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ふぇみんの書評

食の安全政治が操るアメリカの食卓

マリオン・ネッスル 著/久保田裕子、広瀬珠子 訳

  • 食の安全 政治が操るアメリカの食卓
  • マリオン・ネッスル 著/久保田裕子、広瀬珠子 訳
  • 現代書館:岩波書店 価格:2,800円
 米国では年間、7600万人が食中毒症状を訴え、32万人強が入院し、5000人が死亡するという。食の安全が守られているとは思えない数字だが、それはなぜなのだろうか? 著者は分子生物学者であり栄養学者として、食の問題にかかわる業界関係者、政治家、消費者団体の人々と交わり、その主張や動きを見てきた。そして、食の安全への対応が、科学的になされるというよりは、極めて政治的な駆け引きによって動くという事実を論証したいと本書を執筆した。
 強い毒性を持つ大腸菌O157への予防措置をめぐる攻防、家畜の飼料用にのみ許可された遺伝子組み換えコーン(商品名スターリンク)のタコスへの混入事件などの経緯が、ドラマのように再現される。そこからは、人の健康よりも利益を優先させたい企業、その圧力に屈しがちな政府、企業寄りの判決を書く裁判官、怒りを募らせる消費者といった光景が浮かび上がるが、これは日本でも十分におなじみの光景だ。(束)

私たちが死刑評決しました。

フランク・スワートローほか 著/上田勢子 訳

  • 私たちが死刑評決しました。
  • フランク・スワートローほか 著/上田勢子 訳
  • 出版社:ランダムハウス講談社 価格:1,800円
 本書がフィクションなら「この裁判は、おんぼろ機関車の検察チームが、どのようにして都会的な弁護士とハンサムな被告人を打ち負かしたか、という物語なのである。」(本文より)というように、さぞ痛快な読み物だったろう。実際は、アメリカで起きた殺人事件の裁判で、妻と胎児を殺したとされる被告人スコットを、12人の陪審員が死刑評決をするまでのドキュメンタリー。その現実の重さに暗澹たる気持ちになった。
 「裁判後、人を信じられなくなった」。裁判中も裁判後もPTSDになるほど心を痛める陪審員たちの苦悩が伝わってくる。
 死刑評決が妥当だったのかは分からないが、厳罰を望む群衆を前に「死刑評決でなかったら、どんな反応だっただろう」という陪審員の言葉が印象に残る。無罪の可能性を探る陪審員たちが解(辞)任されていった事実も恐ろしい。
 守秘義務が厳しく、制度の検証もままならない日本にとって、この本は貴重な資料だ。(り)

シベリアに逝きし46300名を刻むソ連抑留死亡者名簿をつくる

村山常雄 著

  • シベリアに逝きし46300名を刻む ソ連抑留死亡者名簿をつくる
  • 村山常雄 著
  • 出版社:七つ森書館 価格:2,000円
 まさに「コペルニクス的転回」。長年農学博士として有機農業の社会経済的研究を行ってきた著者が紹介するのは、アメリカ・ミシガン大学のバッジリー助教授らが発表した研究論文。そこでは、これまで「単収(単位面積あたり収量)において慣行農業(農薬や化学肥料に依拠する農業)に劣るから人口扶養力は慣行農業より小さい」と批判されてきた有機農業が、実は世界全体では慣行農業より単収が32.1%多いと結論づけられている。本書は著者が大きな感動をもって、自身のフィリピンの有機農業の調査とともに研究論文の信頼性を分かりやすくかつ詳細に検証している。
 これまで有機農業を推進してこなかった農林水産省が「農薬の安全性は確認済み」との見解とともに主張してきたのが「生産性の低さ」。それが覆る。著者のフィリピンの調査では肥料や農薬などを購入しないので農民の手取りも増えた。有機農業が広がれば消費者が感じる「割高感」も解消されるかも。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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