名誉毀損・控訴審第一回報告

上杉 聰


 10月15日午前11時半から東京高裁にて、名誉毀損裁判の第1回口頭弁論が開かれました。今年3月に地裁で判決が降りてから約7カ月、いよいよ高裁の舞台に上ることに…。

 私としては、前回の轍をふまないために、今回の控訴理由書の作成には、ありったけの力を込めて高橋弁護士に協力させていただきました。また、この第一回の弁論は、裁判官との初対面。となると第一印象が肝心。「やっぱりあのマンガはおかしい! こんないい男をあんなに醜く描いてはいけない」と思ってもらおうと、高裁へ出かけました(逆の効果もあり?)。

 楽しむ会の傍聴は5人。いつもの皆さん、ここまで長く続く裁判に、時間をとって、あるいは休みまでとって来ていただくことに、原告として感謝にたえません。小林側はトッキー1人と小学館関係者らしき人1人。裁判長はなかなかの男前、人格円満という印象。

 7月に提出したこちら側の控訴理由書に対して、小林氏・小学館側が反論の準備書面1を提出。双方が陳述を行ったあと、裁判長が二つの問題を提起―

 (1)「前の(著作権)訴訟が確定した後に、たくさん売れているマンガ本に以前と同じように(ドロボーと)書いていることで、(被害の)状況が変わるかどうか検討して欲しい」

 (2)「控訴人は、謝罪文をマンガに付けるよう訴えているが、その法的な根拠を明らかにして欲しい」

 というもの。(1)は、小林側が弁護士少しあわてた様子。なにしろ、裁判が確定して引用が認められているにもかかわらず「ドロボー」と書かれている本が今も書店で売られているのですから、その不当性たるや明々白々です。

 (2)は、こちらがわへの質問。名誉毀損などが行われると、これまで出版差し止めなどの方法がとられてきたのですが、今回の裁判ではそれを要求せず、謝罪文を発表するとともに、もし新ゴーマニズム宣言55章を今後も出版し続けるのであれば、その箇所にもその謝罪文を掲載するよう要求しました。それは表現の自由への配慮のためです。

 しかし、こうした措置要求ははじめてのことですから、どの法律を根拠として要求するか、はっきりさせて欲しいとのことです。高橋弁護士は、「名誉回復の措置によるものですが、あらためて法的に整理して次回提出します」と応答しました。 

 ともあれ、裁判長の質問は、私の権利侵害が続いていることをはっきりとさせる必要性と、それを差し止める法的な根拠を明確にするようにというものですから、よい流れと思います。

 次回は、今回の小林・小学館側の準備書面に対してこちらが反論する番で、12月12日午前11:30より第824号法定と決まりました。次回も全力で準備します。