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ふぇみんの書評

完 子どもへのまなざし

佐々木正美 著

  • 完 子どもへのまなざし
  • 佐々木正美 著
  • 出版社:福音館書店 価格:1,800円
 『子どもへのまなざし』、『続』に続く完結編。児童精神科医として40年以上臨床の場に身を置き、30年以上前から発達障害の問題に取り組んできた著者が、思いのたけを込めた一冊だ。  前半はエリック・エリクソンの「ライフサイクル・モデル」を基盤に、人間が乳児期から老年期まで成熟していく過程と、それぞれの時期の課題や向き合い方を丁寧に解き明かす。「人間関係が失われてきた社会」「自己中心的でない個人主義とは」「子どもが望む形で愛する」など、子育てに直接かかわらない人にも示唆深い。  そして、圧巻は後半の「発達障害」をめぐる話。高機能自閉症、アスペルガー症候群なども「自閉症スペクトラム」として同じ特徴を持つそうだが、突出した記憶力、視覚理解の強さなどの特質は、見方を変えればまさに「天才」。その特質を持ったまま社会の中で共生していくためのTEACCH(ティーチ)プログラムも、ぜひ多くの人に知ってほしい。(JO)

新しい公共と自治の現場

寄本勝美、小原隆治 著

  • 新しい公共と自治の現場
  • 寄本勝美、小原隆治 著
  • 出版社:コモンズ 価格:3,200円
 今回の震災は水や空気、海、大地を汚染する結果になった。今こそ、安全に生きるための公共を創らなければならない。新しい公共を創るために、当たり前だと思われている価値観、思考習慣から問い直さなければならないと、本書は呼びかけているようだ。安心で安全な暮らしを創る取り組みは、NPOや市民運動が実践してきた。その活動を、ジャーナリストや研究者が丁寧に取り上げる。  ただ、まちづくりを専門家の知識やお金持ちに語らせる新しい公共だと、すっかり足下をすくわれる。思うに、公共は一人ひとりの中にある。共にそこにいることが安心なのか安全なのか、まず自分に聞いてみることが大切だ。この道路はほんとうに安全か。この公園はほんとうに公共空間か。そもそも公共とは誰に開かれているのか。安全で安心できる場を創る担い手として子ども、女性、障がい者、貧乏人は担う力を奪われていないか。  そういった問いを筆者たちにも投げかけたいと思った。(み)

労働再審③ 女性と労働

藤原千沙、山田和代 著

  • 労働再審③ 女性と労働
  • 藤原千沙、山田和代 著
  • 出版社:大月書店 価格:2600円
 「女性」と「労働」の問題はいまや、女性の(そして子どもの)貧困の問題とかかわる。  1章「誰が正社員から排除され、誰が残ったのか」では、日本経済のグローバル化の進展に伴い、パートの中高年女性に加え、未婚女子や若年男女が非正規化し、特に中卒・高卒の比率が高い職で非正規化が起こったと伝える。しかも男女のギャップはむしろ拡大の方向にあることが明らかになる。  次章では事務職の典型、銀行の窓口業務まで非正規雇用となっている事態、続いて派遣労働者はパートと一般職の中間領域とされながら、「雇用の不安定」と「自由」との両義性を持ち、家族のセーフティーネットがない場合には不安定な面が顕在化すると述べる。他に農業で働く女性や、労働組合との貧困な関係が論じられる。  こうした冷静な分析を現実を変えるための共通の財産とし、序章で触れるように分断・階層化された労働の現場から、「つながり」へと踏み出したい。(衣)

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 6カ月4,500円、1年9,000円
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