koen Q&A

アンドリュー・コイル、ヴィヴィアン・スターン氏
CPR総会での講演・質疑から


Q:刑務所にかわる代替システムについて
★:ヴィヴィアン・スターン
 イギリスでは以下の代替システムがあります。@警告、A罰金;賃金給料に近い額、B車の場合、免許証を一定期間取り上げる、C社会奉仕命令240時間、D監察期間(プロベンション);6ヵ月から2年間監察官の指導を受けるもの。
 PRIはジンバブエの受刑者800人を拘禁する代わりに、18ヵ月間、社会奉仕命令プロジェクトを行い、2100人の刑務所人口を減らすことに成功しました。また、他のアフリカ4ヵ国でも実施するよう資金提供を行っています。
 刑務所拘禁というのは最後の手段であるべきです。代替という考えではありません。刑法では、@犯した犯罪が深刻であり、ほかの罰が考えられないとき、A非常に性的、暴力的であり、刑務所拘禁以外に社会を守れないとき、にだけ刑務所に拘禁されます。

Q:所長である一方でPRIという立場で、政府からの圧力を感じないか? 死刑の代替について
★:アンドリュー・コイル
 両者の立場は緊張感をもっており極めて重要な関係だと思いますし、政府からの圧力も感じません。人を閉じ込めておくことに対して心穏やかではありえません。このことに良心の呵責を感じなくなったらこの仕事を辞めようと思っています。刑務所長とNGOの間には建設的緊張関係があります。私にも、NGOの目的に合意できても、そのやり方に合意できない場合があります。
 死刑の代替には複雑なものがあります。イギリスでは30年前廃止され、代替として終身刑が採用されました。しかし、終身刑の判決を受けた25歳の若者をにどう対応するか。希望を奪われた若者は危険です。死刑を廃止すればそれだけ済む問題ではない、非常に難しいことです。

Q:ブリクストン刑務所の改革について、マスメディア、NGO、政府機関、職員の対応等どんな困難があったか?
★:アンドリュー・コイル
 1991年に所長になった当時、ブリクストン刑務所には多くの問題がありました。19世紀に作られた古い建物という物理的条件の悪さ、過剰拘禁による被拘禁者の精神状態の悪化から、就任2年前に14人が自殺していました。職員の疾病率も極めて高かったのです。一般人もメディアもブリクストン刑務所のひどさを知っていて、その責任を刑務所のせいにしていました。私は、まず一般人も責任を共有化すべきだと考えました。そのためメディアを刑務所に招き中を見てもらいました。これはスキャンダルになりました。職員たちは自分たちのことを「自分たちはよい仕事をしたいだけだ」と説明しました。それまで刑務所の閉鎖性の中で職員は自分の仕事に自信が持てませんでした。また所長が職員を信用することが重要でした。地域社会との関係を作り、NACROを招待し刑務所の中を見てもらい援助を要請しました。ブリクストンは完璧とは言えません。私にできることは、ひどさの程度を軽減することだけです。

Q:ヨーロッパ拷問禁止委員会について
★:アンドリュー・コイル
 刑務所には独立した監視機構が必要です。監視作業はNGOや関心ある一般人も巻き込んで行っているが、個々の監視を公式な形でまとめて行く必要があります。イギリスでは各刑務所にボード・オブ・ビジター(訪問者委員会)があり、刑務所にいつでも、どこにでも立ち入り、職員や受刑者と話が出来ます。毎月ミーティングが行われ、刑務所長が説明を行います。勧告することは出来るが命令は出来ません。ヨーロッパ拷問禁止委員会には各国の刑務所を訪問する権利があり、自らはその調査結果を公表はしないが、政府に公表を促しています。政府は結果を報告しその対応策を発表します。すべての拘禁場所を見ることが出来るということはきわめて重要なことなのです。

★:ヴィヴィアン・スターン
 刑務所の問題点をNGOがヨーロッパ拷問禁止委員会に知らせ、委員会が調査をします。この関係はきわめて効果的に働いています。世界的レベルでのこういった組織が必要です。国連で世界的レベルの拷問禁止委員会(世界の監獄の調査、勧告機能をもつ組織)を作って行こうという意見があります。CPRにもぜひ援助をお願いしたい。