Subject: [fem-women2000 636] Re: CSW--Women in Burma
From: "Miho Okawara" <PXS11035@nifty.ne.jp>
Date: Fri, 16 Mar 2001 18:15:14 +0900
Seq: 636

ビルマの女性のHIV/AIDS感染、人身売買、軍政下の状況について
(Women in Burma : HIV/AIDS, Trafficking & Militarization)

3月14日 
女性と健康ネットワーク
大河原 美穂

(最初にお断りしておきます。
国名はレジュメがBurmaで表記されていましたので、
そのままビルマと訳しました。)

3月11日、日曜日夕刻にNYに到着。
ちょうど折り返し後半12日(月)からのCSW参加となりました。

私は、3月14日(水)に「ビルマの女性のHIV/AIDS感染、
人身売買、軍政下の状況について」のシンポジウムに参加致しました。

正午に始まる予定の国連ビル近くのチャーチセンター10階の会場は、
予定時間前にはもうたくさんの人が集まっており、
この問題に対する関心の高さがうかがえました。

結局、狭い会場に40名ほどの人が詰めかけ、
熱気がむんむんと感じられる会場で
ビルマから来た女性達のプレゼンテーションが始まりました。

**********

最初にビルマの歴史の概要が説明されました。
1948年にイギリスから独立したビルマは、本来は東南アジアの中でも
肥沃な大地と豊富な資源を有する国であったものの、
1962年に軍事政権がひかれてから内紛が続く中、国土が疲弊し、
1987年には国連が定義する最貧国の一つの国になってしまったこと。

そして、翌年の1988年にはその軍事政権に反対して
全土に民主化運動が広がり、そのような中で
アウンサンスーチー女史が国民のリーダーとして選出されたこと。

しかし、逆に軍事政権は弾圧を強化し、
軍備の増強や少数民族の強制移住を強行し、
その結果、その強制移住させられた少数民族の人たちが
難民として近隣諸国に流出したこと。

このような歴史の概要が説明されたあと、
少数民族のカレン族の民族衣装を身にまとった女性の話が始まったのです。

*****

最初の女性は、ナウムーシー(Naw Mu Si)さん。
まだ10代くらいにしか見えない彼女が最初に言ったのは、
彼女は三重に差別を受けてきたということです。

それは、まず「女性」として、そしてカレン族という「少数民族」として、
そして最後に「難民」としてということです。
彼女の受けた三重の差別というものに、近年のビルマの歴史に翻弄され、
様々な差別・虐待を受け続けて来たビルマの女性の「叫び」を聞く思いが致しまし
た。

女性に対する暴力はビルマの様々な社会で広範に見られるものの、
特に少数民族への女性、そして難民になった女性達への
差別・暴力は陰惨の極みだと彼女は語りました。

具体的には軍事政権下の軍隊が引き起こす
女性に対する暴力(レイプ)について説明をしてくれました。
難民キャンプに収容されている女性たちは、
医療・保健・教育という基本的なニーズへのアクセスも制限され、
そのような中でそのキャンプ地に駐屯する軍隊の男性たちから
性暴力の被害者を受け、そしてHIV/AIDSへ感染してしまう事も多いと語りました。

また、HIV/AIDS感染者の軍人が意図的に、
その難民の女性たちに対して性暴力(レイプ)を働き、
難民の女性にHIV/AIDSを感染させようとする事実もあると語り、
参加者からは驚きの声があがりました。

というのも、ビルマという国は多様な民族で構成されており、
民族間の紛争の際には、少数民族に属さないマジョリティ側の
男性からの少数民族の女性に対する暴行が横行して来たという
ケースが多くあったからだそうです。

民族浄化の名のもとに、女性を暴行する事が平然と行われてきたこと。
古今東西そのような事があったのは想像できますし、
文献でもそのような記述は見られるとは思いますが、
私の目の前でその事が語られる事、そして目の前に語る人がいる事、
それらは私自身への胸につきささる度合いが全然違います。
背筋が寒くなるというより、体中が凍りついた感じがした彼女の話でした。

****

もう一人プレゼンテーションをしてくれた女性も、
同じカレン族の女性でLaddaさんという方でした。
彼女は「Karen Education Working Group」という
1996年に設立されたカレン族の女性を対象とした
教育プログラムを運営している女性です。

彼女は主に難民キャンプに生活するカレン族の女性を対象に
HIV/AIDSの知識普及や予防教育を進めている話をしてくれました。

その話によると、難民キャンプに生活するカレン族の女性は
ビルマ都市部の女性に比較すれば、
比較的HIV/AIDS 感染へのリスクは低いとはいえるものの、
油断は禁物だということです。というのも、

1996年に5つの難民キャンプを調査した際に判明したことは、
カレン族の難民の妊婦の70%以上がHIV/AIDSというものを知らなかったこと。

そして、HIV/AIDSの予防策を知っている女性は
1%にも満たなかったからだそうです。

そこでこの教育プログラムのグループはHIV/AIDS、
そしてSTD(性行為感染症)の知識普及や予防教育に
力を入れることになったそうですが、それだけにとどまらず、
更に新たな以下の目標も据えて日々頑張っている様子を話してくれました。

それは、HIV/AIDS、そしてSTD(性行為感染症)の
知識普及や予防教育に加えて、その地域の中で
自主的な教育システムをカレン族の女性自身が行えるように手助けすること。

また、HIV/AIDSに関して情報センターを難民キャンプ地の中に設置し、
正確な情報を難民に提供すること。

そして、既にHIV/AIDSに感染してしまった人達に対する
ケアシステムをコミュニティ内で確立すること。

そして最後に、難民キャンプでのHIV/AIDSに関しての
政策立案の骨子を作成することだと説明してくれました。

また、カレン族女性の識字率の低さ、
水汲みなどの重労働を含む家事の負担の大きさについても話してくれ、
その他には、従来このような性的な話をすることはタブーだとされてきた文化で、
識字率も低い中、情報へのアクセスも制限され、
男性から暴行を受けた事を苦にして
自殺をはかるような女性も多いケースも紹介されました。

女性たちが正しい情報や知識を有するための
広範なケアシステムを確立していくことが喫緊の課題であると語ってくれました。

*****

最後に、Myang Myang Nuiさんという
女性医師の方からの話がありました。

彼女が最初に言ったことは、
「国境沿いが問題の鏡である」ということです。

それは、具体的にはタイとの国境沿いの事だそうですが、
そこでの問題として最初に挙げたのは、
国境沿いの難民キャンプに蔓延するマラリア感染の実態です。

多くの難民キャンプでマラリアが蔓延しており、
彼女はタイ側の国境沿いの村Mae Hong Sonにある難民キャンプで
マラリア感染防止のための医療活動を行っていたことを話してくれました。

マラリア以外にも、腸チフス、敗血症、肺炎、皮膚感染症、
慢性的な下痢・発熱症状など様々な疾病に苦しんでいる
難民の実態が語られました。

また、今後想定される大きな脅威として
HIV/AIDSへの感染の話も説明がありました。
特に異性間交渉によるHIV/AIDS感染が増大していること。
そして母子感染そしてHIV/AIDS感染孤児の問題もあげられました。

また、あまり知られていない事として、
難民の慢性的な栄養失調の話が出ました。

特に妊産婦に見られるビタミンB1不足の実態は深刻だそうです。
カレン族のLaddaさんの説明の時にも同じ話がありましたが、
やはり女性(特に母親)への基本的な教育(母子保健)の
重要性を強調されていました。

もう一つ彼女が強調したことは、悲惨な体験からくる
心理的なトラウマを抱える難民たちへのケアの必要性です。
悲惨な殺戮や虐殺の場面を目の当たりにしたり、
難民女性自身が暴行に遭ったりする事により、
多くの難民女性たちが心理的なトラウマを抱え、
それに苦しんでいるそうです。

また麻薬の中毒患者が国境沿いに
50万人ほどいると説明してくれました。

以上の様な国境沿いの難民キャンプでの実態について
話してくれた後、彼女が語ったことは、

タイ側国境沿いにビルマからの難民が
約100万人いると想定されているものの、
それは多くが難民という立場上、
難民自体の正確な数の把握が困難であるということです。

そのような中で難民女性のtraffickingが横行しているとも語ってくれました。

Myang Myang Nuiさんは色々とデータ(数字)の提示をもって
わかりやすく説明してくれたものの、
会議参加者からそのデータの信憑性に関する質問がなされました。

しかし、このこと自体はMyang Myang Nui自身が
一番よくわかっており、
「とにかく正確な難民の把握が難しいのが、
一番私にとってもfrustratingなのです。」
と声を荒らげる一場面もありました。

それぞれの女性達がこのビルマの難民女性の実態について
多くの人々に知ってもらうため、CSWの会議に備えて一致団結して
準備をしてきましたとコーディネーターのビルマの女性が最後に語った時には、
大きな拍手が会議の参加者(傍聴者)側から聞こえ、閉会に至りました。

今でもその大きな拍手の音が耳に残っております。

以上


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大河原 美穂
Miho OKAWARA
E-mail : PXS11035@nifty.ne.jp





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