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ふぇみんの書評

地域史をひらく 満洲移民と飯田遊廓

齊藤俊江 著

  • 地域史をひらく 満洲移民と飯田遊廓
    • 齊藤俊江 著
    • 本の泉社5000円+10%
     地域の歴史を明らかにするとはどういうことか。戦時中、全国最多の約3万3千人を満洲(現中国東北部)に送り出した長野県。その南部に位置する飯田市で図書館司書を務め、定年退職後に地域史研究に取り組んできた著者が、満洲移民や飯田遊廓、社会運動史に関する論文を3部構成でまとめた。  満洲へ農業移民として渡った多くの人が命を落とし、壮絶な「自決」や逃避行を経て引き揚げても差別に苦しむ。遊廓の娼妓は身をどんなに痛めても借金は減らず、病と闘い、親に仕送りする生活が続く。こうした「負の歴史」を掘り起こして読み解き、欺瞞に満ちた為政者や社会構造を照らす。  半生を振り返り、問題意識を記した第三部「地域史をひらく」は必読。現場重視で原史料にあたる大切さや、聞き取りを物語にせずに記録する基本に誠実な姿勢が浮かぶ。飯田の近現代史料の収集・整理・保存は著者抜きに語れない―。市民や研究者から厚い信頼を寄せられる人柄も伝わってくる。(春)

    メガホンとペンライト 韓国の「騒ぎながら民主主義」

    キム・キョンファ 著

    • メガホンとペンライト 韓国の「騒ぎながら民主主義」
    • キム・キョンファ 著
    • 皓星社 2200円+10%
    2024年末の韓国の非常戒厳事件後の大統領弾劾罷免を求めるデモには、若い女性を中心にのべ800万人の市民がペンライトを片手に参加した。韓国在住のメディア人類学者で、日本にも長期滞在していた著者が、「デモ」の社会的意義、韓国でのデモの変遷や影響を考察し、静かでおとなしく見える日本のデモのあり方との比較をした書。  デモには「政治的実践」と「文化的実践」の意義があると著者。遊び心と共助の精神に富んだ弾劾罷免デモの現場では、「自由発言台」でマイノリティが声を上げ、「多声性」を実現。場自体が「抵抗装置」になった。一方の日本。長年運動をしてきた人には物足りない記述もあるだろうが、デモを「外側」から見るだけの日本のメディアの姿勢や、日本の抵抗運動を伝える機会や媒体が圧倒的に少ないから諦めに結び付くのではという指摘に頷く。  今日本では反戦デモが拡大中。極右の台頭という共通課題もある。韓国を見習いつつ私たちも進まねば。ペンライトを持って。(銀)

    語り、聞く 沖縄の戦世 戦中・戦後の生活史

    沖縄タイムス社 編 石原昌家 解説

    • 語り、聞く 沖縄の戦世 戦中・戦後の生活史
    • 沖縄タイムス社 編 石原昌家 解説
    • みすず書房3600円+10%
     戦後80年を経て沖縄タイムスが募集した、市民目線の沖縄の戦中・戦後史。戦争を生き抜いた語り手30人の体験を、子や孫、教え子らが聞き出す。語られるままの語り口に、引き込まれてしまう。  村民が日本兵からスパイ視され、その後村に物資が運ばれて、戦争に巻き込まれていく姿。終戦の喜びもあれば、空腹の記憶の切実さも。得々と語る“戦果アギヤー”のこと、米軍基地での労働。犠牲者多数だった対馬丸に乗り損なったこと。自分が死んだら、身代わりに死んでいった母と「10歳の子に戻って会いたい」という90歳の男性。体に金属片が入っているのでMRIは撮れない人。うちなーんちゅは耐え忍んで、決して屈しなかった、という抵抗も語られる。  いつの時代にも誰にでもかけがえのない暮らしがあり、大事な人がいる。それを壊すのが戦争だ。「戦争は絶対に正当化できない。国も国民を守らない。それは覚えておけ」という先人の言葉を忘れてはならない。(ま)
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