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ふぇみんの書評

貧困を考えよう

生田武志 著

  • 貧困を考えよう
  • 生田武志 著
  • 出版社:岩波書店 価格:780円
 冒頭は、「二人のひろし」の話。1999年秋、池袋で無差別に通行人を切りつけ8人を殺傷した造田博死刑囚と、同じ頃に家を失いながら、ベストセラー『ホームレス中学生』を書いた田村裕。何が2人の人生を分けたのか。
 「現代の貧困」は、「経済の貧困」と「関係の貧困」が重なった状態、と著者は説く。「いすとりゲーム」の敗者が階段状に野宿へと進む道筋、野宿から戻るためのサポートが皆無に近い現状を、支援者としての長年の体験と豊富な資料を駆使して、分かりやすく解き明かす。
 約3万3000人の子どもが無保険で十分な医療を受けられないという事実。青山学院幼稚園の初年度納付金は約150万円という、スタート時点からの不平等…。様々な数値が示す日本の現状に胸が締め付けられるが、「いすとりゲーム」からの脱却と、戻りの階段をつける道を著者は提示する。まずは、役所への同行、アパート入居の保証人など、自分ができる「関係の貧困」の解消からと思った。(JO)



つながりを取りもどす時代へ持続可能な社会をめざす環境思想

枝廣淳子 監訳

  • つながりを取りもどす時代へ 持続可能な社会をめざす環境思想
  • 枝廣淳子 監訳
  • 出版社:大月書店 価格:1,600円
 よみがえりを意味するエコロジーの理論誌「リサージェンス」は、1966年に英国で創刊されて以来四十数年、世界20カ国に愛読者を持つ息の長い雑誌だ。当時は人々の関心が経済成長と豊かさに向き、次々に市場に出る便利な品々に心が奪われていた時代だったが、そんな時代だからこそ、とこの雑誌を世に出した人たちは考えたようだ。本書は、掲載された文の中から「これは大事」というものをセレクトして編んだもの。ノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイやアル・ゴア、音楽家のスティングなど日本でも知られた人も書き手だ。
 「経済学が生態学を引き立て、政治学が平和を守り、民主主義が社会正義を保障する」という雑誌のビジョンに共鳴する人々が示す分析、提案はいずれも読み応えがある。「私たち人類の文明は、まだ未熟なのです」とのリサージェンス誌編集長の言葉も印象的。(束)

ハウジングプア「住まいの貧困」と向きあう

稲葉剛 著

  • ハウジングプア 「住まいの貧困」と向きあう
  • 稲葉剛 著
  • 出版社:山吹書店 価格:1,800円
ワーキングプアの増加とともに近年、賃貸住宅などの住まいを追われ、ネットカフェ生活などを経て路上へと放り出される人が増えた。背景には定期借家制度の導入や、家賃保証会社の参入による悪質な追い出し屋被害もある。
 著者は路上生活者の支援を通じて接した事例から、精神面にも大きく影響するハウジングプアの現状をとらえ、国や行政がすべき貧困解決の施策提案を書く。鍵となるのは「標準モデル」からの脱却。核家族中心でなく多様な生き方をするすべての人への住居政策が大前提で、その指標は「月収10万円で安心して暮らせる社会をつくれるか」だという。
夢のようだが、超高齢化ともはや右肩上がりでない経済状況を考えれば最も現実的な選択肢かもしれないと著者は言う。追い出し屋規制や住宅政策一元化、民間賃貸住宅の補助と家賃抑制、生活保護と住宅政策の連携など一つ一つを確立すれば道筋はつけられるのだ。住みやすさ=生きやすさだと、改めて思う1冊。(梅)


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