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ふぇみんの書評

大日本帝国の「少年」と「男性性」少年少女雑誌に見る「ウィークネス・フォビア」

内田雅克 著

  • 大日本帝国の「少年」と「男性性」 少年少女雑誌に見る「ウィークネス・フォビア」
  • 内田雅克 著
  • 出版社:明石書店 価格:4,200円
 本書は近代日本社会における男性性を「ウィークネス・フォビア(「弱」に対する嫌悪と、「弱」と判定されてはならないという強迫観念)」をキーワードに分析するものである。具体的には、少年少女雑誌における少年表象から「ウィークネス・フォビア」の形成/変容/再編、ならびに陸軍幼年学校・満蒙開拓青少年義勇軍・海軍特別年少兵の日記等から「ウィークネス・フォビア」が少年たちにどのように経験されていたのかが明らかにされている。
 本書の特徴は、何が「弱さ」(ウィークネス)とされるかは社会的に構築されるという立場に立っている点である。この視点が徹底されることにより、当時の理想の少年像を、少女像や非日本人像との比較の中で理解することに成功している。帝国主義的状況のもと、理想の少年像が軍事主義/ナショナリズムと絡み合いながら構築された事実を描き出す良書である。(ぐ)



自由への問い7 家族 新しい「親密圏」を求めて

岡野八代 編

  • 自由への問い7 家族 新しい「親密圏」を求めて
  • 岡野八代 編
  • 出版社:岩波書店 価格:2,000円
女性にとって「家族」とは自由を抑圧するものであり、暴力にさらされる場でもある。フェミニストたちは批判の対象として「家族」を論じてきた。しかし社会的に強固な差別構造、抑圧がある中では安全地帯としての機能もあった。そのような両義性をとらえ、自由を問うための論考集。
 家族法が専門の二宮周平は、当事者の合意に基づくパートナー関係や家族形成の自由を実現するための課題を検討し、インドの農村部における女性たちの聞き取りを行った三輪敦子は、女性たちが「権利意識」を獲得することにより自分自身や家族・親族との関係性を変革し、思いを共有できる女性同士の場(「重層的な親密圏」)を構築することの可能性について考える。大橋稔は、トニ・モリスンの『ビラヴド』を題材に黒人女性は語り継ぐ行為によって存在を記憶させ、それを共有することにより親密圏を機能させてきたとする。
 多様なアプローチに触れることができる一冊。(竹)



神国日本のトンデモ決戦生活広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか

早川タダノリ 著

  • 神国日本のトンデモ決戦生活 広告チラシや雑誌は戦争にどれだけ奉仕したか
  • 早川タダノリ 著
  • 出版社:合同出版 価格:1,800円
1974年生まれの著者が、第二次世界大戦下の戦意高揚プロパガンダ用の雑誌やチラシ、パンフレットなどに「ツッコミ」を入れながらまとめたのが本書。著者が収集を始めたきっかけは、2000年の森喜朗首相(当時)の「神の国」発言。その後「戦中」を体験していない世代からも「日本人の誇りを取り戻せ」という言葉を聞き、当時の人々の意識が知りたくなったという。
 靖国の精神、国家総動員体制、侵略イデオロギーなどが生活の細部に入り込んでいることに驚く。子どもの夏休みの宿題帳、出産・育児、冠婚葬祭のあいさつや、古着再生の衣類(「決戦型ブラウス」)まで。これら「トンデモ」な思想が記された「紙くず」たちが、「聖戦」論を気持ちよく突き崩してくれる。同時に当時の内閣が報道機関を世論操作に利用したとはいえ、我れ先にプロパガンダを喧伝するメディアにうすら寒い思いがした。(登)



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