脱ゴーマニズム宣言裁判 第3回傍聴記

手記・関口深志(作家)


 今回、「脱ゴーマニズム裁判を楽しむ会」の方からこの裁判の傍聴記の依頼を受け、初めてここに執筆させていただくことになりました作家の関口深志と申します。若輩者でありますが、精一杯書かせていただきます。
 私がこの裁判の傍聴を始めたのは二回目のときからでして、一回目のときは見ることができませんでした。さて、私が法律的なむずかしい部分を書いてもややこしくなるだけと思いますので、まずは裁判の様子というものを書こうと思います。

 私が東京地方裁判所についたのは1時55分ごろ、622号法廷のドア前にはどなたかと雑談している被告の上杉氏がおられ、軽く会釈をして通り過ぎ中の法廷に入ると、傍聴席には原告の小林氏がお知り合いの方(おそらくスタッフの時浦氏)と和やかに雑談していました。そこには中村・瀧澤両弁護士もおられ、「前回よりは堂々としているな」という感じがしましたが、私が席を小林氏の近くに座ろうとすると小林氏は私の方を「どっち側の人間だ?」というような感じでジロリと見てきました。しかし私が目を小林氏に合わせるとすぐに小林氏は目をそらしました。やはりいろいろな意味で裁判とは緊張するものなのかな、と思いました。メモ帳を片手に裁判所内を軽くスケッチしていると、私の隣に「楽しむ会」の山本さんが座り、挨拶と軽いお話をしていると裁判が始まりました。傍聴席には二十人程度入っていました。前回より参加者数は減りましたが、やっぱりほかの裁判と違い注目度はあるのだなと感じました。

 裁判は十分もかからずあっけなくおわりました。簡単に内容を説明すると、被告上杉氏側からの求釈明として、小林氏側がいう「同一性保持権の侵害」とされる「脱ゴー宣」の「目隠し部分」に対しての反論で、「SPA!」に掲載されていた宅八郎氏の文章を改竄して「新ゴー宣」に小林氏が載せたという点を指摘しました。これは著作権を侵害しないのかという上杉氏側からの反論でしたが裁判長が「コピーではわかりにくいので資料として原本(SPA!の)が欲しい」ということで、この件はひとまず中断しました。次に、小林氏側の弁護士からは「求釈明は裁判についての争点・論点から広がりすぎている」として、裁判所側へ争点を絞ってもらいたいと要求しました。そのため、今回も次回に論争は持ちこしということになりました。

 裁判中に私が「クスッ」と笑うと原告席の小林氏はドキッとした表情で私の方を見て、すぐに目をそらしました。やはり裁判は、というより法廷は人を敏感にさせるものなのでしょうか。
 裁判が終わり、傍聴席を見渡すとインターネット上でホームページを開いている大学院生の方がおりました。名古屋からわざわざいらしたそうで小林氏の応援のためとはいえ、凄いと思いました。また、小林氏のスタッフと思える若い女性もいらっしゃったようです。
 小林氏は足早に法廷を出て上杉氏とは目も合わせず帰っていきました。

 私はなるべく作家として中立に公正にこの裁判を傍聴していきたいと思っています。そのため、正しいことは正しい、悪いことは悪いと自分自身の正論を堂々と言えるようになりたいと思います。それならば自分自身の確固とした理念と主張、「哲学」を持ち合わせていなくては駄目だと改めてこの裁判では考えさせられました。また、この裁判はおそらく著作権法上ではどんな判決が出ようと前例が過度に少ないのですから「画期的判決」になるでしょう。ですからこの裁判を多くの人に納得させるためにも、小林氏、上杉氏側には常に立派な態度で臨んでいただきたいと思います。
 だから小林氏には上杉氏と目も合わせず足早に立ち去るという精神的余裕の無さを見せるよりも、軽く会釈できるぐらいの「大人としての人間性」も見せて欲しいとも思います。この裁判は「喧嘩」ではなくあくまで「裁判」なのですから。子供の意地の張り合いで済ませられるような裁判の仕方では歴史に残るものも残らないでしょう。