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ふぇみんの書評

ドイツ・右翼の系譜21世紀、新たな民族主義の足音

平野洋 著

  • ドイツ・右翼の系譜 21世紀、新たな民族主義の足音
  • 平野洋 著
  • 現代書館:生活書院 価格:2,000円
 先月の選挙で中道右派政権が誕生したドイツの暗部をえぐるルポ。ドイツ保守・右翼の系譜は、CDU(キリスト教民主同盟)や全国紙メディアなど上からの保守と、BdV(強制移住者同盟)やNPD(国家民主党)など下からの右派という双方向からたどれるが、その支流は敗戦によって旧ソ連・東欧から追放されたドイツ人植民者の集合記憶である。この記憶は、主体的な戦後補償の積み重ねへのバックラッシュと相まって、「被害者としてのドイツ」という表象を社会全体に刻み込もうとする。
 ドイツの極右が理想とする国家は日本である。歴史修正主義やレイシズムが刑事罰の対象となるドイツとは異なり、日本では『マンガ嫌韓流』や「在特会」に象徴される露骨な排外主義が伸張し、それらを批判するリベラル・左派が内なる排外主義を問わずに済む構図がつくられているように思う。日本人自身の系譜と現在位置を問い直し、戦後責任と向き合うために読みたい一冊。(な)

若者と貧困いま、ここからの希望を

湯浅誠、上間陽子、冨樫匡孝、仁平典宏 編著

  • 若者と貧困 いま、ここからの希望を
  • 湯浅誠、上間陽子、冨樫匡孝、仁平典宏 編著
  • 出版社:明石書店 価格:2,200円
 若者の貧困が深刻化している。日雇い派遣をしながらネットカフェで暮らす若者、生きづらさからリストカットをする若者、奨学金の返済を滞納しブラックリストに載る若者。1日家賃が滞りゼロゼロ物件から追い出される若者。
 本書は、絶望を抱えながら生きてきた若者がライフストーリーを語る。6人家族・2間のアパート暮らしで2年間の引きこもりの後、音楽に希望を託してDJを始めた若者。不登校、リスカからアパレル店員で生きる場を得た女性。
 見えてくるのは、家族頼みの福祉しかない日本社会で、ひとり親や多子など貧困に陥りやすい家族に育った若者、あるいは、家族と様々なあつれきを抱える若者の困難である。
 実態はすさまじい。奨学金を出す日本学生支援機構への問い合わせは1時間1万件あるのだという。
 家族福祉について、ジェンダー視点の分析は欠かせない。仁平や大澤真平はその視点を前提に分析しており、好感が持てる。(衣)

有機農業で世界が養える

足立恭一郎 著

  • 有機農業で世界が養える
  • 足立恭一郎 著
  • 出版社:コモンズ 価格:1,200円
 まさに「コペルニクス的転回」。長年農学博士として有機農業の社会経済的研究を行ってきた著者が紹介するのは、アメリカ・ミシガン大学のバッジリー助教授らが発表した研究論文。そこでは、これまで「単収(単位面積あたり収量)において慣行農業(農薬や化学肥料に依拠する農業)に劣るから人口扶養力は慣行農業より小さい」と批判されてきた有機農業が、実は世界全体では慣行農業より単収が32.1%多いと結論づけられている。本書は著者が大きな感動をもって、自身のフィリピンの有機農業の調査とともに研究論文の信頼性を分かりやすくかつ詳細に検証している。
 これまで有機農業を推進してこなかった農林水産省が「農薬の安全性は確認済み」との見解とともに主張してきたのが「生産性の低さ」。それが覆る。著者のフィリピンの調査では肥料や農薬などを購入しないので農民の手取りも増えた。有機農業が広がれば消費者が感じる「割高感」も解消されるかも。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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