Subject: [fem-women2000 441] 北京+5、メディア、インターネット、うんぬん
From: lalamaziwa <lalamaziwa@jca.apc.org>
Date: Thu, 06 Jul 2000 08:22:10 +0900
Seq: 441

某所に書いた歩留まりの悪い原稿。まとまりも悪いんですが(^__^;)、
そろそろ時効だと思うのでアップします。ご自由にお使いください。
かなり偏った見方をしてると思うので、質問、コメント歓迎です。
--lalamaziwa

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 女性の地位向上にとって情報通信技術は心強い味方。だから、もっと女性が通
信や技術を身に付けて積極的に使える状況を作るべきだというのが5年前の国連
世界北京女性会議の結論だった。これは、女性とメディアを扱う第J章で提起さ
れている行動だ。

 北京世界女性会議から5年、北京当時、女性団体にとっては高嶺の花でしかな
かったパソコンやインターネットが、ニューヨークでは女性情報の発信の道具と
して積極的に使われていた。

 代表的なのは、音声ファイルを使ってインターネットラジオ番組を提供するコ
スタリカのファイア(FIRE)と、インターネットテレビ放送局のフェミニズ
ムビ番組を担当するフランスの女性団体、レ・ペネロープ(Le Penelo
pe)である。この二つは共に、インターネットによるNGO向け情報提供を行
なうウォメンアクション(Women Action)の活動として進められた
インターネット放送だ。

 ウォメンアクションは、昨年春に開かれた北京+5の第一回公式準備会合での
NGOワークショップを契機に発足し、世界の草の根女性メディアと連携して北
京行動綱領第J章「女性とメディア」に関する提言活動をリードするほか、今年
春の準備会合から、印刷媒体と電子媒体による三ヶ国語のNGO新聞の発行や、
NGO向けインターネットカフェの運営を行なった。こういう国際実行委員会が
メーリングリストを使って臨機応変に形成されるのもインターネット時代の特徴
だろう。メンバーからの高い関心も手伝って、女性二〇〇〇年会議ではインター
ネットの特性を活かすマルチメディアによる報道に力を入れることにしたわけだ。

 FIRE(FEMINIST INTERNATIONAL RADIO ENDEAVOUR)はコスタリカに拠点を
置く国際ラジオ放送局。ナイロビ世界女性会議のときの「平和テント」にインス
ピレーションを受けて発足した国際女性短波局として一九九一年から活動を始め
た。放送言語はラテンアメリカ諸国の共通言語であるスペイン語と英語。AMA
RC(Association of Community Radio Broadcastersー世界草の根ラジオ連盟)
の中南米女性ネットの主宰者でもあり、一九九八年から独立メディアとしての地
位を目指してインターネット放送にも取り組んでいる。

 彼女らの機材・スタッフ構成はいたって簡素。取材と編集にあたるスタッフ2
人がワークショップの取材やインタビューにソツのないルーチンで動いていた。
デジタル録音機1台、単一指向性マイク1本、録音状況モニタ用ヘッドホン1本
を使ってクリップを録音する。これを元に音声編集ソフトを使ってパソコンで編
集し、毎日定時にスペイン語と英語でそれぞれ三○分のライブ放送をする。ブロー
ドキャスト用ソフトをインストールしたパソコン1台に簡単なミキサーをつない
でクリップとトークを合成していく。放送局相互に番組を乗り入れした仕組をつ
くっているので、インターネットからダウンロードされたFIREの報道が更に
世界に広がっていくという仕掛けにもなっている。

 FIREの特集番組のタイトルは「留意なき言葉(Voice without Brackets)」。
最終文書の作成に向けた交渉プロセスが合意のない留意を示す括弧がちりばめら
れた草案からを巡る討議に終始することに対する皮肉であるとともに、政府やマ
スメディアセンサーされない女性の主張という意味でもある。毎夕方には「暖炉」
「火元」の二重の意味を持つFIREPLACEと名付けた語らいの場を持ち、
参加女性団体との交流をはかりつつ、センサーされない自由な言論を保証する媒
体を自らの手で確保する重要性を訴えていた。報道でありながら、経験共有のた
めのネットワーキングを重視するアプローチはナイロビからの伝統と言ってよい
だろう。

 ペネロープは、フランスの女性団体で、150名ほどの会員のうち、1割くらいが
こうした情報活動にアクティブにかかわっているという。インターネットテレビ
局にサイバーフェム(電脳の女)というフェミニスト番組を提供している。北京
+5の特別番組は、フランスのスタジオをニューヨークに持ち込んだ形で、フラ
ンス語と英語の二か国語で展開した。

 放送と同時にオープンするチャットルームに寄せられる視聴者の意見を出演者
にフィードバックして双方向性のある番組を作るのがこの局の特徴だが、番組の
構成は、座談会、インタビュー、会議の様子のクリップを取り混ぜた一般的なの
テレビ番組に近い。スタッフ構成も同様に、編集長、ディレクター、カメラ、
Web技術、スタジオ設置とパソコンを担当する学生インターン2名の6名がニュー
ヨーク入りした。デジタル素材を今後の教材づくりなどに提供していくという前
提もあって、腰を据えた取材体制を組んでいたわけだ。

 5日間の特集では、ロビーのためにニューヨークに集まった多忙な女性たちを
相手に意欲的に番組出演交渉を行ない、「メディアを手に入れた女たち」「女性
が求める政策とは?」「女性運動からの証言」「セクシュアリティ:自由の問題
か死活問題か」「グローバル化を超える開発モデル」「国際政治の英語独裁」と
いうテーマで番組をつくった。女性運動の将来ビジョンを求める情報発信を目指
す硬派である。その一方、団体独自のウェブでは、マルチメディアの視覚効果を
より積極的に活用している。保守的なフランスの中ではこうした技術を駆使した
運動形態は前衛的存在と受け止められているらしい。Javaの演出効果を多様
した彼女らのウェブを見て「何か変。壊れてるんじゃない?」と心配して連絡し
てくる会員もいるそうだ。

     *

 女性二〇〇〇年会議を通して感じたことは、インターネットを使った女性運動
の情報発信基地が確実に増えているということだ。

 まず、多数の女性団体が独自にウェブに情報を流している。五年前と大きく違
っているところは発信形態が英語情報に限られないことだろう。アラビア語や、
アジア諸言語の情報もファックスやインターネットで世界を駆け巡ったのである。
日本では、fem−netやWWNがメーリングリストとウェブを使って北京+
5の情報を流した。議場からの非公式協議傍聴速報や、NGOフォーラムの状況
を伝える映像がインターネットで届き、日本でも多くのメンバーが臨場感を持っ
て会議の行く末を見守った。

 会期中にはNGOの主催で女性運動メディアにインターネットを含む道具を使
うノウハウを共有する場が連日開かれていた。

 IAWRT(International Association of Women in Radio and TV - ラジオ
・テレビ女性労働者連盟)とAMARC―WIN(The Women's International
Network of the Association of Community Radio Broadcastersー世界草の根ラ
ジオ連盟・国際女性ネットワーク)が共催した「メディアに働く女性―私たちの
道具」ワークショップでは、オーディオ、ビデオ、インターネットという三大ツー
ルを中心に実演付討論会を行った。小型ビデオカメラの使い方と編集、小規模F
M局の設置、ラジオ番根メディアの設置に必要なノウハウが満載された2時間である。リアルタイムに
情報を伝える可能性が身近になった事実を目の前に、参加者は一様に興奮した様
子であった。 アジア地域で日本に次ぐインターネット人口を持つ韓国の女性団
体も電子媒体の積極利用をテーマにパネルを開催。男女の政治的力関係を改善す
るツールとしてインターネットに期待し、国際的な取り組みの中から男女平等に
貢献するアプローチを模索している。

 ジェンダーと情報通信技術に関するワークショップは、このほかにも複数開か
れた。国連開発計画のパネルでは、女性からのアクセスが阻害されていることが
共通認識であり、国連や女性団体が情報通信技術に関する政策立案や啓蒙活動に
かかわる必要が訴えられた。ネットワーク企業最大手のCISCOシステムが国
連部門〔UNDP(国連開発計画)とUNIFEM(国連婦人開発基金)〕と協
力して、自社研修支援プログラム(テクノエリートの養成が目的)にジェンダー
配慮を取り入れる計画を紹介している。国連女性部門が共同運営するWomen
Watchのインターネットブースでも連日国連関係部門のサイト説明が行われ
ていた。

 特記事項は、国連広報部による公式会議の実況中継だろう。この種のインター
ネット放送は女性会議では初めて実施されたもの。fem−netのメーリング
リストでも、「ソファーに寝そべってスピーチを聞いた」という報告があったが、
これまで厚いベールに包まれていた国連交渉の様子が茶の間にまで飛び込むよう
になった意義は大きい。

 技術革新の波に押されて、情報の流れは変わった。五年後に予定される女性会
議までには、普通の女性(日本は自称普通の女性が活動しているケースが多い)
が外国に飛ばなくても双方向のうまみを活かし国際政治に影響を及ぼす活動がで
きるようになるのではないか。しかし、女性の願いと技術の主従関係を取り違え
ないようにしよう。アラブ諸国の女性たちの声明が女性たちの主張を象徴してい
る。
「私たちがジェンダー平等を求めるのは、グローバル化や技術に押されたからで
はない。これは私たちの心からの願いなのだ。」

lalamaziwa  (fem-net/JCA-NET)





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