最近のトピックス

■じん肺合併肺がんに新認定基準
 
厚生労働省は3月18日「じん肺有所見者の肺がんに係る医療実践上の不利益に関する専門検討会の報告書を発表した。
 つづいて3月27日、「じん肺有所見者に発生した肺がんの労災補償上の取扱いについて」(基発0327005)という労働基準局通達を発した。
 これにより、じん肺管理区分4に合併した原発性肺がんのみに労災補償を限定していた従来の認定基準(昭和53年11月3日付け基発608号)は廃止された。

■管理区分3に拡大
 
専門検討会はじん肺有所見者に発生した原発性の肺がんについて医療実践上の不利益の観点からじん肺管理区分に応じて、

1.管理4では明らかな医療実践上の不利益が認められた。
2.管理3イ、3ロでも明らかな医療実践上の不利益が存在すると判断する。
3.管理2では、じん肺のない場合との比較において明らかな医療実践上の不利益が存在するとは認められなかった。

と検討報告をまとめた。その結果、新認定基準では管理3又は管理4と決定された者に発生した原発性肺がんを業務上疾病として取り扱うことになった。
 さらに管理3若しくは管理4でない場合やじん肺管理区分決定を受けていない場合で当該労働者が死亡や重篤な疾病のためじん肺管理区分決定申請ができないとき、地方じん肺診査医が総合的に判断し管理3、管理4相当と認められた原発性肺がんも認めることとした。


■すべてのじん肺合併肺がんを労災に
 
新認定基準が管理3まで認定要件を緩和したことは一定評価できる。
 しかし、厚生労働省はあくまで「医療実践上の不利益」を理由とし、じん肺と肺がんとの医学的因果関係を認めていない。
 そのため専門検討会で医療実践上の不利益がないと判断された管理2に合併した肺がんは補償対象から切り捨てられた。じん肺有所見者のなかで圧倒的に多い管理2の肺がん患者は救済されない。
 じん肺法を改正し5つの法定合併症に肺がんを加え、すべてのじん肺合併肺がんに労災補償を認めるべきだ。今後もひきつづき取り組みを進めよう。

基発第0327005号
平成14年3月27日

厚生労働省労働基準局長
じん肺有所見者に発生した肺がんの労災補償上の取扱いについて

じん肺有所見者(石綿肺にかかっている者を除く。以下同じ。)に発生した肺がんの労災補償上の取扱いについては、昭和53年11月2日付け基発第608号により示していたところであるが、今般、「じん肺有所見者の肺がんに係る医療実践上の不利益に関する専門検討会」の検討結果を踏まえ、労災補償上の取扱いを下記のとおり改正することとしたので、今後の事務処理に遺漏のないよう万全を期されたい。




 じん肺法第4条第2項に掲げるじん肺管理区分(以下「じん肺管理区分」という。)が管理3又は管理4と決定された者に発生した原発性肺がんについては、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する疾病として取り扱うこと。
 なお、現に決定を受けているじん肺管理区分が管理3若しくは管理4でない場合又はじん肺管理の決定が行われていない場合において、当該労働者が死亡し、又は重篤な疾病にかかっている等のため、じん肺法第15条第1項の規定に基づく随時申請を行うことが不可能又は困難であると認められるときは、地方じん肺診査医による当該労働者のじん肺の進展度及び病態に関する総合的な判断により、じん肺管理区分が管理3又は管理4に相当すると認められる者に発生した原発性肺がんについても同様に取り扱って差し支えない。

 


 

 新「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」が策定

厚労省労働基準安全衛生部は4月5日、新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定したと発表した。すでに「VDT作業に係る労働衛生管理に関する検討会」が2月に報告書をまとめており、それをもとに今回の新ガイドラインが策定された。ここでは概要のみを紹介するが、全文を必要な方はご連絡下さい。

1.対象となる作業
 
対象となる作業は、事務所において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT(Visual Display Terminals)機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文書・雅俗等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業)とし、労働衛生管理を以下のように行うこととした。

2.作業環境管理
 
作業者の疲労等を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、照明、採光、グレア防止、騒音の低減措置等について基準を定め、VDT作業に適した作業環境管理を行うこととした。

3.作業管理

1)作業時間管理
 イ 作業時間管理

作業者が心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間、作業休止時間等について基準を定め、作業時間の管理を行うこととした。

【一日の作業時間】
  他の作業を組み込むこと又は他の作業とのローテーションを実施することなどにより、一日の 連続VDT作業時間が短くなるように配慮すること。

【一連続作業時間】
1時間を超えないようにすること。

【作業休止時間】
連続作業と連続作業の間に10〜15分の作業休止時間を設けること。

【小休止】

一連続作業時間内において1〜2回程度の小休止を設けること。
 
ロ 業務量への配慮
作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。

(2)VDT機器等の選定
 
次のVDT機器、関連什器等について基準を定め、これらの基準に適合したものを選定し、適切なVDT機器等を用いることとした。

デスクトップ型機器    ノート型機器
形態情報端末       ソフトウェア
椅子             机又は作業台

(3)VDT機器等の調整
 
作業者にディスプレイの位置、キーボード、マウス、椅子の座面の高さ等を総合的に調整させることとした。

4.VDT機器等及び作業環境の維持管理
 VDT機器等及び作業環境について、点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じることとした。

5.健康管理
 
作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るために、作業者に対して、 次により健康管理を行うこととした。

(1)健康診断等
 イ 健康診断

VDT作業に新たに従事する作業者に対して、作業の種類及び作業時間に応じ、配置 前健康 診断を実施し、その後1年以内ごと1回定期に、定期健康診断を行うこととし た。
 
 
ロ 健康診断結果に基づく事後措置
健康診断の結果に基づき、産業医の意見を踏まえ、必要に応じ有所見者に対して保 健指導等 の適切な措置を講じるとともに、作業方法、作業環境等の改善を進め、予防 対策の確立を図ることとした。

(2)健康相談
 
メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めることとした。

(3)職場体操等
 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましいこととした。

6.労働衛生教育
 
VDT作業に従事する作業者及び当該作業者に対しては、VDT作業に習得に必要な訓練を実 施することとした。また、新たにVDT作業に従事する作業者に対しては、VDT作業の習得に必要な訓練を行うこととした。

7.配慮事項
 
高齢者、障害等を有する作業者、及び在宅ワーカーの作業者に対して必要な配慮を行うこととした。