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ふぇみんの書評

性暴力

読売新聞大阪本社社会部 著

  • 性暴力
  • 読売新聞大阪本社社会部 著
  • 出版社:中央公論新社 価格:1500円
 2010年に読売新聞大阪本社版で37回にわたり連載され、反響を呼んだシリーズが、加筆・修正後1冊にまとまった。  被害にあった人々の切実な言葉を追った1章。深く傷つき、時に記憶がよみがえって、体も、思考も固まってしまう。そんな中、「過去は消せない。それでも、生き延びた自分に誇りを持ちたい」という声がぐっと胸に迫る。  2章では加害者の心理や、問題視されたゲーム「レイプレイ」等について、3章では家族との葛藤を書いている。4章は北米や韓国など事例報告。そして5章で裁判員裁判の下の性犯罪事件に及ぶ。裁判員を務めた経験者の話が読み手に訴える。  2007年ごろから、被害当事者が実名で経験を公表し始め、わずかずつ性暴力の過酷な被害が知られるようになってきた。連載されていたのはそんな時だった。人々が震災の被害に打ちのめされ、また性暴力が増えるかもしれない今、読んでほしい。巻末に資料欄あり。(さ)

「オバサン」はなぜ嫌われるか

田中ひかる 著

  • 「オバサン」はなぜ嫌われるか
  • 田中ひかる 著
  • 出版社:集英社 価格:700円
 本書にも言及される「石原ババァ発言」があったのは、私が30歳になろうというころ。当時、年を取るのがとてつもなく怖かったのを、この本を読んで思い出した。  本来親しみをこめた呼び名であるはずの「おばさん」と、現在、図々しさや恥知らずというイメージで差別的に使われる「オバサン」という言葉の違いは何なのか。本書では、芸能人の年齢詐称、就職活動での差別など、あらゆる場面での年齢における男女の二重基準を取り上げる。そして、女性の生きづらさを、「生殖のリミット」と重ねて考えていく。  著者はまた「女性らしさ」を放棄したとされる「オバサン」は、孤立死しない、社会性に富み、今後の日本を変える可能性も持つとも示唆する。うーん、明るい、重要な点ではある。  しかし「オバサン礼賛」が、低賃金パート、介護や看取り等、社会の重労働・感情労働を女性に押し付ける方便になるのはもうゴメンだぞ。ここはぜひ引き続きの考察に期待したい。(梅)

労働鎖国ニッポンの崩壊 人口減少社会の担い手はだれか

安里和晃 編著

  • 労働鎖国ニッポンの崩壊 人口減少社会の担い手はだれか
  • 安里和晃 編著
  • 出版社:ダイヤモンド社 価格:1900円
 本書は、外国人労働者の送り出し国、受け入れ国双方の具体的な事例を通して、今後アジア諸国の経済成長と少子高齢化の進展が、ケアなどの労働力不足とその争奪戦を引き起こし、社会の再生産そのものが問われる事態になるというシナリオを描いている。日本が経済成長を維持していくためには、多様な人材の一部として外国人労働者を受け入れ、その社会統合を含む新しい社会ビジョンとして「多文化共生」を位置づけ、日本と送り出し国双方の社会再生産を維持していく政策のパッケージ化を提案する。  労働力としての観点からだけではなく、ともに社会を再生産していく一員として外国人労働者を考え、従来の日本社会を根本的に変える国家ビジョンの必要性を訴える視点は、これまでの「開国」か「鎖国」かという議論に新たな視座を提供している。  しかし、経済成長路線そのものを前提にするなど、問われるべき点も多く、議論への問題提起として読まれるべきだろう。(ち)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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