- 保健体育のおさらい 性教育
- 早乙女智子 著
- 出版社:自由国民社 価格:1200円
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著者は多方面で活躍する産婦人科医。イラストが豊富で、性器の構造、ホルモンのはたらき、からだとこころのメカニズム、性感染症等が分かりやすく解説されている。妊娠・出産にもかなりの紙面を割き、「妊娠はおめでたとは限らない」、FGM(女性性器切除)に触れ、「会陰切開はおせっかい」「女性と妊娠と貧困の連鎖」等、問題提起をしている。
ピルについて、「今は、低用量化され、安全になりました。…妊娠回数が少ない現代女性には、ピルの使用は無駄な心配も、無駄な排卵も、無駄な妊娠も起こらない女性の味方です」との主張は、議論の分かれるところではないだろうか? ポルノやDV、中絶と刑法堕胎罪の問題もきちんと押さえており、著者のようにジェンダーの視点を持った産婦人科医が増えてほしいと切に願う。
コラムも楽しく読める。「女性にとっては前戯が本番」「内診室のカーテンの謎」「緩いと思うならそっちが大きくなればいい」など。(万)
占領期の日本 ある米軍憲兵隊員の証言
テレーズ・スヴォボダ 著 奥田暁子 訳
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- 占領期の日本 ある米軍憲兵隊員の証言
- テレーズ・スヴォボダ 著 奥田暁子 訳
- 出版社:ひろしま女性学研究所 価格:2000円
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著者の叔父ドン・スヴォボダは、若いころ占領期の日本で、米陸軍の憲兵として第8軍営倉(刑務所)の看守をしていた。彼は自分の経験を知ってほしいと、証言をテープに録音して著者に送っていた。しかし彼はアブグレイブ“強制収容所”の捕虜虐待事件が報道されたころからうつ病になり、突然自殺してしまう。それはなぜなのか。
憲兵をしていた時の何らかのつらい体験が、彼にPTSDを引き起こしたのではないかと考えた著者は、叔父の謎を明らかにするために、資料収集と聞き取りの旅に出る。そして当時第8軍営倉に収容されていた主に黒人兵たちが、営倉設置の絞首台で処刑されていたことを知る。だがそれを裏付ける文書資料は見つからず、彼女は軍による意図的な資料廃棄による隠遁を確信する。戦争の正義とは何か?
占領も戦争の継続であり、占領者たちにも深刻な影響を及ぼすことを示す好著。Graywolf Press社ノンフィクション賞受賞(2008)作品。(牧)
- 沖縄 アリは象に挑む
- 由井晶子 著
- 出版社:七つ森書館 価格:1800円
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「国はいったん手をつけたものを手放さない。過酷な闘いはまだ続くだろう」。辺野古の「命を守る会」代表だった故・金城祐治さんは、辺野古の阻止行動を「象に歯向かうアリ」にたとえた。
本著は、『労働情報』誌上の14年半の連載から60本近くを抽出・加筆したもの。著者の由井さんは、元沖縄タイムス論説委員のジャーナリストで、沖縄の女たちの運動にも深い関わりを持つ。
この本は、米軍基地に抵抗する大田昌秀知事の3選を、政府がなりふりかまわず阻止するところから始まる。各ページの写真や解説、巻頭・巻末の年表・地図も含め沖縄基地の攻防の詳細が語られた内容は資料的価値も高い。
1998年12月~2011年5月まで時系列で語られる“物語”の最終章は、「抑止力は方便だった」という鳩山発言を皮肉った「『抑止』は『ユクシ(ウソ)』」。東日本大震災時の米国の抜け目ない行動にも触れ、基地と原発、沖縄と福島は「同じ構造」と語る。(JO)