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ふぇみんの書評

富士見産婦人科病院事件私たちの30年のたたかい

富士見産婦人科病院被害者同盟・原告団 編著

  • 富士見産婦人科病院事件 私たちの30年のたたかい
  • 富士見産婦人科病院被害者同盟・原告団 編著
  • 出版社:一葉社 価格:5,000円
 1980年に発覚した「富士見産婦人科病院事件」。営利のために、病院ぐるみで健康な女性の子宮や卵巣を摘出していたという事件が社会に与えた衝撃は大きかった。あれから30年、被害者たちによって事件の記録がまとめられた。  2004年に民事裁判の原告(被害者)勝訴判決が最高裁で確定し、05年に北野院長の医師免許取消と関与した医師らに行政処分が決定される(院長は「医師免許取消処分」の取り消しを求めて提訴。09年、最高裁で敗訴確定)までの全容が詳細に書かれている。
 事件の記録だけでなく、被害者たちの活動記録や支援者たちの声も収められ、裁判の判決文や年表などの膨大な資料を合わせ、744頁からなる厚い、熱い本だ。
 被害者たちの勇気ある闘いは、背景にある女性差別を明らかにし、リプロダクティブヘルス・ライツを求める動きに呼応し、医療やからだを考えるグループの創設にも影響を与えた。闘いの記録を綴った本書は、貴重な財産だ。(り)



恥と名誉移民二世・ジェンダー・カーストの葛藤を生き延びて

ジャスビンダル・サンゲーラー 著/阿久澤麻理子 訳

  • 恥と名誉 移民二世・ジェンダー・カーストの葛藤を生き延びて
  • ジャスビンダル・サンゲーラー 著/阿久澤麻理子 訳
  • 出版社:解放出版社  価格:2,200円
英国のインド人コミュニティーで生きるインド系移民2世の著者が、女性の支援団体「カルマ・ニルヴァーナ」設立までの半生を綴り、インド文化の女性差別や「強制結婚」問題を明るみにする書。
 15歳で「アウトカースト」の男性と駆け落ちし「強制結婚」から逃れた著者は、家族から徹底的に疎外される。一方、親の言う通り結婚した姉妹たちは夫からDVを受け、姉の1人は自死。著者自身も2人目の夫からDVを受けた。
 強制結婚やDVから逃れたインド・パキスタン系移民女性は、英国内で民間支援を受けても言葉や文化の違いによる孤独、住宅問題などに直面する。著者は自らの体験から、慣れ親しんだ文化的環境の中での支援の大切さなども訴える。  家出以来、高校を中退した彼女だが、その後、自らの力で復学し44歳で名誉博士号を取得した。自伝としての本書は読みやすく書かれながらも核心に鋭く迫り、彼女自身の生き方に励まされる。今後の活躍にも注目したい。(梅)



関係の原像を描く「障害」元学生との対話を重ねて

篠原睦治 編著

  • 関係の原像を描く 「障害」元学生との対話を重ねて
  • 篠原睦治 編著
  • 出版社:現代書館 価格:2,000円
昨年70歳で和光大学を定年退職した著者のひとつの集大成とも言える対話集。対話の相手は、36年間の在職中に出会った「障害」を持つ17人の元学生たちだ。
 創立当初から「開かれた大学」を目指してきた和光大学だが、「彼らにこじあけられる形で開いてきた」と著者は語る。
 1976年春に初の「車いす」入学を果たした学生らは、大学側が提案したスロープを「歩けない」学生と「歩ける」学生を分断するものとして拒否した。「聞こえない人」からの「手話授業」の要求に対し「見えない人」「手が使えない人」が反論する。
 「障害」の問題を一貫して「関係」の問題として捉えてきた著者と元学生たちは、バリアフリー化やメールという新しいコミュニケーションツールが、便利さと引き換えに生身の人間同士の関係を奪ってはいないかと問題提起する。  現代社会に生きる一人ひとりが考えねばならない問題を、鋭く提起している一冊。(JO)



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