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ふぇみんの書評

伊勢﨑賢治の平和構築ゼミ

伊勢崎賢治+『マガジン9条』 著

  • 伊勢﨑賢治の平和構築ゼミ
  • 伊勢崎賢治+『マガジン9条』 著
  • 出版社:大月書店 価格:1,600円
 東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンで武装解除を指揮した「紛争解決請負人」の伊勢﨑さんが、自ら教鞭をとる大学の「平和構築・紛争予防講座」の留学生たちと徹底対論。留学生たちはスーダン、ボスニア、ビルマ/ミャンマー、アイルランドなど紛争当事国から来た人たち。生々しい傷を背負いながら留学生らが語る紛争の実態からは、私たちがニュースで聞く紛争とは違う複雑な構図が見え隠れする。それらを踏まえて「平和とは」「紛争解決とは」「正義とは」を論じ、留学生からみた憲法9条と日本の役割も語る。
 「平和」や「9条」を唱えるだけでは紛争は止まない。そもそも「『平和』自体が、独りよがりな言葉」と伊勢﨑さん。紛争を終結させ人命を救うためには「テロリスト」と交渉することが必要かもしれない。日本は9条の精神を生かした紛争の仲裁ができるかもしれない。「平和構築」を真の意味で考えることのできるリアルな教科書だ。(登)



ヒューマニティーズ 女性学/男性学

千田有紀 著

  • ヒューマニティーズ 女性学/男性学
  • 千田有紀 著
  • 出版社:岩波書店 価格:1,400円
 「女性学」は「女」とは何かを問い、「性」という視点で社会のありようを問い直すもの。だから「男性学」につながると著者。
 本書はまず最初に「性別」がいかに不確定なもので「身体」が歴史の中でどのように変化し、政治的であるのかを明らかにする。次に、女性学と男性学のもととなる女性解放運動がどのように生まれたのか、フランス革命を起点にして説明していく。そして1970年代のウーマンリブについて田中美津らが残した文章をもとにその意義を再評価し、女性学の誕生やエコロジカル・フェミニズム、マルクス主義フェミニズムを手短に紹介。女性学の本は初めて、という人にもおすすめしたい。
 「セックス=生物学的性差、ジェンダー=文化的・社会的性差」という表現では不十分である現在、ポスト構造主義ジェンダー論や90年代以降の議論から、女性学/男性学の未来について展望する。コンパクトながらボリュームたっぷりの一冊。(竹)



それでもぼくは生きぬいた日本軍の捕虜になったイギリス兵の物語

シャーウィン裕子 著

  • それでもぼくは生きぬいた 日本軍の捕虜になったイギリス兵の物語
  • シャーウィン裕子 著
  • 出版社:梨の木舎 価格:1,600円
イギリス在住の著者は、イギリス人が持つ日本人に対するしこりを感じてきた。それは、太平洋戦争中の日本軍収容所で6万人の英連邦兵が非人道的な扱いを受けた捕虜問題にあった。日本人はあまり知らないが、著者は多くの元捕虜を訪ねる。重い口が伝える、日本人がなした言語に絶する残虐行為の数々…戦後六十余年をもっても消し去ることはできない。
 しかし本書が光を見失わないのは、地獄の中でも人間としての尊厳を保つ捕虜たちの強靭な力だ。「秘密の大学」をつくり、隠していたペンで学ぶ心を忘れなかった元捕虜たち。銃殺刑の執行の場で堪能な日本語で必死に仲間の命を救った元少佐。戦後、苦悩の後に加害者を赦していく日本人との交流は考えさせられる。戦争はどのようであっても狂気だが、日本の捕虜の扱いが特にひどいのはなぜか? 捕虜の取り扱いを規定したジュネーブ条約との関係が興味深い。(み)





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