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ふぇみんの書評

女性の権利を擁護する メアリ・ウルストンクラフトの挑戦

梅垣千尋 著

  • 女性の権利を擁護する メアリ・ウルストンクラフトの挑戦
  • 梅垣千尋 著
  • 発行=白澤社 発売=現代書館 価格:2200円
 1792年フランス革命の衝撃が広がる英国で刊行された『女性の権利の擁護』は、フェミニズムの古典として今も読み継がれている。メアリ・ウルストンクラフトは、経済的に恵まれない中で育ち自立をめざし苦学、著述家の仕事を得て、フランス革命の嵐の中『女性の権利の擁護』を書く。未婚の母となるなど生き方を含め当時の保守的な社会から激しく批判された(『獣の権利の擁護』というパロディ本が出版されたほど)が、数十年後に多くの評価を得ていった。  彼女は、男と女が相補関係にあるとしたルソーを批判。「結婚という奴隷制度」「女性は人を喜ばせる存在ではない」、欲望や評価の対象ではなく理性の主体として生きようと情熱的に呼びかける。本書の著者は性差論、マナー、信仰、権利をどう論じたかなどの切り口で『女性の権利…』を分析し、分かりやすく理解の手がかりを与える。  彼女の生涯を描いた映画があったらぜひみたいと思った。(衣)

「脱原発」成長論 新しい産業革命へ

金子勝 著

  • 「脱原発」成長論 新しい産業革命へ
  • 金子勝 著
  • 出版社:筑摩書房 価格:1400円
 1990年代初め、バブルが崩壊した。その後の不良債権処理、小泉「構造改革」等の政策の失敗と、誰も責任をとらない無責任体制により、日本は貧富の格差が拡大し、閉塞状況に陥っている。  この「失われた20年」の「連続」線上に大震災と原発事故が起きた、だから、この状況を打ち破るには「失われた20年」をもたらした政官財の無責任体制の「連続」を断ち切らなければいけないと、著者はいう。さらに、世界金融危機、エネルギーと地球温暖化の危機、3・11の危機に直面した今、原発政策の失敗を根本から反省し、環境エネルギー政策への切り替えを提言している。  再生可能なエネルギーへの転換で新しい技術を開発し、投資を呼び込み、内需を拡大させるという、経済から見た脱原発論に納得する。エネルギーと食の地産地消をベースとする地域分散型経済システムと、障がい者や女性などを排除しない社会の在り方が必要との意見には共感し希望を感じる。(り)

監視スタディーズ 「見ること」「見られること」の社会理論

デイヴィッド・ライアン 著 田島泰彦、小笠原みどり 訳

  • 監視スタディーズ 「見ること」「見られること」の社会理論
  • デイヴィッド・ライアン 著 田島泰彦、小笠原みどり 訳
  • 出版社:岩波書店 価格:3400円
「監視スタディーズ」という総合的な研究分野の確立をめざす意欲的な著作である。それだけに学術的な記述が続くが、読み進むうちに監視のイメージが大きく変わっていく。インターネットの危険性や監視カメラなど技術的な側面に関心が集まり、プライバシーの問題として議論されることの多い監視の問題を、その社会的意味、中でも社会的振り分けの問題に注目して考えるべきと主張する。  目的に応じて人々を「等級化」するマーケティングの思想が、平等と参加を前提とした市民社会を侵食し、包摂される人と排除される人の存在を当然として監視が行われ、人々がデータ化されていくことが民主主義への脅威であり、「人々が生きるための機会と選択にかかわる問題」になっていると指摘する。  グローバル化とともに大きく変化しつつある「監視社会」の存在理由をゆさぶり、人々の対抗を生み出していくために、私たちの手で監視スタディーズに取り組むことが求められている。(ち)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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