国家に喧嘩を売る女 金子文子 映画『金子文子 何が私をこうさせたか』
浜野佐知 編著
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国家に喧嘩を売る女 金子文子 映画『金子文子 何が私をこうさせたか』
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金子文子没後百年の今年2月、映画『金子文子 何が私をこうさせたか』が公開された。文子が大逆罪で死刑判決を受け、送られた刑務所を舞台に自死するまでの生き様と思想に迫る。本書は、浜野佐知監督の撮影秘話、脚本ほか、映画や監督の関係者などが寄稿。映画で随所に挿入され印象に残った文子の短歌も本書では全て所収され、映画のシーンと重ね、文子の心情をしみじみ読んだ。
文子を知るための資料として役に立つ本書。様々な文子に対する言葉もいい。浜野監督の「たった一人で日本という国と闘い抜き、自らの思想に殉じた」、「(彼女が目指したのは)一個の自由な主体としてあらゆる権力を引き離すこと」(崔盛旭)、「(文子は)アナーカ・フェミニスト」(高島鈴)など、文子へのいくつもの賛辞に心が躍る。天皇制、国家、家父長制…権力に抗い、自由を求めた文子は、やっぱりカッコイイ!(ん)
戦争トラウマを語り合う 戦争の終わらない痛苦と謝罪、赦し、和解を巡って
黒井秋夫ほか 著 白崎朝子 コーディネート
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- 戦争トラウマを語り合う 戦争の終わらない痛苦と謝罪、赦し、和解を巡って
- 黒井秋夫ほか 著 白崎朝子 コーディネート
- 泉町書房1800円+10%
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「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」代表の著者による、10人の識者との対談集。対談相手は、家族会当事者のほか、戦争トラウマが連鎖した3世代目(孫世代)の学者、DVや性虐待被害者をみてきた臨床心理士、慰安婦問題と戦時性暴力に向き合うジャーナリスト等、この問題を広く深く開く多様な人たちだ。
戦争トラウマをめぐる活動が被害に偏る日本人の記憶のレパートリーの一つにならないか(中村江里)、戦争トラウマが家族内の虐待や性暴力および過労死や「不在の父」等を生み出したこと(村本邦子ほか)、なぜ加害を、特に戦時性暴力を語れないのか(池田恵理子)、謝罪と赦しとは何か―等、示唆に富む。
沖縄戦経験者の「語らいの場」とも共通するのが、戦争トラウマを見出すことで暴力の連鎖を断ち切り、戦争をさせない一助になること。戦争という暴力の取り返しのつかなさは今何度強調してもよい。(許)
なでし子を夜半の嵐にた折られて 「甘粕事件」記憶の再生
田中伸尚 著
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- なでし子を夜半の嵐にた折られて 「甘粕事件」記憶の再生
- 田中伸尚 著
- 影書房2000円+10%
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読了後、茫然とした私の脳裏に浮かんだ言葉は「執念」であった。関東大震災直後の「甘粕事件」で、幼子「橘宗一」を理不尽に奪われた父・惣三郎、母にして大杉栄の妹・あやめのみならず、筆者の執念が激しいまでに伝わった。
大杉栄と伊藤野枝の記録は少なくない。では二人と共に虐殺された宗一と、その両親の生きた証はいかがであろうか。憲法、大逆事件、靖国問題等のテーマに取り組んできた筆者。本書では宗一の親族に取材を行い、当時の新聞記事や軍法会議の公判記録、写真等の資料を丹念に掘り起こすことで、天皇制国家を揺るがす毒を排除せんと狂気に走る甘粕正彦らの所業、さらに事件を容認した世論の闇をじわじわとつまびらかにしてゆく。
事件後、息子を奪われた無念を晴らさんが故に、惣三郎とあやめは決別、それぞれ数奇な人生を辿る。本書の書名は息子を思う父の短歌。宗一を語り継ぐ人々が現れたことは、救いと同時に二人の慟哭の思いも突きつけられる。(タ)