骨を掘る男 わたしたちと戦争、そして沖縄
奥間勝也 著
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著者は沖縄生まれの映像作家。沖縄で戦没者の遺骨を探し続ける具志堅隆松さんを主人公に、ドキュメンタリー映画『骨を掘る男』(2024年公開)を撮影・監督した。
本書では、具志堅さんとの距離に悩んだり、大叔母の記憶をよみがえらせた沖縄戦のこと、「行動的慰霊」など、映画から広がる「沖縄」を綴っていく。とりわけ沖縄の人々の心に潜む内地への「劣等感」や、1990年代以降の表層的な沖縄ブームの功罪を掘り下げる。さらに沖縄の平和教育が、受けた時にはピンとこなくても意識の底に目印となる杭を打ち込み、いつか受け手の記憶を引っぱり出すもの、と書く。著者もその記憶に助けられたし、米軍の無節操な沖縄戦アーカイブ映像の批判的受容にも役立ったという。また映画で著者は、「会ったことのない人の死を悼むことができるか」を問うたが、本書では「できる」と断言した。
沖縄の人々の意識の奥深くが見えてくる。映画は自主上映も募っている。本書と併せて、ぜひ。(み)
- ケアを学ぶ人のために
- 西村ユミ、熊谷晋一郎 編
- 世界思想社 2500円+10%
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介護でも介助でもなく、近年「ケア」という言葉が使われる。本書はケアを専門に学ぶ学生向けに、最重要かつ最新の論点について20人の識者が記した。
ケアとは子どもや障害者、高齢者だけが必要とするものではなく、全ての人が膨大な人やモノからケアを受けているというケア観の転換をはじめ、看護現場における「植物状態」患者への実践や「疾病と病」との違いにみる人間観の転換、環境や場がケアになること、共にケアすることが民主主義の実践となること等、「ケアを根本から問い直し」「ケアのパラダイムチェンジ」を目指している。中でも、「障害者は一部の資源に自らのケアが供給独占されている人々」と言う、自身も障害がある熊谷と、ケアの独善性を指摘しつつ障害者自立生活運動とケアの対話の可能性を説いた障害のある油田優衣の論考は、インパクトと示唆に富む。
相模原障害者施設殺傷事件から10年の今年、この本そのものが植松的なものへの抵抗となる。(世)
〈主婦〉という職業 「愛の労働」の近現代
木村涼子 著
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- 〈主婦〉という職業 「愛の労働」の近現代
- 木村涼子 著
- 吉川弘文館2200円+10%
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「主婦」の労働に賃金を、との議論は実は国内外で100年前から繰り返されていた。その歴史を近現代史研究者が整理した書である。
まず「主婦」とは「イエ」の嫁の地位から上昇して、核家族の「主人」に対応する言葉だったことに驚いた。大正以降、「主婦」をプラスのイメージに仕立てたのが「主婦之友」「婦人倶楽部」などの雑誌だったことを図版豊富に紹介。この部分を読むだけでも楽しい。そして、家庭内での労働が無償とされる不合理や、「無償だから尊い/尊いから無償」という論理が、「主婦」誕生時から議論されていたと明かされる。「主婦」の労働対価を経済的に算出する2種類の方法(「主婦」が外で働いた場合の賃金と、外注した場合のコスト)も、100年前から考えられていた。
今も変わらず「主婦」の仕事は無償労働だが、この100年の変化として「逸失利益」の算定を、著者はあげる。ゼロから女性の平均賃金相当額へと変えるために裁判による長い努力があった。(雪)