連続する死刑執行に抗議する声明

2008年10月28日  監獄人権センター

 私たち監獄人権センターは、本日(10月28日)行われた、久間三千年さん(福岡拘置所)、高塩正裕さん(仙台拘置支所)に対する死刑執行に強く抗議する。
 今回の死刑執行は、昨年12月の執行以来6回目のべ18人の執行であり、今年だけでも5回にわたり15人が執行されている。1年間に15人以上の死刑執行を行ったのは、1975年以来33年ぶりであり、まさに時代に逆行し、日本の人権水準を1979年の国際人権規約の批准以前に引き戻す暴挙である。今回の執行が、自由権規約人権委員会の第5回日本審査の最終所見が採択されようとしているまさにその当日に行われたことは、国際人権規約をはじめとする人権諸条約を無視し、これに挑戦する日本政府の姿勢を示したものとして、強く非難されなければならない。
 久間三千年さん、高塩正裕さんともに確定から2年前後しかたっておらず、前2回の執行に続き、死刑確定から短期間で執行を行った。これは死刑確定者の再審の可能性を事実上奪うものである。また、高塩さんについては、第一審の無期刑判決が検察官の控訴によって控訴審で死刑に変更され、その後上告を取り下げて死刑が確定している。自由権規約人権委員会でも日本の死刑制度における義務的上訴の欠如が問題として指摘されているなかで、今回の執行は死刑に直面した者の権利保障という点でも重大な問題がある。

 1989年の死刑廃止条約の採択から19年、いまや世界の7割の国が法律上・事実上死刑を廃止している。昨年12月には国連総会の本会議で賛成104の圧倒的多数で歴史的な死刑執行停止決議が採択された。残る主要な死刑存置国である中国、アメリカも死刑執行数を減らしている。こうした中で、ひとり日本のみがほぼ2ヵ月に1度のペースで死刑執行を続けていることは、まさに異常な事態と言わねばならない。
 昨年5月の国連拷問禁止委員会の日本審査、今年6月の国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)でも、日本の死刑の現状に重大な懸念が表明され、死刑執行の停止が勧告されている。この10月15日・16日には自由権規約人権委員会の第5回の日本審査が行われ、代用監獄制度とともに日本の死刑制度の現状とその運用に批判が集中した。本日にも採択されるであろう規約人権委員会の最終所見においては、日本の死刑制度に対して、10年前の第4回審査の最終所見以上に厳しい勧告が行われることは必至である。このような国際的な批判や勧告を真摯に受け止めるどころか、これに真っ向から挑戦するような本日の死刑執行を、私たちは改めて強く弾劾する。

 今まさに、連続的な死刑執行を含む日本政府の政策全体、アメリカ社会を範とするかのようにしてグローバルに進められてきた政策全体の根本が問われるような事態に直面している。この期に及んでも、立ち止まって自らの政策を問い直すこともなく、国際的な見通しもない暴走を続ける法務・検察官僚と現政権をこのまま放置するわけにはいかない。すべての心ある市民、運動団体、ジャーナリスト、議員、政党は彼らの暴走に対し、一斉にストップの声を上げるべきである。
 日本政府は国連の死刑執行停止決議と規約人権委員会の勧告を尊重し、死刑執行を直ちに停止し死刑廃止への第一歩を踏み出せ。