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ふぇみんの書評

同一価値労働同一賃金原則の実施システム

森ます美、浅倉むつ子 著

  • 同一価値労働同一賃金原則の実施システム
  • 森ます美、浅倉むつ子 著
  • 出版社:有斐閣 価格:4,800円
 日本では男女の賃金格差がなぜこれほどまでに大きいのか。どうすれば是正できるのか? 本書は同一価値労働同一賃金原則を適用し賃金格差を是正するために職務評価制度を使う。
突飛なたとえだが、プロセスはよくできたミステリーのようだ。地道な事実の積み重ねが真実を明らかにしていくように、本書は大規模で着実な調査から職務評価を行う。看護師、施設介護士、診療放射線技師、ホームヘルパー、続いてスーパーなどの販売職で実施する。日本で女性の非正規雇用が多い職場を含む。職務評価を用いるとホームヘルパーの時給は現状の賃金の1.4倍程度になり、スーパーのパートにおいても時給換算ではもっと高くなる。
続いて諸外国の制度を参考にしてパート、有期雇用、派遣労働における平等の処遇を模索する。
最後に職務評価システムと職務評価の実施プロセスについての提案が行われる。これは、静かな変革の一里塚なのである。(衣)

植民地期朝鮮の歴史教育「朝鮮事歴」の教授をめぐって

國分麻里 著

  • 植民地期朝鮮の歴史教育 「朝鮮事歴」の教授をめぐって
  • 國分麻里 著
  • 出版社:新幹社 価格:3,500円
 1919年、日本の植民地にされていた朝鮮で、大がかりな独立運動「三・一運動」が起こった。これを機に、朝鮮総督府はそれまでの武断統治を文化統治に改めることにした。
最重要課題とされたのが、朝鮮人を日本人化させる教育だった。そこで使われることになった総督府編纂の教材のひとつが『朝鮮事歴』(1920~41年)である。聞き慣れない用語だが、朝鮮を日本の一地域と矮小化し、郷土史として朝鮮史を教え、それを中央史としての日本史に集約させていくことで日本に韓国併合の正当性を認めさせるためのものだった。
本書は朝鮮事歴の成り立ちに始まり、教育内容、携わった人々の思想や、教師たちの反応などを丁寧に掘り起こし、まとめている。身近な郷土愛を地方、国家へと同心円的に拡大し、愛国心に成長させるもくろみは、「内地」では成功したが、朝鮮にはあてはまらなかった。それはなぜだったのか。考えながら読むのも興味深い。(室)

ルポ 若者ホームレス

飯島裕子、ビッグイシュー基金 著

  • ルポ 若者ホームレス
  • 飯島裕子、ビッグイシュー基金 著
  • 出版社:筑摩書房 価格:760円
 現代を生きる、ある「若者」像のルポ。ビッグイシューのインタビュー調査が基になっている。「ちょっとしたボタンのかけ違いで誰でもホームレスになり得る時代」は厳しい。
若者たちはホームレスと自覚できない。しかも泣きゴト言ったら終わりと思っていて、プレッシャーに弱く、「自己責任」に押し潰されそうになっている人々だ。「実家」がないことも多い。励ましてくれる家族や周囲もいないから諦めが早い。フリーターでは自立できず、転職を繰り返しても派遣ばかりでキャリアアップにならない。製造業派遣はホームレスを生み出す大きな要因だ。ますます貧窮していく。「普通に働く」ことさえ難しい時代。
打開策も示されるが、しかしなんでこうなってしまったの? こんな時代に誰がした!
事例として登場するのは男性ばかり。どこかにいる女性ホームレスの姿が見えないもどかしさを、著者も指摘する。(さ)

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