ガザ通信
サイード・アブデルワーヘド 著 岡真理+TUP 訳
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- ガザ通信
- サイード・アブデルワーヘド 著 岡真理+TUP 訳
- 出版社:青土社 価格:1,500円
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昨年12月27日から、イスラエルはパレスチナ・ガザ地区を攻撃した。「1300人」という圧倒的な死者の数字のみが私たちの頭に残っていないだろうか。本書はガザ在住の著者が攻撃下と停戦後のガザから発信し続けたメールをまとめたもの。著者はいつ爆撃を受けるかわからない恐怖の中、発電機を使って、おびただしい数の知人の死と混乱を、モスクや学校、病院の破壊をメールで発信し続けた。爆弾の下からの生の声に、私たちはイスラエル側が「ハマスへの攻撃」をしたのではなく「パレスチナ人ことごとくを罰したのだ」と知る。訳者の岡さんは解説の中で、今回の攻撃はイスラエルの占領、パレスチナ人の人間性のはく奪という事態の一部という。それが解決されなければ「ガザ」は再び繰り返されるだろうと。それを変えるにはイスラエルの戦争犯罪を問い、そしてこの声を受け止め、1300という数字を超えてひとつひとつの命の物語に思いを馳せなければならない。(登)
一人でもだいじょうぶ親の介護から看取りまで
おちとよこ 著
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- 一人でもだいじょうぶ 親の介護から看取りまで
- おちとよこ 著
- 出版社:日本評論社 価格:1,500円
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一人っ子として16年間母と父を介護し2人を看取った著者。助けてくれるきょうだいはいない。でも様々な周囲の援助を得ながらの介護体験には学ぶべき点がたくさんある。
母が多発性脳こうそくで倒れ、母の病院と父のいる実家とわが家と仕事をまわる生活。でも仕事もやめず、同居も選択しなかったところに著者の賢明さを感じる。本書は働く女性のための、介護と看取りの書、でもある。
すぐにヘルパーに来てほしい場合には裏技として前倒しで介護サービスを使う手もあるとか。入院費の差額ベッド代はどうする、医者への謝礼はどうするかなど、役に立つ情報が満載である。母と父は別々の特別養護老人ホームに。これ以上気を使いたくないという母の思いがあったという。
著者は父の看取りの時に、仕事をとうとう休む。そして父の尊厳ある最期をと医師に頼む。
本書を読んで力を得る人は多い。コラムも生きる。(衣)
命の灯を消さないで死刑囚からあなたへ
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 編
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- 命の灯を消さないで 死刑囚からあなたへ
- 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 編
- 出版社:インパクト出版会 価格:1,300円
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上記の会が、2008年7月、確定死刑囚105人(当時)へアンケートを送ったところ、77人からの返信があった。本書はこのアンケートの回答をまとめたもの。掲載にあたっては、できるだけ死刑囚の書いた文章をそのまま載せ、編集したとある。
起こした事件の詳細、後悔の念、被害者への謝罪、冤罪または一部冤罪の訴え、拘置所や裁判の状況や処遇への不満、死刑廃止への願いなど、様々な思いがつづられ、死刑囚の生の叫びがズシリと胸に伝わってくる。
「犯した罪の大きさを考えると言い訳してほしくない」「"助けてください"などとは、恥知らずだ!」と怒りや嫌悪感、違和感を抱く人もいるかもしれない。だが、裁判員制度が始まり、私たちは死刑や死刑囚からもう目をそらすことはできない。本書はほとんど知ることができない死刑囚の置かれた状況についての貴重な資料となるだろう。(り)