「ホームレス」襲撃事件と子どもたちいじめの連鎖を断つために
北村年子 著
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- 「ホームレス」襲撃事件と子どもたち
- 北村年子 著
- 出版社:太郎次郎社エディタス 価格:2,200円
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なぜ子どもたちは「ホームレス」を襲撃するのか。「いじめ」の連鎖を止める鍵はどこにあるのか。
前著から14年。前著に加えその後の事件や川崎の取り組みなどを丁寧に追い、真の和解への道を探る渾身の一冊。
「おじさんは、かっこいい。おじさんたちは必死に生きてる。すごい、強い人だと思う」。16歳の不登校の少年は、こう語った。「ホーム=居場所」のない者どうしの柔らかい心が触れ合った時、何かが動き出す。
襲撃する者とされる者のいずれか一方に立つのではなく、「人間」への深い信頼をベースに、両者ととことんかかわっていく著者。最終章には、12歳で父を自死で失い、被害者であると同時に加害者でもあると感じた自身の体験も綴られている。 著者たちは、08年秋に「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」を立ち上げた。未来への希望の光が見えてくる。(JO)
フリーター労組の生存ハンドブックつながる、変える、世界をつくる
清水直子、園良太 編著
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- フリーター労組の生存ハンドブック
- 清水直子、園良太 編著
- 出版社:大月書店 価格:1,450円
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昨今、労働組合に求められる役割が変化している。不安定雇用に追いやられる労働者が増えているにもかかわらず、組合での「闘争」自体が避けられている向きもある。労働闘争一辺倒ではなく、つながりや居場所づくりに励む労組も増えている。
東京にある、誰でも一人でも入れる組合、フリーター労組は従来の組合イメージを覆す。フリーターメーデーの開催や住宅確保の取り組みなど、組合の枠にとどまらない活動を広げているからだ。本書は労組メンバーを中心とした書き手により、働く場面で困ったときのQ&Aや生活保護の申請方法、仲間とつながるためのアイデアとしてのサウンドデモや情報発信、運動の場でのジェンダー問題や地方都市での課題まで盛り込まれている。
この組合の魅力は自由と生存をキーワードに「ただ生きる」ことを肯定する姿勢。プレカリアート運動の今後にも要注目だ。(竹)
メディアリテラシーとジェンダー構成された情報とつくられる性のイメージ
諸橋泰樹 著
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- メディアリテラシーとジェンダー
- 諸橋泰樹 著
- 出版社:現代書館 価格:2,200円
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私たちはメディアが構成されたものである、という視点を持つことは少ない。著者はメディアを批判的に読み解く必要性を強調し、ジェンダー視点で雑誌、ゲーム、テレビ番組を分析する。
細木数子の番組「ズバリ言うわよ!」における性教育バッシングを分析し、どのように「過激な性教育」イメージが構成され、細木のご託宣が演出されたのかを追う。
「女性国際戦犯法廷」を取材した番組の改ざんを訴えたNHK裁判でNHK側の責任を認めた高裁判決(07年1月29日)を報じた読売、朝日、毎日3紙の分析は圧巻。3紙のスタンスは違うが、「政治家の介入を証明できなかった」とする判決を「政治家の介入はなかった」とすりかえた点は共通である。安倍政権下で「過剰に忖度(そんたく)」した結果だと結論する。
本書を取り上げた朝日新聞の書評(9月6日付)でもこの部分には一切言及がないのもリアル。(衣)