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ふぇみんの書評

基地はなぜ沖縄に集中しているのか

NHK取材班 著

  • 基地はなぜ沖縄に集中しているのか
  • NHK取材班 著
  • 出版社:NHK出版 価格:1400円
 1952年当時、米軍基地の90%近くは日本本土に置かれていた。それがなぜ、現在の沖縄集中になったのか。よく言われる「地理的重要性」は真の理由なのか―NHK沖縄放送局の若手記者を中心に、膨大な資料をひも解き、国内外の取材を重ねて、沖縄の基地をめぐる歴史と海兵隊の実像に迫ったのがこの本。  そこからは、沖縄の基地問題の本質は「差別」であることがくっきりと見えてくる。本土から沖縄への海兵隊移駐の理由を、「コスト」と「日本国民との摩擦を避けるため」と語る元大佐。沖縄は日本政府と本土の民によって、繰り返し切り捨てられてきた。  「自分たちは日本の防衛に寄与している」と胸を張る米軍関係者。「日本国政府が『沖縄から出て行ってくれ』と言えば、我々は速やかに出て行く」と語る、元米国防副長官。  一方で日本政府は、沖縄に米軍基地を集中させる理由を明快に語ることすらできていない。原発事故と通底する差別が見える。(JO)

旦那場 近世被差別民の活動領域

大熊哲雄、斎藤洋一、坂井康人、 藤沢靖介 著

  • 旦那場 近世被差別民の活動領域
  • 大熊哲雄、斎藤洋一、坂井康人、 藤沢靖介 著
  • 出版社:現代書館 価格:2000円
 江戸時代に作られた身分制度に、「穢多」と呼ばれた長吏・かわた、「非人」などの被差別階級があった。たおれた牛馬などを解体したり、葬儀や罪人の処刑にも関わっていた長吏・かわたが働いていた場所を、旦那場という。旦那の由来はサンスクリット語の布施や喜捨。ドナーという言葉も同じ語源だそうだ。おもに東日本や信州の旦那場の資料から、その役割を研究する4人の学者が近世被差別部落の構造を捉え直したのが、本書。従来、支配階級から与えられたと思われていた制度や役割が、被差別部落内の自治によって維持され、幕府や村の役人らも介入できなかったことも分かってきた。  また経済活動の底辺を担いつつも、死を扱う長吏・かわたは生死の境界に存在すると見なされ、畏怖の念からか、民間宗教者や警備などの役割も与えられた。  明治以降、旦那場は解体されたが部落差別は残った。タブー視され、語られず知らされていない重い歴史を学ぶことができる。(室)

福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと

山本義隆 著

  • 福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと
  • 山本義隆 著
  • 出版社:みすず書房 価格:1000円
 在野の科学者である著者による、核開発の政治と原子力技術の哲学の書。  前段で、エネルギー政策は軍事・外交政策だと示す。岸信介が回顧録で「核開発は平和利用と軍事利用は紙一枚も違わない」と書き、1951年に日本語訳された原爆完成報告書が「人類の偉業」と紹介されていた。「原子力の平和利用」路線に沿って、アメリカは日本へ売り込み/牽制のダブルスタンダードを続けた、と原子力の平和利用のまやかしを著者は突く。  後段は科学技術論に移る。17世紀は「技術と学問は自然にたいする支配権を人間に与えるもの」で、近代科学は人類が自己過信し、自然へ畏敬の念を忘れていったのだと説く。その後科学技術には「人間に許された限界」があることを指摘されても、それは国家や政治に吸収されていき、現代の防衛や国際政治につながっていく。今は「原発ファシズム」から脱却し、世界に範を示せと著者は言う。  襟を正して読みたい。(さ)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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