Subject: [fem-women2000 65] アンペイドワーク・ワークショップの報告
From: lalamaziwa <lalamaziwa@jca.apc.org>
Date: Fri, 29 Oct 1999 00:54:46 +0700
Seq: 65

10月27日、UNDPとUNIFEMの主催でアンペイドワークに間するセミナー
がランチを兼ねて催された。国連コンベンションセンターのダイニングルームが
会場でいささかリッチな雰囲気のセミナーではあった。

セミナーの表題は「政策対話:ペイドワークとアンペイドワークを国際的な政策
に統合する」で、現在ESCAPが重視している4つのプログラムのうちのひと
つである。

まず、ESCAP統計部ディレクターとUNDPネパールの地域副代表が挨拶。
ちなみに、アンペイドワークが世界的に注目されるようになったのは、1995
年のUNDPレポートで、2/3のアンペイドワークを女性が担っていることが
示されてからだ。

アンペイドワークの測定と調査に不可欠なのが時間調査であり、現在その関心が
各国で高まっている。全インド時間調査技術委員会のインディラ・ヒルェイ教授
がペイド、アンペイドワークを含むインドでの時間調査について報告した。

この調査によると、薪集めや水汲みなど生活物資の調達に費やす時間のうち女性が
負担している割合は 74.27%である。また、家事の86.23%、育児や介護の
80.97%、地域活動の45.29%を女性が担っている。調査の際に男性が答える権限が
ある場合が多いなど、まだ難しさや限界もあるが、時間調査は現状を知るために
有効な方法であることがわかった。

UNIFEMの地域プログラムアドバイザーのロレイン・コーナーさんは、日本
男性がアンペイドワークに関わる時間をオーストラリアの男性と比較しながら言
及した。日本男性がアンペイドワークに関わる時間の少なさは際立っている。
アンペイドワークを担う時間の男女のギャップが問題であり、女性が如何にペイ
ドワークや意思決定に参加できるかジェンダー平等の鍵であると述べた。

フロアからの発言で、韓国のNGOのヘイスー・シンさんは、アンペイドワーク
問題にかかわる具体的政策の例を挙げた。韓国では、1989年に家族法を改正
し、離婚の際の財産分与が認められたという。また、夫が死亡した際の遺産相続
について税控除が認められるようにんなった。今後もNGOとして、アンペイド
ワークに関する提言に取り組んでいきたいという。

なお、12月には、ESCAPがコーディネートしてインドでの時間調査の結果
などに関する小セミナーを政府向けに開催する予定になっている。

ESCAPがアンペイドワークに関する問題に積極的に取り組んでいる姿勢は評
価できる。ワークショップの資料によれば、1960年代から1996年にかけ
てインドなど26カ国で時間調査が行なわれている。数が意外と多いと思えるが
世界的にみるとまだまだである。実際の調査にはコストがかかるので途上国では
実施が難しい。

今回の会議のためにパネリストが報告したペーパーには、アンペイドワークへの
言及もかなりあった。日本政府の発言でも、日本でアンペイドワークの貨幣評価
の結果が行なわれたことへの言及があった。全体として、アンペイドワークが経
済活動として認識されるようになってきたのは確かだが、いまのところ最終的な
まとめにどのような形で反映されるかは確定していない。男女別統計データとい
う概念は最終報告に入る見込みだが、「アンペイドワーク」という単語に言及が
あるかどうかは微妙なところだ。

ようやく認識が高まってきたアンペイドワークだが、これが単なる統計データの
話に集約されてしまうことは、望ましくない男女共同参画室と統計局の連携を今
日かして、ジェンダーの視点に立つ政策につなげていくことが必要だ。

加藤登紀子(アジア女性会議ネットワーク)


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