第二回 口頭弁論報告 「楽しむ会」 三上秋津

 

 11月14日(火)傍聴席は、総勢12人。何人かよしりん信者と見受けられる若者も目立った第二回目の「名誉毀損」裁判でした。教祖には会えなくて残念だったね(笑)。でも、トッキ−がいたでしょ。マンガとは全然違うんで(そりゃそうか)、判らなかったかもしれないな。とにかく、よしりん信者だろうが何でもいいから、たくさん傍聴に来て下さいな。

 当事者席は今回初めて全員が顔を揃えました。小林側代理人二名、小学館側代理人二名、そして原告の上杉氏、高橋弁護士という顔触れです。まあ、小林がいないのは、今回の裁判に関しては責めません(笑)。

 

 例によって厳しい裁判長の訴訟指揮により、今回は傍聴していても面白いものとなりました。興味深いポイントを何点か・・・。

 今回提出された上杉氏の準備書面では、例の、川田龍平氏や梶村太一郎氏のカットを傍証として提出しています。それに裁判長はひっかかったみたい。曰く・・・、

 

裁判長 「本件はあくまで上杉氏の名誉毀損であって、他の人の描かれ方は関係ないのでは?。手法の批判ということは解るが、これが本件にとってどれだけの意味を持つのか。裁判所としては、いたずらに争点を拡散させるような気がするのだが・・・。」

高橋弁護士 「いや、いかようにも描けるという漫画表現の特性を・・・」

裁 「ああ、そういうことですか。漫画表現の特性を折り込んでということなら、そういう意味なら、本件にも多いに関係ありますね。」

 

 嘘偽りなく(笑)、裁判長は「本件に関係あり」と明言しました。この時点で「漫画表現の特性」について「争点」として認知されたことは非常に大きいと思われます。逆に、小林側はつらいのではないか。

 内心ヒヤヒヤしながら聞いていたのですが、この裁判長、なかなかのものです。

 被告側に対しては、前回同様、「本章の漫画と欄外文章の関係」を具体的に次回反論で述べるよう指導していました。よほど気になるらしい。

 

 さて、前回江原嬢も指摘していましたが、小学館側の代理人の一人がホント曲者なんですね。今回も徹頭徹尾一人で原告側に質問していまして、それがまた「揚げ足取り」のような細かな点ばっかりなんですよ。それでその言い種がふるっています。その点明快にして頂けないと「反論が書けない」(笑)。そうかなぁ、という質問ばかりだったんですけど。

 ただ一点、原告側も真剣に「論理構成」を考えざるを得ない指摘が曲者弁護士から為されました。「肖像権侵害」と「人格権侵害」との、訴え上の明確な差異の位置づけです。これについては、裁判所もほぼ被告側の論に同意していると思われ、「人格権侵害一本ということに絞ったらいかがですか」という打診すら為されました。この点、今後の展開から目を離せません。

 対してよしりん側の二人なんですけど、何にも喋んないの(笑)。どうやら被告側、今回は小学館主導で進んでいる模様(考え過ぎか)。

 

 今回はこんな所でしょうか。ああ、これで次は新年かぁなんて考えていたんですけど、裁判長、今年中にもう一回入れたいとのこと。いいんじゃないでしょうか。トントントンと審理して、早く判決を出して下さい。

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 名誉毀損裁判第二回口頭弁論の報告

  上杉 聰

 本日11月14日午前11時30分から、東京地裁で、名誉毀損事件の第二回口頭弁論が開かれました。相手側「被告席」には、小林氏の著作権裁判にもかかわった弁護人二人に加えて、小学館の弁護士が二人座り、さらに傍聴席にはトッキーなど二人。こちら側は私以外、高橋謙治弁護士一人と傍聴席に5人という少数(6対7で一人勝ち?)でしたが、高橋弁護士といっしょに「原告席」に座った気分は、大変よかったですよ。

 

 著作権裁判については無欠席を通してきた私ですが、今度の裁判では他の仕事と重ならない限り上京・出廷しないつもりでした。本日は、たまたま他の緊急用件と重なって早朝に大阪から出かけることになりました。「ドロボー」と醜く描かれたことを名誉棄損として訴えている以上、「本物は、こんなにジョーヒンな人物なんですよ!」と、裁判官にアッピールする意味からも、出廷することはやはり大切かも…と新幹線の中で考えつつ向かいました(逆効果にならなかったことを祈るばかりですが…)。

 

 法廷での裁判長は、双方の弁護士に小気味よい言葉をポンポン送り、聞いていても、その場で裁判の内容がわかり、実におもしろく楽しめました。しかし、いざ法廷に立ってみて、やはりなるべく裁判に出ないといけないな、と深く感じるところがありました。裁判は、まだこちら側が訴えの論理を明確にする初期の段階であり、今のうちに裁判所の空気をつかんで、弁護士さんとしっかり協力して訴えの論理を構成しないといけない状態にあることがわかったからです。

 

 小学館側の弁護士は、同社お抱えの弁護士と思われ、こうした名誉棄損裁判には慣れているらしく、今日も反論の中心となって細かな質問をいくつも出してきました。その中には、こちら側の論理の不明瞭なカ所の指摘もありました。これは、マンガで名誉棄損されたことを問う初めての裁判と思われますので、私たち訴える側も、論理構成には手探りを余儀なくされた面があります。裁判は、攻めるのも難しいなと実感したものです。

 

 結論として、今月中に原告側が追加の準備書面を作成し、それも含めたこちら側の主張に対して、次回口頭弁論で小林氏側から反論がなされることになりました。次回は、12月26日(火)午後4時からです。なかなか早いペースですよ。

 裁判の後は、例によって参加者で歓談。意見交換するなかで裁判にプラスになる情報もいくつかいただきました。やはり、こうした支援体制が、裁判を前に進めてくれますね。