非正規労働のかたわら、障害者年金や生活保護をもらったりもらわなかったりしつつ、女性の貧困や労働問題を発信する著者。様々なテーマの過去の連載等を収録した本書は、軍事主義やギラギラした新自由主義が跋扈し、フェミニズム内に排除と分断がある「暗い時代」に、這いずりながらも手探りで前に進もうとする著者が、ようやく発したうめきとも言える言葉や思考に満ちている。
独身女性(それも中高年)の非正規労働問題が社会的になぜ地味で目立たなくさせられているのか。それに抗ってきた著者が怒りを覚えるのは「氷河期世代支援」。非正規労働という「身分」が問題にされず、労働者としての権利保障と連帯が必要なのに「支援」へと回収されてしまう日本とは―。
どんなに力がなくても「尊厳」があると心底思うのは「信仰」に近い、それが大事、と著者。キリスト教にも救われた著者ならではの言葉だ。小さな灯が確実に胸の中にともる。(人)
- コーヒーは男のもの?
- 中村佳太 著
- サッフォー2000円+10%
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主にコーヒー豆の焙煎業界のジェンダー差別に改善を求める書。著者は京都で焙煎専門店を経営して、エッセイストでもあり業界に物申す人物だ。
コーヒー豆の麻袋を担げないとダメ、重くて熱い焙煎機の操作は男、という差別がまかり通り、女が業界で「活躍」できないのは自己責任だと思わせる圧力など、多くの“決めつけ”に溜息しかないが、著者は仲間と共に発言し、活動する。カフェの客によるセクハラが蔓延する問題は広く業界全体で取り組む必要があると語り、影響力がある雑誌のコーヒー特集が取り上げたキーパーソンが、全員男だったことに異議申し立てをする。いまだに2つの業界団体の中で女性理事はただ1人というアンバランスさ。広告を巡るあほらしい表象(ブラックは渋めの男で、ミルクが加わると女!)など、対談も興味深い。
著者らの問題提起は少しずつだが広まっているし、世界はもっと進んでいる。コーヒーはみんなのものにしないと。(え)
民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義
デヴィッド・グレーバー 著、片岡大右 訳
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- 民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義
- デヴィッド・グレーバー 著、片岡大右 訳
- 平凡社1700円+10%
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民主主義の西洋起源説はアテネの民主政が頭にあるからだろうが、アテネは奴隷制や女性抑圧に立脚した軍国主義的社会だった。それゆえ「アテネの…」と括弧付きで呼ばれる。民主主義の様々な要素も、それらは西洋にだけ特有というわけではない。米国憲法起草時にイロコイ族の制度が参照され、チアパス先住民のサパティスタ運動が征服者の概念である民主主義を掲げた例から、著者は民主主義を、古代ギリシャにのみ芽吹き直線的に近代欧米に至ったという“物語”を脱構築し、異なる共同体が出会った空間に生まれたものだと考える。
そもそも民主主義とは何か。ギリシャのアゴラでの民主主義と、選挙や議会などによる意思決定システムはまったく異なる。為政者が広場に集まる民衆を恐れ、排除しようとすることから見えてくるのは、実は民主主義の本質が、限りなくアナキズムに近いことだ。われわれの社会は民主主義なのか。あらためて考えさせてくれる。(た)