「僕のお父さんは東電の社員です」 小中学生たちの白熱議論!
森達也 著 毎日小学生新聞 編
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- 「僕のお父さんは東電の社員です」 小中学生たちの白熱議論!
- 森達也 著 毎日小学生新聞 編
- 出版社:現代書館 価格:1,400円
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「突然ですが、僕のお父さんは東電の社員です」という書き出しで、2011年3月、「毎日小学生新聞」に6年生からの投書が寄せられた。論理的に整理された文章に、ちょっと無理してイイ子になってない?なんて心配してしまうが、ともかく反響は大きかった。それだけに返信内容も東電を擁護するべきでないという反対意見や、国・政府が悪いという声、エネルギー問題の提案とさまざまだ。
後半部分は著者による解説。原発の仕組みや、54基も造られた経緯を会社や学校などの組織になぞらえ、かみ砕いて説明する。丁寧で分かりやすい。でも長く放射能と共に生きねばならない子たちに「きみたちならできるよ」と、山積した課題をバトンタッチするかのようにまとめてしまうのは、ちょっと早すぎる気もする。内部被ばくや報道不信、事故で滅茶苦茶になったもの、まだ何ひとつ「収束」なんかしちゃいないもの。(梅)
- 協同で仕事をおこす
- 広井良典 編著
- 出版社:コモンズ 価格:1,500円
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大震災を契機に、「働くものが出資し、責任を分かち合い、仕事を起こす」という労働者協同組合の意義を紹介。個々の事例は、大きなパイを奪いあう市場経済の中の雇用でなく、労働者自身が地域で働く場を作る具体的取り組みだ。
震災後の東北各地の試みは失業対策だけでなく、地域再興に向けた期待も背負う。また商店街が衰退した地方都市で、地元商店の閉店によって買い物難民となった高齢者を意識して、閉店した百貨店跡で食料品店を始めた労協ながのの例には、働くことが直接地域に役立つという緊張感と喜びを感じた。起業を考えている人々にも一読をすすめたい。
編著者らの対談は示唆に富む。労働者協同組合が「資本主義や市場経済が飽和した状況を超える具体的な労働や生活の姿」は理解できる。だが震災復興の拠点として神社や寺を活用し地域の協同労働に権威を与える、という論はどうか。かつて神社や寺が担った保守体制の再生産でない変化を望む。(さ)
震災・復興の社会学 2つの「中越」から「東日本」へ
松井克浩 著
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- 震災・復興の社会学 2つの「中越」から「東日本」へ
- 松井克浩 著
- 出版社:リベルタ出版 価格:2,200円
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本書は東日本大震災を体験した今、過去の災害(中越地震、中越沖地震)におけるコミュニティの経験と課題を探る。
1章では中越地震によって壊滅的な被害を受けた山間地の集落が既存組織を生かしながら再生した経緯をたどる。
一方で災害時に女性の視点がどう生かされたかを2章で探る。長岡市のグループは震災後ジェンダーを意識しつつ、勉強ではなく日常感じていることを話し合い「お互いに迷惑をかけてもいいじゃん」という言葉が出てきたという。その後、地域防災計画の見直しに女性の視点を入れたという。さらに中越沖ではコミュニティセンターの主事である2人の女性が活躍した例を紹介する。
今、地域の既存組織以外の、テーマ型・ネットワーク型のつながりを地域にどう取り込むのかが課題として見える。そのどちらでも女性そして若者の力に地域の将来がかかるという本書の主張を丁寧に受け止めたい。(衣)