事故から食品汚染まで

崎山比早子+高木学校 著

  • 母と子のための被ばく知識 原発事故から食品汚染まで
  • 崎山比早子+高木学校 著
  • 出版社:新水社 価格:1,300円
 福島での原発事故後、悔しさと怒りに身を震わせながらにわか勉強をした人は私だけではないだろう。今や多くの書籍が出版され、ネットでも情報は得られるが、私たちのくらしを視点に執筆された本書は、原発の歴史や放射能が人体に及ぼす影響、食物、再び事故が起きたときの準備などについて、最低限知っておかなければいけない知識を整理するのに役立つ。  被ばくを避ける最良の方法は避難だが、それがままならない場合は被ばくを最小限にとどめる努力が必要になる。放射性物質を取り込みやすい食べ物の種類や汚染が心配な食材の調理方法、生活の中で注意すべきことなどをぜひ覚えておきたい。  汚染された地域に住み続ける場合には、食事や行動など毎日の記録も不可欠だそう。本当に面倒なことになってしまったが、なるべくヤケにならず日々を過ごすためにもやっておこう。理科と数学が苦手な私には、被ばくの試算の計算式が少々分かりづらかった。(梅)

原発訴訟

海渡雄一 著

  • 原発訴訟
  • 海渡雄一 著
  • 出版社:岩波書店 価格:820円
 日本最初の原子力発電は1963年。そして、70年代には、73年の伊方原発訴訟を皮切りに、東海、福島、柏崎と4つの原発訴訟が住民によって起こされている。故高木仁三郎さんら科学者もこれらの裁判を全面支援した。  弁護士として30年間、もんじゅ裁判、浜岡裁判(現在、東京高裁で係争中)など数々の原発訴訟に精力を注いできた著者は、福島原発事故を止められなかった忸怩たる思いの中で、これまでの裁判の争点や問題点を振り返る。  原発の安全性の問題も、地震の影響も裁判の中で明らかにされてきた。伊方・最高裁判決は、敗訴ではあったが「災害が万が一にも起こらない」ことを安全審査の前提とした。もんじゅ控訴審(名古屋高裁金沢支部)、志賀地裁判決(金沢地裁)は住民が勝訴した。それでもなぜ、裁判所は原発を止められなかったのか。  「あきらめない」という強い決意と、脱原発への道を共に考えるための素材が詰まった一冊。(JO)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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