アムネスティ国際ニュース発表


アムネスティ日本支部、1998年1月12日付発表のニュースです。
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                  (抄訳:寺中 誠)


アムネスティ・インターナショナル日本支部、
大韓民国(韓国)における大量の死刑執行に抗議。


韓国における2年1ヶ月ぶりの大量の死刑執行と、
秘密主義、恣意的、そして不公正な死刑のあり方を強く批判。
金大中次期大統領に対し、死刑廃止に向け踏み出すことを要請。


○ 23名に対する大量の死刑執行を強く批判。

〜金大中次期大統領に対し、国際的潮流である死刑廃止に向け踏み出すことを要請〜

 昨年末の12月30日に、韓国法務部が23名の死刑囚(男性18名、女性5名)の絞首刑を執行したことに対して、国際的な人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル(国際事務局:ロンドン、以下「アムネスティ」と略)、及び同日本支部は、韓国政府に死刑執行の全面的停止を強く求めている。それとともに、自らが死刑制度の残虐性を体験した金大中次期大統領が、今後死刑廃止に踏み出すことを強く期待している。韓国では、この死刑執行に抗議する行動がただちに行われ、アムネスティも翌31日、死刑執行に抗議するとともに、金大中次期大統領に対して死刑廃止に踏み出すように要請する声明を発表した。全世界で現在すでに死刑を廃止した国は99カ国(1997年10月現在。アムネスティ調べ)と死刑在置国を上回っている。

○ 執行の理由は、拘禁施設の収容能力に関する保安上の問題である可能性も。

 今回の大量処刑は、1995年11月の19名に対する執行後、2年1カ月ぶりであり、文民政府となって以降は、1982年23名の大量執行以来の規模である。すでに退陣の決まった現政権があわただしく大量の死刑執行を行なったことは、驚きと失望を国際世論に広くひきおこしている。今回の死刑執行の事実、及びそれに対する一連の抗議行動の事実は、日本においてはこれまでのところ、ほとんど報道されていないが、韓国内の報道によれば、法務部当局関係者は執行を待つ死刑囚が増え、拘禁施設の収容能力が追いつかないため保安上の理由からも処刑を行なったと語っているという。

○ 秘密主義的、恣意的、そして不公正な死刑制度も強く批判。
 アムネスティは、韓国における死刑執行が秘密主義的かつ恣意的に行われていると指摘している。韓国における死刑の執行は、当日まで死刑囚たち本人にも、また家族にも知らされず、突然に行われる。また、執行される死刑囚の選別には客観的な基準がなく、恣意的に行われるため、死刑囚はつねに処刑の恐怖に怯えつづけなければならない。死刑囚の中には警察の取り調べで暴行を受けたり、裁判が公正に行われなかった疑いのある人たちも含まれている。その一方で、1980年の光州事件や民主化運動鎮圧にともなう大量殺人で反乱罪に問われ、いったん死刑判決を受けた全斗煥元大統領が減刑され、盧泰愚前大統領とともに大量処刑直前の12月22日に特赦を受けて釈放され、公民権まで回復している。

○ アムネスティ日本支部、韓国政府に対し抗議行動を展開。

 アムネスティ日本支部は、国内外すべての死刑に反対する立場から、今後韓国政府に対し、会員を中心とした抗議行動の展開を予定している。

以上