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ふぇみんの書評

労働と貧困拡大するワーキングプア

日本弁護士連合会 編

  • 労働と貧困 拡大するワーキングプア
  • 日本弁護士連合会 編
  • 出版社:あけび書房 価格:2,400円
 貧困問題が次の選挙でどこまで焦点化するか、喫緊の課題となってきた。これまでの反貧困運動での弁護士たちの活動は、生活相談など評価すべきものがある。
 そうした活動を下敷きに行われた昨年の日弁連の人権擁護大会で、労働と貧困をテーマにした分科会の内容をまとめたのが本書。
 提言では登録型派遣の全面禁止をうたうなど(専門業務を例外とする措置は事務派遣を温存するのだ)、ラディカル。各国調査報告も参考になる。また特別寄稿として派遣労働研究の第一人者・脇田滋さんが「被扶養者を根拠とした低賃金雇用」の見出しで主婦パートと女性の派遣が男性に広がり、ワーキングプアが拡大した状況に触れている。男性が多い労働組合が無視してきた視点を展開している点に、感慨を覚えた。財政学の神野直彦さんも社会保険による水平分配の可能性を説いている。
 労働と貧困問題のこれからを展望する時に資料的価値の大きい一冊である。(衣)

追跡!私の「ごみ」捨てられたモノはどこへ行くのか?

エリザベス・ロイト 著/酒井泰介 訳

  • 追跡!私の「ごみ」 捨てられたモノはどこへ行くのか?
  • エリザベス・ロイト 著/酒井泰介 訳
  • 出版社:大月書店 価格:1,450円
 自分の捨てたごみはどこに行くのか―その疑問を出発点に、ごみの「行方」を追跡する一冊。行間から腐敗臭がしそうなニューヨークのごみ事情に比して、市議会が「2020年までのごみゼロ達成」をぶち上げたサンフランシスコの実践は興味深い。同市では「廃棄物」「リサイクルごみ」「コンポスト用有機物」の 3分別回収で、従量料金制の廃棄物以外は無料だという。
 取材を通じ著者は「ごみの公共回収は、製造業者がものを作るうえで生み出したごみの社会的環境的コストを広く社会に押し付ける方法」との確信を持つ。納税者が製品のごみとしての処理費用を負担している限り、メーカーは「壊れやすく、すぐに時代遅れになり、修理もリサイクルもできず、毒物を含」む商品の生産をやめない。
 本書の魅力は、くず鉄再生現場などの体当たりレポートにあるのではない。そこで得た知識や疑問を自身の生活に投げ戻し、何がベストなのかを考え、暮らし方を変えていく追求にある。(か)

ニルスの国の高齢者ケアエーデル改革から15年後のスウェーデン

藤原瑠美 著

  • ニルスの国の高齢者ケア エーデル改革から15年後のスウェーデン
  • 藤原瑠美 著
  • 出版社:ドメス出版 価格:2,500円
 1990年から働きながら認知症の母の在宅介護を続けた著者が介護の困難を抱える中で、スウェーデンのケアの現場を見たいという思いがつのり、介護が終わった後、スウェーデンの南端にある県の中の小自治体に飛ぶ。本書は、著者が体当たりで、スウェーデンのケアの現場をつぶさにみた記録。
 エーデル改革とは、国でなく市が医療の一部と福祉を担うことや高齢者の社会的入院の改善や介護の質の向上などがうたわれた改革。高齢者が必要なのは医療でなく「ケア」という発想のもと、住み慣れた自宅などできめ細かいケアサービスを受けながら自分らしく暮らすスウェーデンの高齢者たち。著者の好奇心は、それを支える働く人たちの労働環境や教習制度、ケアを支える市の財政の透明性と健全性、議会の民主主義のあり方などにも向かう。雑然とする印象はあるが、著者の「日本の福祉を変えたい」との情熱が感じられる。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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