「親日/反日」を越える韓国歴史論争 英雄にも悪党にもなれない私たちへ
趙亨根 著 市村繁和 訳
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「親日/反日」を越える韓国歴史論争 英雄にも悪党にもなれない私たちへ
- 趙亨根 著 市村繁和 訳
- ころから3200円+10%
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韓国での「親日」は、「日本に対するおもねり、それを通じた同胞・同族への背信」、「反日」は「親日」の対義語として用いられているとする本書。「親日か反日か」という単純な二分論を乗り越え、日本による植民地支配の「功罪」論争や、個人の行動・責任を、社会学者の著者が詳細に分析する。
植民地支配下の朝鮮で起きた「反中民族主義」、植民地近代化論への批判、歴史的清算の模範事例とされるフランスとドイツの矛盾など、広範な例が論じられ、単純な評価とは違う複雑性を感じた。創氏改名の事例では、日本人と区別しにくい名は受理を拒否など、相互矛盾的な側面が多くあったという。
「歴史は決してひとつの真実に矮小化されてはならず、民衆の共有財産にならなければならない」という著者の考えに頷く。植民地主義の克服のために、韓国社会に向けて書かれているが、日本でこそ読まれるべき本だ。(ゆ)
翻訳から広がる日本語 女ことば・男ことば・疑似方言
中村桃子 著
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- 翻訳から広がる日本語 女ことば・男ことば・疑似方言
- 中村桃子 著
- 白澤社 発行 現代書館 発売2500円+10%
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言語学者として、女ことばをジェンダーやフェミニズムの視点で研究し続けてきた著者。本書では映画や小説、テレビ番組を中心に、翻訳語が様々な社会事情や背景の下で作られたものだと解く。
映画の中で女性の登場人物に「だわ」「そうね」と言わせたり、黒人の使用人に「ごぜえますだ」と疑似方言を使わせたり。こんな違和感満載な言葉づかいはなぜ続いたのか。男の登場人物の「だぜ」も不自然だ。そこには人間関係や言葉を使う目的、役割と共に、社会階級の区別から、人種・外国人・地方在住者への差別などの優劣関係が見てとれ、イデオロギーも関わると、著者は書く。親しみやすさを出すつもりで有色人種の翻訳語には方言を使う、“強い女”には攻撃的言葉を使用する、現在放映されている番組の女・男言葉の使い分けなど、翻訳する/される社会が表出するという。
疑似方言遣いには驚いたし、差別との指摘にも納得する。翻訳語を考えるきっかけになる。(げ)
ペンと剣 増補新版
エドワード・W・サイード 著 中野真紀子 訳
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- ペンと剣 増補新版
- エドワード・W・サイード 著 中野真紀子 訳
- 里山社2300円+10%
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パレスチナに生まれて米国に亡命し、後に比較文学の研究者として『オリエンタリズム』や『文化と帝国主義』を記し、パレスチナのために「闘う知識人」であり続けた、エドワード・W・サイード(1935-2003)。本書は、1987~94年の米・ラジオ番組でデーヴィッド・バーサミアンが行ったインタビュー5本をまとめたもの。サイードの本を読んだことのない人でもその思想の真髄が話し言葉でよく分かる上、イスラエルによるガザへの虐殺が続く今、改めてサイードに出会えることの価値は語り尽くせない。
欧米の表象や文学における植民地主義を喝破し、パレスチナ解放闘争を、偏狭なナショナリズムでない「正義について問いかけるもの」として他の闘争と連帯し、真の解放を目指さないPLOやパレスチナ知識層を痛烈に批判した。
根底には「和解と共生」の理想があった。今のパレスチナの現状に絶望するのではなく、サイードなら何を言い、行動するだろうと深く思考を促される。(玉)