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ふぇみんの書評

家族をつくる 提供精子を使った人工授精で子どもを持った人たち

ケン・ダニエルズ 著/仙波由加里 訳

  • 家族をつくる 提供精子を使った人工授精で子どもを持った人たち
  • ケン・ダニエルズ 著/仙波由加里 訳
  • 出版社:人間と歴史社 価格:2,800円
第三者の精子を使った人工授精(AIDもしくはDI)の歴史は長い。日本では、1949年に初めてのAID による人工授精児が誕生した。しかし、日本をはじめどの国でも、当初AIDは隠すべきこととして、当事者カップルの間だけで秘密にされてきた場合が多かった。最近、ようやく「出自を知る権利」などが叫ばれるようになった。
 長年、生殖医療の分野でカウンセリングなどに携わってきた著者は「家族がオープンで隠しだてのない関係を持つことが重要」と説く。本書に記されたAIDを受けた人たちの不安や葛藤など様々な思いからも、生まれた子どもに正直に話すことの必要性が感じられ、著者の意見には納得する。
 だが、この医療の是非や、認めるならどんな社会的支援が必要かについてはきちんとした議論が必要と思う。第三者がかかわる生殖医療を考える時、AIDを受けた人や、その技術によって生まれた人たちの声が集められた本書は、貴重な資料となるはずだ。(り)

認知症ケアは地域革命! 「地域福祉館 藤井さん家」の取り組み

牧坂秀敏 著

  • 認知症ケアは地域革命! 「地域福祉館 藤井さん家」の取り組み
  • 牧坂秀敏 著
  • 出版社:現代書館 価格:1900円
「介護の社会化」をうたい始まった介護保険。しかし「介護殺人」の半数は介護保険を利用するも防げず、要介護者は家に引きこもり、家族は施設探しに躍起になるのが現状だ。本書は福岡県大牟田市の民家で、認知症対応型デイサービスを軸に地域の「寄り合い所」として発展した「藤井さん家」の記録。
 「藤井さん家」では、認知症の高齢者の当事者主義を貫く。施設に集めて「協調性」を求めるのではなく、一人ひとりの人生の軌跡を学び、本人が「何がしたいのか」に徹底的に寄り添う。もう一つの特徴は地域に開かれていること。楽しい企画や通信の発行を通し、子どもや近所の人が気楽に立ち寄る場となり、「地域の介護力」と多くの笑顔を育んだ。
 残念ながら「藤井さん家」は採算が合わず2年弱で介護事業から撤退。このことが現在の介護の制度の矛盾を表していないか。同時に介護は、「まちづくり」に通じ、それはどこの地域でも共通の課題であることを教えてくれる。(登)

大塚女子アパートメント物語 オールドミスの館にようこそ

川口明子 著

  • 大塚女子アパートメント物語 オールドミスの館にようこそ
  • 川口明子 著
  • 出版社:教育史料出版会 価格:1,700円
1930年に「独身職業婦人」のために建てられた大塚女子アパートメントハウス。この頃すでに社会的に認知されていた「モダンガール」とともに、アパートの住人らは世間の好奇の対象となった。しかし著者によれば、住人らは「オールドミス」のイメージを隠れ蓑として「個」として生きた女性たちだった。のちに谷崎潤一郎の妻となった古川丁未子、バイオリニストの小野アンナ、小説家の戸川昌子、2002年に伊豆に「友だち村」をつくった駒尺喜美など、このアパートで暮らした女性たちのハーストーリーが、まるでそばで見てきたかのようにイキイキと描写されている。
 残念ながらこのアパートは2003年に取り壊されてしまった。仕事を持つ女性たちに良質の住まいを提供したいと建てられた住宅だったが、この精神は日本全国どこをみても引き継がれていない。女性がどのような人生を選択しても、安心して安く住める家を手に入れるにはまだ時間がかかりそうだ。(竹)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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