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ふぇみんの書評

クィア・セクソロジー性の思いこみを解きほぐす

中村美亜 著

  • クィア・セクソロジー 性の思いこみを解きほぐす
  • 中村美亜 著
  • 出版社:インパクト出版会 価格:1,800円
 本書は「性に関する入門書と専門書の橋渡し的存在」。通底するのは、性をクィアな視点から包括的にとらえること。
 著者は、フェミニズムの取り組みや、ゲイ/レズビアンの権利運動にともなって変貌を遂げているセクソロジー(性科学)をアメリカで学んだ。医学や生物学だけでなく、社会学、歴史学、人類学などあらゆるジャンルにまたがり、また実際に役に立つ内容・知恵にあふれる。音楽とセックスの共通点を見いだしたところも、もともと専門が音楽学だという著者ならでは。
 ピンク映画を撮り続けてきた浜野佐知さん、セックスワーカーのわたりさんとの対談も収録。「フェミがあったから『大丈夫。やってける』と思えた」というわたりさんが編み出した「セーファー・セックス」の技は役に立つこと請け合い。
 サンフランシスコのセクシュアリティー研究センターで毎年夏に開催されるワークショップの報告も。「性に対する姿勢や態度を再構築する」もので、わくわくする内容。
 「私たちの『性』は、いまだ人口問題以外の何ものでもない」現実を変えていこう。(竹)

青春の終わった日ひとつの自伝

清水眞砂子 著

  • 青春の終わった日 ひとつの自伝
  • 清水眞砂子 著
  • 出版社:洋泉社 価格:1,800円
 児童文学者で『ゲド戦記』の翻訳者である著者の、前半生の自伝。
 敗戦後、今の北朝鮮から家族7人が歩いて38度線を越え帰国した、4歳の時の体験。農業を営む家で貧しさの中でも兄・姉から文化的なものを受け取り育った日々。
 中学・高校と進学するにつれ、家の暗さを反映してか不機嫌にひとりで過ごす少女。そして新たな世界が広がった大学、自立、迷い。
 これは戦後から高度成長期の始まりのころ、高校進学率が50%以下の農村で育った、向学心旺盛な女の子の物語である。
 子ども時代の豊かさは実に魅力的だ。幼い彼女が「耳をふさぐと音が聞こえなくなるんだ」「目を閉じると見えなくなるんだ」と何度も試したり、中学に入って文法を習った時に「世界は整然としている!」と感じたり。
 大学卒業後、高校教師となり、結婚・離婚し、自分は何をしたらいいのだろう、と身もだえしながら、児童文学の評論と翻訳という天職に出合っていく過程は感動を呼ぶ。ある日、夕日の射す電車の中で、彼女は「この道を行くしかない」と思う。それは何でもできる青春という不自由からの解放だった、と。(衣)

イラク崩壊米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか

吉岡一 著

  • イラク崩壊 米軍占領下、15万人の命はなぜ奪われたのか
  • 吉岡一 著
  • 出版社:合同出版 価格:1,800円
 「イラクが泥沼化している」との表現はよく聞く。米軍への攻撃、イラク人を巻き込んだ自爆攻撃の嵐、宗派対立や部族の武装勢力による殺戮…。しかしそれだけで思考停止しイラクの現状に心を痛めるフリをしてはいけないと本書は教えてくれる。著者は、朝日新聞元中東アフリカ総局特派員。待避勧告が出る期間を除き命の危険に晒されながら2003年からイラクなど各地を取材。現地スタッフの取材も含め、膨大な数の事件や証言の断片を組み合わせ、構成し、イラク人 15万人の命が犠牲になったこの戦争の全貌とアメリカの隠れた意図に迫る。
 かつて世俗的で、宗派対立はなく、自爆テロなどなかったイラクで、なぜ「イスラム化」が進み、米兵はおろか同胞をも残虐に殺戮することが蔓延しているのか。著者はイラクに自爆テロ人員を送り込んでいる他のアラブ諸国や、自爆テロを指示する宗教・政治指導者にも切り込んでいく。
 著者は、米軍は撤退すべきで、米国の意図は「石油利権」ではなく「イスラエル防衛」だと結論づける。信じがたいような結論は、中東の様々な紛争を結びつける。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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