Subject: [fem-women2000 57] 経済領域におけるジェンダーギャップの解消における日本政府の課題
From: TIMTAE42@aol.com
Date: Wed, 29 Sep 1999 04:41:41 EDT
Seq: 57

「女性企業実態調査プロジェクトチーム」です。

アジア・太平洋女性NGO会議の「女性と経済」分野のワークショップに用意した報告書を送ります。

以下が報告書です。


日付:1999年8/31〓9/3

場所:アジア・太平洋女性NGO会議(タイ・バンコク)

ワークショップ:「女性と経済」

タイトル:経済領域におけるジェンダーギャップの解消における日本政府の課題

意見提出:女性企業実態調査プロジェクトチーム



はじめに



 わたしたちは、経済領域における女性の問題点を探り、あらゆる経済領域のジェン

ダーギャップの解消をめざしているNGOです。

 1997年に1500人の女性企業に対して、第一回目の実態調査を行い、報告書

をまとめ、今後わたしたち女性が取り組み必要のある経済領域の課題、そして日本の

政府が取り組む必要のある経済領域の課題をまとめました。



 97年7月タイ・バーツ暴落、97年10月香港株が暴落、インドネシア、韓国な

ど、アジアのいくつかの国では経済危機に直面しています。

 日本も同様に厳しい状況です。90年に入り、バブル崩壊、その後構造的な不況に

陥り、特にこの3年間は、きびしい経済状況にあります。

 日本政府は、92年度〓95年度の間に総額60兆円(約5000億ドル・日本の

GDP国民総支出の12%)の景気対策を行いました。98年には、金融再生のため

に60兆円(約5000億ドル・国民総支出の12%)、総合経済対策として17兆

円が投入。99年の今年は緊急経済対策として18兆円が投入されます。

 一方、わたしたちが99年7月に行った女性小企業への調査では、この1年間に公

的な支援を受けた女性小企業の割合は、11%とわずかであり、また、女性小企業の

多くは業績の悪化を感じています。これまで投入された膨大な経済・景気対策費用の

多くは、結果的に女性小企業を対象外としています。



 アジア各国は全経済領域におけるジェンダーギャップの解消を目指してさまざまな

法的措置をとっています。各省庁財政の一定枠を女性のために確保すること、融資の

一定枠を女性のために確保すること、政府調達の一定枠を女性のために確保すること、

女性企業への支援法制定などです。

 しかし、日本には経済領域におけるジェンダーギャップを解消するための法律や政

策はありません。それは今回の日本政府の国連に対する回答を見ても明らかです。政

府の回答内容は次の2点のみです。「女性起業家」の実情を知るための研究会を作

ったこと。「女性起業家」のためのマニュアルを作ったこと。(融資の項がありま

したが、担保・保証人が必要なため、実効のあるものではありませんでした。)



 わたしたちは上記のような実状を踏まえ、経済領域に女性がアクセスできていない

状況を早急に把握し、対策を行う必要があると考えています。わたしたちは、日本の

女性の抱えている問題の解決のために、日本政府に対する提案を、アジア・太平洋女

性NGOシンポジウムの「女性と経済」ワークショップの場で行いたいと思います。

 これらの提案は、経済領域におけるアジア・太平洋地域の女性が抱えている問題と

同様の問題であり、連帯できるものであるとわたしたちは考えています。



具体的な政府の課題(A〓E)

A.女性企業に対する的確な政策が日本では行われていません。日本政府は、政策決

定にあたり、まず以下のことを行う必要があります。

 (1)「女性企業」の定義づけをすること。

 (2)「女性企業」の総数を把握し、公表すること。

 (3)「女性企業」の実態およびニーズを把握し、公表すること。

*『事業所・企業統計調査』の公表の際、事業所総数のみでなく、男女別の統計数値

も公表すること。(日本政府は2001年に調査実施予定の『事業所・企業統計調査』

などによって、女性企業の総数を把握し、実態を把握することができます)



B.日本政府の経済計画・経済政策の決定過程には、ジェンダーギャップ解消の視点

が欠如しています。計画・政策決定過程に、ジェンダー経済学・ジェンダー統計学の

視点を盛り込む必要があります。

*『国民経済計算年報』の中に、男女別統計がなく、女性が経済に関与している割合

が明らかになっていません。

 また、融資、補助金、助成金、政府調達(官公需)・地方自治体調達の中小企業向

け目標額・実績額を公表する際、男女別の数値も公表する必要性があります。



C.経済構造へのアクセスの機会に関して、日本には男女格差があります。日本政府

は、以下の点を積極的に改善する必要があります。(※最下欄に組織・団体名一覧を

掲載しました)

(1)経済団体連合会をはじめとする各種経済・産業団体の執行部には、女性がまったく

入っていないか、入っていてもごく少数です。「ジェンダーの視点をもち、『女性と

経済』に理解のある女性」の参加比率を高めるため、ポジティブ・アクションをとる

必要があります。これら団体は、経済に及ぼす影響力が大きいことから、是正すべき

社会的責任を有しています。

(2)一部の女性企業は、法律的に組織されている経済ネットワークの下部組織である婦

人部に所属し、執行部に入れず、意思決定に参加できていない状況です。これら経済

ネットワークの執行部に女性が参加するために、ポジティブ・アクションをとる必要

があります。

(3)経済・産業関連の審議会などには、「ジェンダーの視点をもち、『女性と経済』に

理解のある女性」がまったく入っていないか、入っていてもごく少数です。女性比率

を高めるため、ポジティブ・アクションをとる必要があります。



D.日本政府は、女性企業への「一定枠割り当て(アファーマティブ・アクションの

一形態)」を、あらゆる経済・産業分野で推進する必要があります。特に、財政(各

省庁予算)、政府調達(官公需)、地方自治体調達、融資、助成金、補助金(中小企

業への対策予算など)については重要です。



E.多くの女性企業は、組織化されていません。日本政府は、女性自らが結成しつつ

ある女性の経済ネットワークを、積極的に(法的に)支援する必要があります。



以上

……………………………………………………………………………………………………

<参考資料:Cに関連して>



 意思決定における女性の比率を高めるため、早急にポジティブ・アクションを行う

必要のある組織・団体は、以下のとおり。

【経済団体】

    経済団体連合会       議長・副議長12名(うち女性1名)

    日本商工会議所       役員31名    (うち女性ゼロ)

    日本経営者団体連盟    会長・副会長12名(うち女性ゼロ)

    経済同友会          代表・副代表12名(うち女性1名)

【関西の経済団体】

    関西経済連合会       会長・副会長11名(うち女性ゼロ)

    大阪商工会議所       会頭・副会頭6名 (うち女性ゼロ)

    関西経営者協会       主要役員11名  (うち女性ゼロ)

    関西経済同友会       役員21名    (うち女性1名)

【日本政府によって組織され、中小企業政策の対象となっている中小企業組合団体な

ど】

    全国中小企業団体中央会    役員60名    (うち女性ゼロ)

    都道府県中小企業団体中央会 各代表47名   (うち女性ゼロ)

    全国商工会連合会         役員24名    (うち女性1名)

    都道府県商工会連合会      各代表47名   (うち女性ゼロ)

    全国商店街振興組合        役員56名    (うち女性ゼロ)

    都道府県商店街振興組合     各代表47名   (うち女性ゼロ)

    協同組合          50000組合

        (代表はほとんど男性、代表の男女別数は公表されていない)

    各地商工会議所       505団体

        (代表はほとんど男性、代表の男女別数は公表されていない)

【審議会・委員会】(女性の参加比率を2000年までに20%以上とすること)

(おわり)


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