- 現代フェミニズムと労働論
- 竹中恵美子 著
- 出版社:明石書店 価格:6000円
|
|
M字型雇用の問題など、日本の女性の労働問題の多くは、この人の著書から学んだ気がする。本書には70年代リブ運動以降のフェミニズム論が再録されており、今も議論すべき論点をいくつも提起している。
家父長制と資本主義の関係、アメリカと日本のフェミニズムの違いなどだ。「同一労働同一賃金」でなく、「同一価値労働に同一賃金を」、ワークライフバランスは仕事と家庭の「調和」ではなく、「両立」と訳すべき、など実態を踏まえた議論が多い。
そして21世紀の少子・高齢社会には、社会保障費用の増加と労働力の不足に対応して女性の労働権の確立を…。課題として、労働時間のフェミニスト改革、男性稼ぎ手モデルから個人単位モデルへ、などをあげているが、これらに意識的に取り組むために今の日本の運動に足りないものは何だろう。
日本には数少ないフェミニズム理論家の先輩の書。仲間同士で学習会をするのに最適。(矢)
新装版 原発を止めた町 三重・芦浜原発三十七年の闘い
北村博司 編
|
- 新装版 原発を止めた町 三重・芦浜原発三十七年の闘い
- 北村博司 編
- 出版社:現代書館 価格:2000円
|
|
日本にある54基の原子力発電所の陰には、建設を断念させた原発計画がある。1962年から37年の闘いとなった三重県芦浜の原発計画もその一つである。
中部電力の開発計画に端を発し、2000年2月22日、北川正恭・三重県知事(当時)の芦浜計画白紙撤回表明に至る歴史を、地域紙「紀州ジャーナル」を発行し続けて見てきた筆者によるレポート。
1986年ハマチ養殖が薬剤によって汚染されているというキャンペーンが張られ、この地域の養殖が大打撃を受けた事件は推進派の策略だったこと、女性の会をつくり反対運動をリードしていた女性たちのこと、県、町、7漁協の動き、81万人署名、JC
O事故…。地方自治をほんろうした原発建設計画の実態が浮かびあがる。
最先端の技術を駆使した“未来のエネルギー”と言われた原子力が、古い意思決定のシステムを利用してつくられてきた。貴重な戦後史をありのままに見せる、好著。(衣)
放送ウーマンのいま 厳しくて面白いこの世界
日本女性放送者懇談会 編
|
- 放送ウーマンのいま 厳しくて面白いこの世界
- 日本女性放送者懇談会 編
- 出版社:ドメス出版 価格:2500円
|
|
女性放送者と聞いて、どんな職業を連想するだろう。編者は、1968年に放送関連に携わる女性たちがスタートさせた団体。70年の安保改定直前ゆえ、「CIAからカネが出ている」という妨害もあったという。
本書は組織や経験や業種を超えて、民放、NHK、広告代理店、プロダクション、フリーランスで働く女性たちの対談を中心に組んでいる。ラジオは想像力をかき立て会話のセンスが上がる、メインキャスターの仕事の醍醐味、産休育休を取得した闘い、辺野古の取材で基地建設に反対する人々と共に闘う沖縄の三上智恵さんの話など、興味深い。また長くドキュメンタリー制作に関わった2人からの、男女混合チームのメリットやセクハラの様子は関心を呼ぶだろう。
そのほかCMづくりやフードコーディネーターなど業界内の様々な人と仕事も紹介する。谷岡理香さんによるジェンダー視点のまとめは、華やかそうな外見の、内側の実態を知る一助にもなる。(さ)